東京歯科保険協会の「21世の歯科改革提言(案)」(5)

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東京の歯科医院は常勤の歯科衛生士雇用率は53% 

 

歯科医療の質と安全基盤が失われている

 

歯科医院は、個人事業主であり、零細な規模経営である。

2人の歯科医師が組んで、共同経営する診療スタイルを、提唱したのが、アメリカから来たダリル・ビーチさんであった。

とても合理的な診療経営形態であったが、ほとんど定着しなかった。

また、個人の歯科医院が大きな規模に発展するのが難しいので、多店舗化する。

つまり分院展開となる。

大半の歯科医院は、患者減と歯科医療費抑制策による経営困難の中で、診療時間の延長などの努力をしている。

しかし、それだけでは経営状況は容易に改善できる状況ではない。

こうした中で、歯科医師としての意欲が顕著に低下し、子弟を歯科大学・歯学部に入れないという意見が増加している。

現在、就業歯科衛生士数は増加しているが、東京では53%の歯科医院しか常勤の歯科衛生士を雇用できない。

これは異常な状況である。

一般の人たちに、このような状況をどう説明すべきか?

看護師のいない病院を思い描くと、比較的分かりやすい構図であろうか。

歯科疾患予防や口腔ケアでは、歯科衛生士は不可欠な存在。

その歯科衛生士がいない歯科医院は、欠陥的な医療機関ともいえる。

歯科衛生士の本来の役割が、歯科医院で機能不全となっている。

歯科衛生士が歯科医院では、働きたくとも働きたくないのである。

さらに、深刻なのは、歯科技工士を最近の歯科医院ではほとんど雇用できない状況にある。

歯科衛生士と歯科技工士を雇いたくとも雇えないほど経済的に困難な状況になっている。

そこで、歯科衛生士の代わりに、給与が安い歯科助手を苦肉の策として雇用しているのが現実なのだ。

また、新しい技術が保険に長期間ほとんど導入されていないため、治療に使用できる基本的な技術は数十年前と変化がない。

これでは、歯科医学の発展と歯科医療の現場の乖離は深刻になるばかりである。

医科の発展と同様に、歯科分野でもCTなどの診断機器、歯科用レーザー、インプラント、歯周組織再生法など治療技術や歯科材料の発展はめざましいのであるが、ほとんど保険診療に導入されていない。

高齢者の増加によって、全身的管理を前提とした歯科診療が求められている。

しかし、血液検査などの医学管理に最低必要なことだ、保険診療では認められていない。

 

地域歯科医療の後退となる病院歯科の減少

 

歯科診療報酬の低さは、一般歯科診療所の後方支援機能をもつ病院歯科を減少させた。

病院数は1990年ころをピークに減少傾向に入った。

それ以上に病院歯科も不採算なので減少している。

1990年の病院歯科の数は1528施設で、病院歯科のある割合は16.9%であったが、2007年には1192施設で15.3%にまで減少している。

この17年間で病院は13.7%減少したのに対し、病院歯科は21.8%の減少となっている。

このため、一般歯科医療機関では対応できないような合併症をもっている患者や難易度の高い口腔外科処置の受け入れ施設が減少している。

これは地域歯科医療の後退を表している。

2010年度の歯科診療報酬改定では、病院歯科への一定の点数の配分がされたが、改善には依然足りない状況である。

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