東京歯科保険協会の「21世の歯科改革提言(案)」(6)

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臨床での若手歯科医師の能力低下が問題

  次代を担う後継者問題と専門職種の確保

 

多くの分野で後継者問題がいわれている。

農業もその一つ。

仕事がきつくて、収入が低い、それでは若い人材が育つわけがない。

やりがいがない仕事は、人から意欲と希望を失わせる。

まず、理解を求めるためには、歯科界の現状を伝える。

そのことが不可欠だ。

歯科大学・歯学部の入学定員割れが急速に進んでいる。

この背景には歯科医師になるためのす数千万円におよぶ学費や開業するための数千万円の資金確保・投資が必要だ。

ところが、歯科医師の年収が300万円では、常識的に考えても歯科大学・歯学部の入学を受験するメリット、魅力はなくなっていく。

年収が300万円では、教育費や歯科診療所開業資金の回収は困難。

今後も歯科医療機関の経営悪化が続けば、一層、この傾向に拍車がかかることは明らかである。

そこで、歯科医師は過剰だから歯科大学・歯学部の定員割れでもよいという単純な問題ではない。

このまま放置されて、定員割れが続くと歯科医師は減少するだろう。

また、意図的に国家試験を厳しくする。

それで歯科医療の水準(質)の低下は防げるのか?

魅力がない職種には、有能な人材は集まらない。

新たな深刻な問題が歯科界に生まれる。

最終的には、国民の歯科医療不信を招く結果になるだろう。

また、2006年から歯科医師臨床研修制度が必修化された。

しかし、現状のように期間1年では、歯科医師としての

独り立ちは困難だ。

歯科の治療上の特徴は小外科の連続であり、適切な治療は医学の知識を「手業」として表現できる能力(技能)を獲得してはじめて成功する。

したがって、一人前になるためにはかなりの経験と時間をようする。

これはスポーツに例えると分かりやすい。

プロフェッショナルの世界で通用するには、それ相応の時間が必要。

また、歯科医療の現場では若手の歯科医師を雇用できるような経営体力がなくなっている。

このため若手の歯科医師が歯科医師として技能を伸ばせていく場所の確保が困難になっている。

すでに、このような状況が続くなかで臨床での歯科医師の能力低下が問題となって浮上している。

さらに問題なのは、若手の歯科衛生士が定着しない。

全国的に就業歯科衛生士総数は増加している。

しかし、30歳代以降の歯科衛生士はパート勤務による復帰等が主な要因である。

むしろ、新卒や20歳代の歯科衛生士の定着は悪化している。

こうした状況では、「募集をしてもなかなか応募者が来ない」という現場の歯科衛生士不足を解決できない。

現実には歯科衛生士への志望者が減少し、歯科衛生士学校の定員割れや廃校する学校も増えている。

歯科衛生士が低賃金で長時間拘束にならざるを得ない状況がある。

歯科医療機関側から見れば、経営悪化により充分な賃金を払えないという現状もある。

したがって、歯科衛生士の問題は歯科医療機関の経営悪化の改善なくしては展望が見えない。

一方、歯科技工士は10年後、担い手がいなくなるという、さらに深刻な状態になる。

歯科技工士の半数以上が45歳以上で占められている。

歯科技工士学校を出ても就職できない状況と歯科技工士学校の閉鎖等により、今後さらに後継者が少なくなることが予想されている。

この背景には、歯科診療報酬が低いため、歯科医療機関の経営悪化のしわ寄せがある。

十分な歯科技工料金が支払われていない現実がある。

そうしたなか、中国など、東南アジアへの補綴(歯科技工物)の海外発注が厚生労働省の容認によって拡大している。

国内の歯科技工士の減少が続けば、現在は自費診療にのみ認められている海外歯科技工が、保険歯科診療での補綴物もなし崩し的に海外へと流れる可能性がある。

そのようになれば、歯科医師と歯科技工士の密接な連携を必要とする補綴物の製作の国内基盤が崩れてしまう。

海外依存により日本の補綴物・補綴治療の質の低下が現在以上に進むことが必至である。

補綴物は現物給付されているが、補綴物を作る歯科技工はまさに、治療の一連のなかにあり、不可分のものである。

そうした点で歯科技工士が国家資格であることで安全性が担保できている。

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