【会員限定公開記事】「舌足らずの対応法」1Dセミナー イベントレポート

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

この記事は
無料会員限定です。

【会員限定公開記事】「舌足らずの対応法」1Dセミナー イベントレポート

▲セミナーの様子(講師:「木本 茂成」先生)

小帯切除とMFTの要点を知ることのできるセミナー

2023年4月3日 (月) 、1D (ワンディー) 開催のオンラインセミナー「舌足らずの対応法」が開催された。

セミナー講師は「木本 茂成 」先生。神奈川歯科大学歯学部小児歯科学講座教授であり、日本小児歯科学会理事長と日本歯科医学会常任理事を歴任されている。

舌小帯が短い「舌小帯短縮症」の患児に遭遇した際、皆さんはどのような対応を普段しているであろうか? 短い舌小帯を単純に切れば終わりというわけでなく、MFTを術前に行った上で舌小帯を切除するか否かを判断することが実は重要となる (低年齢の小児であれば治療への協力が得られず、舌小帯の切除自体が困難となり、専門機関への紹介も検討せざるを得ないかもしれない)。

本セミナーでは、舌小帯異常の原因、種類、診断、影響、治療時期、紹介判断、手技、MFTのポイントなどについて、神奈川歯科大学の木本教授が多岐に渡るテーマで解説してくださった。
▲舌小帯切除後のMFTで舌の前方突出や口蓋への舌の付着が可能に
「舌足らずの対応法」講義目次
  • 口腔機能の発達と評価
  • 舌小帯短縮症と切除術
  • 口腔機能に対する最新の知見
  • MFT(舌トレーニング)
「舌小帯異常の対応方法を知りたい」「舌小帯の切除のタイミングや手技を理解したい」「舌小帯切除時に行うMFTのポイントについても詳しく知りたい」歯科医師にお勧めしたいセミナー内容である。

記事の文字数の関係があるため、本セミナーで紹介された内容を絞って紹介したい。読者の舌小帯異常に対する知識を深める機会となれば、嬉しい限りである。
▲日本人小児 (4-6歳) の10人に1人が舌小帯短縮症に該当

舌小帯の長さが1cm未満の4-6歳の小児は10人に1人も

2018年に実施された調査によると、1cm未満の短い舌小帯が認められる日本人小児 (4-6歳) は9.7%となっている。また、舌小帯の肥厚は3.2%、舌小帯が舌尖まで伸びているのは5.9%、舌の突出により舌尖部の形態がハート型になるのが10.3%と報告されている。

読者の中には舌小帯の異常がみられる頻度が意外に高いと感じた方もいるかもしれない。年齢が増すと舌の可動域が一般的に大きくなるとは言えども、舌小帯に異常があるまま放置すると、既に確認されている構音障害や咀嚼嚥下機能が改善されない。早期発見・治療が肝要である。
▲舌圧 (kPa) は学童期に移行するとほぼ横ばいに

舌圧 (舌挙上力) は小児期に増加する

口腔機能低下症を診断するために使用される舌圧測定器により小児期の舌圧を測定すると、6歳頃まで舌圧の数値は右肩上がりで上昇する。口腔機能低下症診断の目安となる舌圧は30kPaであるが、6歳前後にはすでに成人における下限値の9割程度に到達している(上画像棒グラフ)。

6歳前後までは右肩上がりに舌圧が上がっていくが、学童期に入った途端に小児期でみられるような舌圧の大きな上昇はみられなくなる。
▲内側と外側の筋肉の力のバランスのとれた位置に歯は並ぶ

舌小帯切除術はMFTにより舌小帯が伸展してから行う

小児歯科で行われるMFTの目的は上手く使われていない口腔周囲筋を正常に機能させることである。口腔周囲筋の力は歯列や咬合に大きく影響を与えるため、MFTによりバランスを整えることが重要になってくる。

舌小帯切除を行う前にもMFTを行うことが大切で、切除だけでMFTを行わなければ舌が上手く機能することはない。術後にある程度舌を機能させる意味でも、少なくとも舌小帯切除を行う1か月くらい前からMFTを実施していれば、舌小帯がかなり伸展するので、そのタイミングで舌小帯切除を行うスケジューリングをすると良い。
▲舌小帯切除後の3か月間の舌挙上訓練で運動制限が無くなった5歳児症例

