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歯科医師、歯科衛生士の皆さんは学生時代に小児の成長と発達段階を学ばれてきたと思います。しかし、実際診療室で関わる小児患者の中には年齢よりも幼く、こちらの指示が通らない場合があります。そんな時、私たち歯科医療従事者はどのように対応すべきなのでしょうか。
発達障害グレーゾーンとは、「発達障害の診断には満たない状態」のことを言います。発達障害グレーゾーンは診断基準に満たない状態のため、グレーゾーンの特徴や症状がはっきりと決まっているわけではありません。しかし、発達障害グレーゾーンの方は、発達障害特有の症状の一部が見られることから、‘’グレーゾーン‘’と呼ばれることがあります。
発達障害とグレーゾーンの境界は曖昧ですが、例えば「自分の話ばかりで相手の話を最後まで聞けない」といった症状が、発達障害の中の自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害に分類されるとしたらグレーゾーンは「時々相手の話を聞けず、自分の話が中心になってしまう」などの症状が見られると考えられます。
診療室は常に危険がいっぱいです。しかし、発達障害グレーゾーンの小児や、幼い子供たちは好奇心から手を伸ばしてしまうかもしれません。そんな時は「これを触ると怪我してしまうからね」など理由を加えてから注意するようにしましょう。
ですが、こういった好奇心は子どもの成長にとって非常に大切なことなので絶対に否定してはいけません。そのため、「気になるよね。でもこれは先生だけが使えるものだからね」などと伝えて納得させましょう。
このようにタービンなどの切削器具や鋭利なものが多い診療室では、患者に危険を及ばさないように我々歯科医療従事者が配慮しなくてはいけません。
発達障害グレーゾーンの子供を持つ保護者の中には、「うちの子はなんで同級生の子供たちのように上手にできないのだろう」「どうして言うことが聞けないの?」などと頭ごなしにお子さまを𠮟ってしまう方もおられます。
皆さまの周りにこのような保護者がいましたら、まずはご家庭での様子などを聞き、小児患者と保護者が日常の中で大切にしていることを守りながら診療に活かしていけるよう、診療の流れを計画していきましょう。
例えば、「絵や図形などを覚えることが得意」な小児患者には絵カードを使いながらやるべきことを伝える、「長時間チェアに座ることが苦手」な小児患者には、タイマーを設定し、設定した時間は「気をつけ」した状態でクリーニングを受けるなどお約束をするなどして楽しみながら歯科と向き合ってもらえるように私たちが工夫していきましょう。
発達障害グレーゾーンの小児患者や保護者は発達障害の診断は下りていないものの、日常生活で悩んでいることがあるかもしれません。そんな時は、私たち歯科医療従事者が診療の際にちょっとした工夫をすることで、歯科医院という場所が居心地の良い場所になるかもしれません。
歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。
Instagramアカウント|歯科衛生士カウンセラー・ライター西山
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