毎日新聞社説 開業医の年収についての誤解

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埼玉県保険医協会の意見 4月21日(毎日新聞社)説記事については、都内の開業医の例として、わずか3つばかりをあげ、全国の開業医すべてが高収入で、年収にして4000万円から5000万円であるかの論調となっており、読者に著しい誤解を与えるものとなっています。 政府の度重なる医療費抑制政策により、診療行為は適切に評価されず、医療機関経営は困難な状況を強いられています。 貴社におかれましては、昼夜を問わず地域医療を担っている現場医師・歯科医師の経営実態を把握し、国民が求める医療制度の実現に向けた世論形成がなされるよう、根拠に基づいた内容の記述を求めました。 開業医の年収についての誤解 開業医の所得を個人立て診療所でみると、03年6月実施の医療経済実態調査速報値では、有床診療所の収支差は2654万円(前回比約190万円減)、無床診療所では2198万円(前回比約229万円減)となっています。 どちらも前回より減収になっています。また、この収支差額は医業収入から費用を減じたものですが、サラリーマンの給与に相当するわけではないので、開業医の収入ではありません。 速報値には、医療機関の借入金も公表されていますが、平均で有床診療所で約63万円、無床診療所で約180万円を返済しています。 更に税金の支払いを差し引き、医療機関施設の建て替え、修繕、医療機器の購入など設備投資も必要です。 収支差からこれらを差し引いたものが、開業医の可処分所得となりますが、有床診療所、無床診療所ともに1300万円程度と報告されています。 また、ここから更に退職金の積み立てなど所要積立金が減算されます。 01年6月の医療経済実態調査を見ると、個人立て一般診療所の収支差額階級分布の最頻値100万円以上150万円未満で、その平均は126.5万円となっています。 年収に換算すると約1500万円となり、とても4000万から5000万円の年収が「ザラ」とは言えません。 大手製薬企業の平均給与は診療所医療従事者の1.5倍  医療の周辺企業である製薬企業に目を向けると、大手製薬企業15社の99年度の経常利益は22.1%で、製造業の平均が3.6%であるのに対し、その6倍と莫大な利益を上げています。 03年10月の日医総研ワーキングペーパー「医療機関の経営実態」によれば、製薬企業大手14社の月額給与は平均約70万円、一方、法人の診療所では約46万円と報告されています。 このような医療周辺企業の実態を調査し、国民に報道することも必要ではないでしょうか。 02年10月13日貴紙掲載「参入認めてサービスで競え」(山路憲夫論説委員)との整合性  貴紙に2002年に掲載された山路論説員の記事では、01年6月の医療経済実態調査の結果を引用し、無床診療所の年収はざっと3000万円と報道しています。 この根拠は、「1カ月の収入」を242.7万円としていますが、これは「1カ月の収支差額」の誤りでしたので、実際の数値より高く捉えています。 つまり、収支差額ですので、実際の開業医の収入ではなく、上述の修繕積み立て費や設備投資費、借入金などを差し引かなくてはならないため事実誤認です。  今回掲載の4000万円から5000万円は、02年当時の山路論説委員の3000万円との主張よりも更に粗雑といえ、整合性も欠如しているといえます。
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