舌小帯を切除して約1週間経過後にMFTを再開する

切除した創面が瘢痕化しないように、切除後は1週間ほどでMFTを開始するのが望ましい。術前にMFTを1か月程度行っておけば、小児が切られた舌小帯を伸ばして舌を動かすことに大きな抵抗を感じにくい(術前にMFTを行った記憶がしっかりと残っているためである。逆にMFTをしていないと舌小帯を伸ばすことに大きな恐怖を感じ、MFTが困難になる)。

術前に機能訓練を行っても、舌の後方部(舌背)をいきなり術後に挙上して口蓋に付着させることは難しい。舌小帯切除後も舌の機能訓練を引き続き行う必要はあるが、数か月の機能訓練を行えば舌背も含めて舌をしっかりと挙上させることができるようになる (上画像症例) 。

より詳しい内容を知りたい方は本セミナーを受講し確認してもらいたい。
▲舌小帯切除後のMFTは舌圧の上昇に効果あり

「舌足らずの対応法」を受講して

本セミナーを受講し、詳しくは知らなかった舌小帯短縮症へのアプローチ方法やMFTに関する知識を深める機会になった。個人的には舌小帯切除のタイミングやMFTの実施の仕方について知ることができたことが非常に良かった。舌小帯切除が難しい低年齢の患児に遭遇したらMFTだけでもしっかりと行うなどは明日からの歯科臨床でも取り組んでいけるように思う。

本記事で紹介した内容はほんの一部であるため、興味を持ってくださった方は1Dセミナー「舌足らずの対応法」の視聴をお勧めしたい。

1Dセミナー「舌足らずの対応法」

本記事が読者の小児歯科臨床の一助になれば、幸いである。
▲1Dでは論文で紹介されている内容もサクッと読める
「舌足らずの対応法」を今回主催した1D(ワンディー)では歯科医師を中心に、歯科衛生士や歯科技工士といった歯科医療従事者向けの情報発信をしており、様々なテーマのセミナーがオンラインで定期開催されている。セミナー以外には3分でサクッと読める記事も掲載されている。

1Dプレミアム会員(月額9,800円)になれば、オンラインセミナーが見放題になる。プレミアム会員にならずにセミナーを受講すると12,800円の受講料がかかるため、今回記事で紹介したセミナー以外にも検索して気になるセミナーがあれば、プレミアム会員に登録して視聴することをお勧めする。

自身の知り合いの歯科医師に1Dのオンラインセミナーについて意見を聞いてみると、最近では吉岡隆知先生の「歯内療法マスターコース(全5回)」がとてもタメになったという感想を頂いている。診療で忙しくてセミナーに行く暇がない方が多いと思うが、オンラインでいつでも視聴できれば勉強しやすい。

月額9,800円で1Dセミナー見放題「1Dプレミアム」
▲京都の蹴上インクラインや醍醐寺周辺の桜

編集後記 桜満開シーズンに京都と飛騨高山と白河郷へ

今年の桜は例年よりも早く3月末に満開となりました。京都府には岩清水神宮、八坂神社、北野天満宮、金閣寺、伏見神社、平等院など歴史的建造物が各地に散在していますが、そちらでも素晴らしい桜を見ることが可能です。今年初めて訪れた醍醐寺と蹴上インクラインの桜は綺麗で早朝から沢山の方が3月末に訪れていました。中でも豊臣秀吉の愛した醍醐の花見で有名な醍醐寺の桜ですが、1,500円の拝観料を支払って見る価値ありです。
▲白川郷と飛騨高山(バスで往復1時間以内で行ける箇所にありアクセス良好)
旅行支援事業や円高によるインバウンドの好影響のおかげなのか、日本人観光客以外に外国人も本当に多くなっている印象です。岐阜の飛騨高山や白川郷も外国人が非常に多く、平日にも関わらずバスが満席になるなど非常に混んでいました。

大阪でも沢山の外国人を見かけますが、クリニックにトイレを借りる外国人が非常に多くなりました。外国人が訪れたい国No.1の日本の魅力をDentWaveでも発信していきますので、読者の皆様のご旅行の参考にしていただければ、嬉しいです!

古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)

日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。
主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、本島で歯科臨床に従事する傍ら、記事の監修・執筆、歯科医師国家試験模擬試験の編集業務、企業コンサルタント、マウスピースの製品管理、オンライン診療などを個人事業主として行っている。

【筆者プロフィール】
https://saipon.jp/h/web_writing98765/2

記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