歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方

この記事は
無料会員限定です。


【会員限定公開記事】「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」1Dセミナー イベントレポート

▲オンラインセミナー講師「松本 尚之」先生

オープンバイトを攻略!
2022年11月24日(木)、1D (ワンディー) でオンラインセミナー「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」が開催された。

セミナー講師は大阪歯科大学歯学部歯科矯正学講座主任教授「松本 尚之」先生で、開咬を伴う顎偏位症例に対する顎矯正法や、習癖による開咬の症例について様々な発表をされている日本矯正歯科学会認定医・指導医である。

矯正臨床に関わらず一般臨床でも遭遇する機会の多い開咬(オープンバイト)だが、開咬の原因として歯性・骨格性・機能性に分類され、原因が複合していることも多い。前歯部オープンバイトが大半であるため、咬合の問題も大きいが、審美的障害も強い。

一般歯科医師による矯正治療が一般化されつつある昨今、医原性による臼歯部オープンバイトが見られることもあり、問題視されている。矯正歯科医であっても治療難易度が高いため頭を悩ませるケースが多い。

開咬の原因や、治療を検討する上で重要な検査や診断、実際の対応方法について様々な開咬症例を交えて松本先生は詳しく述べていた。


▲「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」スライド

「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」目次
  • 開咬の原因
  • 適切な検査と診断
  • 医原性の開咬と対応
  • 開咬に対する様々なアプローチ
  • 開咬症例供覧
「オープンバイトに関して矯正の専門家から詳しく聞きたい」「オープンバイトの治療アプローチの方法を詳しく知りたい」「今後の矯正治療に活かしたい」歯科医師の皆様に勧めたいセミナー内容である。本記事では、文字数の関係で特に開咬の原因となり得る「指しゃぶり」について紹介する。

読者の日常臨床の一助になれば、嬉しい限りである。


▲開咬の原因となる指しゃぶりは口蓋に拇指を置く割合が50%以上

オープンバイトの原因となる指しゃぶり
オープンバイトの原因となり得る代表的な口腔習癖として拇指吸引癖(指しゃぶり)が挙げられる。生後3ヶ月頃から4歳くらいまでみられる指しゃぶりにより骨格的不正は招来されないと考えられているが、4歳以降も残存している指しゃぶり(prolonged thumb sucking)は開咬の原因となり得るとされている。

指しゃぶりは開咬以外に、高口蓋・臼歯部の交叉咬合・下顎遠心位など、咬合への悪影響を引き起こすことが考えられている。8-10歳の時期に歯性の開咬から骨格性開咬への移行がみられることが多いが、指しゃぶりにより移行を促されてしまうこともあるだろう。

▲指しゃぶりがある場合、「指たこ」や「ふやけ」がみられることも

  • 指しゃぶりをやめさせるためにまず必要なこと
    指しゃぶりのような慢性化した弄指癖を止めさせたい場合、松本先生は下記3点をポイントとして挙げられた。
  • 不適当な時期の把握
  • 正しい時期の把握
  • 正しいアプローチ方法の把握
生後3-3.5年後も弄指癖が認められる場合、原因が明瞭なのか不明なのか(meaningful habit or empty habit)を見極めることが重要である。

例えば、心理的な問題が実在する場合、指しゃぶりの発現にその心理的な問題が明らかに関連があると予想される際は、心理的な問題の解決に注力することが肝要である。


▲代表的な筋機能療法


  • 習癖除去装置の使用期間は「半年から1年以内」
    松本先生は筋機能療法を習癖除去装置よりも先に行うことを基本とし、患者の協力度が良くないことや口呼吸などにより開咬の改善度合いが悪い場合、習癖除去装置を意識化のために使用することが良いと述べていた。

    習癖除去装置のデメリットとして、舌圧による歯列の近心移動や装置沈下による固定源である大臼歯の挺出もあるが、装着時のストレスも強いので、期間を半年から1年までにする、など決めるのが良いとされている。

    *研究報告として、オーバージェットの改善には筋機能療法が効果的であり、オーバーバイトの改善には習癖除去装置の使用が優れていることも紹介された。


▲セファロトレースの重ね合わせ(臼歯圧下や小臼歯の抜歯により、下顎のCounter clockwise rotationが生じる)

