歯科医師向け 開業支援・経営支援コラム Vol.28【人材・教育】入職前健康診断について

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前回のコラムでは、入職までに必要な準備や手続きについて掘り下げて解説させていただきました。今回は入職前健康診断(雇入れ時健康診断)についてお話させていただきます。

先生方が歯科医師免許証を取得してから開業されるまでの間、おそらく大学や歯科診療所などいくつかの職場で勤務されたかと思いますが、入職する際に健康診断書の提出を求められませんでしたでしょうか?実はこれには理由があり、労働安全衛生法に基づく「労働安全衛生規則 第43条」で、労働者を雇い入れる際に健康診断をおこなうことが義務づけられているからです。ちなみに、入職前健康診断が必要なのは正職員(常勤)だけでなく、パート・アルバイト(非常勤)も対象となります。例外として、入職日の過去3ヵ月以内に医師による健康診断を受けている場合、従業員から健康診断書の提出があれば入職前健康診断を省略することができます。

また、検査する項目も法令で定められており、入職者には検査項目を満たした健康診断を受けていただく必要があります。


以下厚生労働省のサイトより引用

1. 既往歴及び業務歴の調査
2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4. 胸部エックス線検査
5. 血圧の測定
6. 貧血検査 (赤血球数、血色素量)
7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8. 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)
9. 血糖検査
10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11. 心電図検査(安静時心電図検査)


補足となりますが、労働安全衛生規則 第44条で、事業所は常時雇用する労働者に1年に1 回健康診断を実施することを義務づけています。つまり、事業所は入職時の健康診断を実施するだけでなく、一定の条件を満たした従業員(1週間の所定労働時間が同種の常勤雇用労働者の4分の3以上)に毎年健康診断を受けさせる義務があります。


それでは、なぜ事業所は従業員に健康診断を受けさせなければならないのでしょうか?大きく分けると次の2つの理由があります。

①従業員の健康を守るため

事業所が健康診断を実施する目的の1つ目は、事業者(事業主)が勤務する労働者の健康状態を把握し、安全に労働に従事できる環境を整えるためです。定期的に健康診断を受けてもらうことで、重大な病気を早期発見することができたり、生活習慣病を予防したりすることが可能となります。

②事業所(法人や医院)を守るため

法令で定められた健康診断を従業員に受けさせず、雇用中の従業員に健康上の大きなトラブル(病気)が生じ、その原因が労働にあると認められてしまった場合、事業主に責任が生じる可能性があります。また、歯科医院の仕事の特性上、どうしても肝炎等の感染リスクがついてまわります。入職前にもともと感染していたのか?それとも入職後の業務で感染したのかにより、医院が背負う責任は大きく変わってきます。責任の所在がどちらなのか明らかにするためにも肝炎の検査、ワクチン接種はやってもらった方が良いでしょう。


なお、事業所が従業員に健康診断の受診を打診したにも関わらず、受診を拒否もしくは難色を示す場合も想定されます。しかし労働安全衛生法66条5項にある通り、労働者には健康診断を受診する義務があるため、原則労働者は事業者の実施する健康診断を拒むことができません。法令で義務付けられている旨を従業員にしっかりと説明し受診してもらうようにしましょう。

また、健康診断の費用負担に関しても事業主からよく質問があります。まず、従業員に毎年1回受けさせる健康診断(定期健康診断)に関しては、労働安全衛生法で企業が全額負担するよう定められています(従業員の希望でオプション検診など受けた場合の差額分は事業所が負担する必要はありません)。一方で、入社前健康診断に関しては労働安全衛生規則に事業所、従業員どちらが費用を負担するかの明確な記載は無いので、従業員の自己負担だったとしても違法にはなりません。しかし、事業所側から受診を義務づけていることもあり、厚生労働省からも健康診断の費用は会社が負担するのが望ましいという指針が出ているので、入職前健康診断を受けてもらった場合は事業所負担とし、後日精算する形がよいでしょう。

1on1スタッフマネジメント型 経営コンサルタント(事務長代行)
ライトアーム代表 
五十嵐 伸好

歯科器材メーカーにて開業担当として200件以上の開業に携わり、大手ディベロッパーや商業施設との交渉により物件獲得、事業計画書の作成、開業資金の融資確保、医院内装のアドバイスなど、機械メーカーの枠を超えて開業までのすべてをとりまとめ、先生の評価をいただく。
その後、医療法人事務長となり多岐にわたる事務長業務(採用、人事、広報、渉外、経営、税務、労務など)を行い法人運営し、就任時から売上400%以上アップを達成する。現在は多忙な院長に代わってスタッフマネジメントを行い、院長が歯科医師として治療に専念できる環境、仕組み、働きやすい職場を構築することで離職率の低下と売上UPを実現。経営コンサルタントとして複数の院長の相談役、経営的右腕として活動している。

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