歯科医師向け 開業支援・経営支援コラム Vol.27【人材・教育】社会保険や納税に関わる手続きについて

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前回のコラムでは、内定から入職までに必要な書類について解説させていただきました。今回からは、入職までに必要な準備や手続きについて掘り下げて説明していきたいと思います。

所定の選考プロセスを経て内定を出した求職者から「内定承諾」の意思がもらえたら、入職日(勤務開始日)を決め、新人さんが安心して勤務開始できるよう迎え入れの準備をおこなう必要があります。準備することはたくさんありますが、今回は社会保険や納税に関する手続きについて解説させていただきます。


労働人口の減少や競合医院の増加など、歯科医院を取り巻く社会情勢の変化もあり、年々人材の採用や定着が難しくなってきています。歯科医院側は患者さんに質の高い医療サービスを提供する努力はもちろんのこと、医療サービスを提供する労働者にとって魅力的な職場づくりをおこなうことが重要となります。魅力的な職場づくりというと「福利厚生」や「特別休暇」といった部分に目が行きがちですが、社会保険加入や納税が法定通りしっかりとおこなわれているかどうかも大事なポイントとなります。せっかくお金と労力をかけて良い人材が採用できても、入職後にこれらがおざなりになってしまうと、スタッフは不安や不信感を持ち、最悪離職してしまうという結果にもなりかねません。だからこそ、社会保険や納税に関する手続きは漏れが無いようにしっかりとおこなう必要があります。

①厚生年金保険・健康保険

医療法人などの法人の事業所、または、常時5人以上の従業員を雇用している個人事業主(目安は労働時間が週30時間以上で、月に15日以上出勤)の場合、厚生年金保険・健康保険の「強制適用事業所」となるため加入が必須となります。これらの条件を満たしていなければ加入は任意となりますが、最近の求職者は「社会保険加入の有無」を就職するにあたっての条件としている場合が多いので、可能であれば加入することをお勧めします。

なお、健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、年金事務所(日本年金機構)でおこなうことになります。従業員の入社時に「年金手帳」と「マイナンバー」の情報を預かり、入社後5日以内に「被保険者資格取得届」を提出し手続きを済ませましょう。ちなみに、被扶養者がいる場合は「被扶養者(異動)届」も一緒に提出します。

②労働保険(雇用保険・労災保険)

雇用保険とは、労働者が失業したり教育訓練を受ける際に給付が受けられたり、育児休暇(1歳未満の子の世話のため)を取った際の「育児休業給付金」が受けられる保険です。雇用保険の加入要件ですが、31日以上雇用予定で、週20時間以上の勤務が見込まれる従業員は、加入が義務づけられています。雇用保険の加入手続きは、入職した翌月の10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。入職者が転職者の場合は直近で勤務していた職場で受け取った「雇用保険被保険者証」が必要となります。

また労災保険というのは、従業員(労働者)を保護するための公的保険制度です。勤務中、または通勤中の事故により、怪我や障害を負ったり死亡したりしたときに、労働者やその遺族に一給付金が支払われる制度です。なお、労災保険は1人でも労働者を雇用したら強制加入となります。(労災保険料は雇用保険に含まれます)

③所得税・住民税の手続き

従業員を雇用したら給与を支払うことになるのですが、その際に「所得税」と「住民税」を控除する必要があります。所得税の手続きを進めるには、雇用した従業員に「扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。また、雇用した従業員が転職者の場合は、前職の「源泉徴収票」も提出してもらう必要があります。

また、住民税(市県民税など)の手続きは、従業員が納税する市区町村(従業員が居住している市区町村)でおこないます。住民税の徴収は「普通徴収(従業員自ら支払う方法」と「特別徴収(勤務先の事業所が従業員から徴収して代理で支払う方法)」の2つがあります。特別な事情が無い限り、特別徴収で納税することになるので、新卒以外の従業員を雇用した場合は「特別徴収切替届出(依頼)書」を記入し市区町村に提出します。従業員を雇用した際は、住民税の税額決定通知書は未納付分の納付書を提出してもらい、手続きを進めましょう。


以上が社会保険加入手続きと所得税・住民税の手続きの概要となります。これらの業務ですが、院長先生が自らやろうとするとかなり大変なので、可能であれば顧問契約をしている社会保険労務士(社労士)や経験のある事務長などに任せることもご検討ください。

1on1スタッフマネジメント型 経営コンサルタント(事務長代行)
ライトアーム代表 
五十嵐 伸好

歯科器材メーカーにて開業担当として200件以上の開業に携わり、大手ディベロッパーや商業施設との交渉により物件獲得、事業計画書の作成、開業資金の融資確保、医院内装のアドバイスなど、機械メーカーの枠を超えて開業までのすべてをとりまとめ、先生の評価をいただく。
その後、医療法人事務長となり多岐にわたる事務長業務(採用、人事、広報、渉外、経営、税務、労務など)を行い法人運営し、就任時から売上400%以上アップを達成する。現在は多忙な院長に代わってスタッフマネジメントを行い、院長が歯科医師として治療に専念できる環境、仕組み、働きやすい職場を構築することで離職率の低下と売上UPを実現。経営コンサルタントとして複数の院長の相談役、経営的右腕として活動している。

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