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小児患者に対して「意思疎通が難しいな」「指示が通らないな」などと感じたことはありませんか?もしかしたら、その患者は発達障害かもしれません。
周りの大人が気づいていなくても、発達障害の患者にとっては診療室などの慣れない環境に過ごしにくさを感じている可能性があります。
発達障害者支援法において「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
特に、発達障害の中で最も多い障害は「自閉症スペクトラム」と言われています。自閉症スペクトラムの方は「強いこだわり」「特定のものへの苦手意識」「コミュニケーションが困難」など日常において様々な問題と戦っています。
特に歯科診療室は、自閉症スペクトラムの方にとっては過ごしにくい環境かもしれません。
歯科診療室は「歯科材料の臭い」「タービンの音」など患者にとって不安になるシチュエーションがたくさんあります。
患者にとって不安になるような治療やシチュエーションの前にはトレーニングが必要です。会話が十分にできる患者に対しては「この道具は虫歯治療で使うものだよ」「バキュームを触って確かめてみよう」など道具が危険でないことを確かめながら少しずつ練習していきましょう。
また発達障害の患者はこだわりが強い性格の方が多いため「毎回同じチェアがいい」「個室がいい」など患者の希望によって対応することが大切です。
治療道具のトレーニングが終わったらいよいよ治療のスタートになります。トレーニングと治療をする歯科医師は同じ人物の方が、患者は混乱しないのでよいでしょう。
トレーニングが成功しても、治療となると敏感な患者は「何かが違う」と感じ、暴れてしまうことがあります。そのため、保護者に了承を得たうえで、脚や手を抑える人、頭を抑える人、介助者、器材を準備する外周りの人など計4人のスタッフが必要な場合があります。
それぞれのスタッフは、発達障害に関する知識を持ったうえで診療に携わるようにしましょう。また、障害によっては声掛けの際も、色々な言葉が飛び交うと患者がパニックになってしまう恐れがあるので、声掛けスタッフはあらかじめ決めておくとよいです。
発達障害の患者は一度、歯科治療に対し恐怖心を感じてしまうと歯科医院に行くことすらも困難になってしまうことがあります。
特に、小児に関しては初めて行った歯科医院のイメージが大人になってからも強く根付きます。私たち歯科医療従事者が、発達障害の患者にとって過ごしやすい環境を作っていくことが大切です。
歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。
Instagramアカウント|歯科衛生士カウンセラー・ライター西山
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