「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」を受講して
本セミナーの内容は矯正歯科治療のみに偏りすぎず、受講者がGPでも日常臨床に活かせる内容が非常に多かった。本セミナーで紹介された歯性開咬の特徴や指導開始適齢期を知っていれば、骨格性開咬に移行する前に専門医へ早く紹介することも可能である。

本セミナーの受講により、開咬に関する知識を深めるきっかけとなり、開咬を正確に診断し症例に合わせた治療を行う大切さを理解できたと思う。マウスピース矯正の副作用として臼歯部開咬も報告されるようになり、開咬を治療する機会が今後は増加する可能性が高い(開咬がみられた場合、リカバリーがしっかりとできるようにしなくてはならない)。

本記事を通じて、セミナー「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」を視聴してみたい方は、2023年5月まで見逃し配信があるため、気になる方はぜひプレミアム会員に登録して受講されるのが良い。
1Dセミナー
「歯科医師のためのオープンバイトその予防と治し方」

大阪歯科大学矯正歯科分野所属の先生方が治療された開咬症例供覧もあり、個人的には治療手順や治療経過に興味を抱いた。近年、インプラントアンカーを用いた大臼歯の圧下による開咬の改善も可能になってきているが、エビデンスがまだまだ少ないため、今後も開咬の治療に関して様々な研究報告がなされるのを楽しみにしたい。


▲1Dプレミアム登録で12月開催のセミナーも見放題!

「歯科医師のためのオープンバイト その予防と治し方」を今回主催した1D(ワンディー)では歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報を発信しており、歯科臨床を中心としたテーマのセミナーがオンラインで定期開催されている。

1Dプレミアム会員(月額9,800円)になると、オンラインセミナーが見放題となっている。プレミアム会員にならずにセミナー受講すると12,800円の受講料がかかるため、他に気になるセミナーもあるのであればプレミアム会員への登録をおすすめする。

月額9,800円で1Dセミナー見放題「1Dプレミアム」
本記事で紹介した内容が参考になれば、嬉しい限りである。
編集後記
税金対策などでマンションなどの不動産に投資するドクターが周囲に増えているそうです。中でも「トランクルーム」投資が最近ブームになっているとのことでした。新橋にあるトランクルームを手掛けているベンチャー企業にお話を伺ったところ、100万円台からの初期投資で運用することが可能のようです。利回りが15%くらいあるらしく、日本ではまだ市場が拡大している分野でこれから増えていくとのことでした。

年末に近づき、多くの歯科医院でも節税のため様々な設備投資をしている時期かと思いますが、診療の見学をさせていただいている大阪のクリニックでも口腔内スキャナーを購入するなどしていました。


▲リアルタイムに口臭レベルを測定することが可能

トランクルームの話を聞いた後、世田谷で開業されている「田中大右」先生(DI歯科 世田谷オーラルクリニック院長)の歯科医院で、リアルタイムに呼吸と唾液内のバイオマーカーを分析可能なデバイス(S-KIT with Health+)のお話を聞かせていただきました。

実際に呼気に反応してPCで表示されている数値(上画面)が変動し、口臭をリアルタイムに測定することが可能です。「Kawasaki Deep Tech Accelerator 2020」や「JICA 海外ICT企業協業支援事業 2021」に採択され、歯科医院の院長として臨床に従事する傍ら、エンジニアとしても活躍されている先生で、お話していると自身の視野が拡がり良い刺激を受けました。

実際にデバイスの説明をお聞きして、マウスピースやマスクなどに呼気や唾液内のバイオマーカーを検出できるようなチップが内蔵されれば、常時モニタリングすることができるなと感じました。デバイスについてご興味がありお話を伺ってみたい方は、ぜひ田中先生にコンタクトを取ってみることをお勧めします!

古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。イエテボリー大学歯学部 "Oscillation course" 修了。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentwaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、2019年7月よりメディカルネットの顧問。離島歯科医療に従事後、本島で歯科臨床に従事している。

記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