歯科医師向け 開業支援・経営支援コラム Vol.23【人材・教育】スタッフ採用における選考のポイント②

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前回のコラムでは「スタッフ採用における選考のポイント①」というテーマで、採用のスタート段階である書類選考について詳しく説明させていただきました。今回は書類選考に通過した人材の人柄や印象を見極めるための医院見学・面接を実施する際に気を付けておきたいポイントについてお話させていただきます。

まず、前回のおさらいですが、歯科医院におけるスタッフ採用の選考プロセスは、次のような流れに沿っておこなわれます。

①書類選考
②医院見学・面接
③適性検査や試験

※注:②と③は順序が逆になる場合があります。また医院によっては③をおこなわない場合もあり。

①の書類選考に通過した求職者に連絡を入れ、できればその場で次のステップ(医院見学・面接)の日時を決めましょう。ここで気を付けたいのが「求職者への連絡は極力速やかにおこなう」という点です。求職者の多くは、他院の選考も同時に受けている場合も多いため、対応が遅いと他院に就職が決まってしまうこともありえます。せっかく自院に興味を持ってもらえたのに、対応が遅れたことで機会損失してしまうのは非常にもったいないことで避けなければなりません。レスポンスのスピード重視を心がけましょう。

さて、書類選考に通過した求職者の見学と面接が決まったら、次の点に注意して準備を進めましょう。

<医院見学・面接で見極めるポイント>

◆医院が求める人材像と求職者がマッチしているかどうか、しっかりと見極めましょう。「医院の理念や価値観に共感してもらえそうか?」「診療スタイルや注力したい治療分野が医院の方向性と合致するか?」「求職者の性格や雰囲気が医院に合っているか?」など、しっかりと見極めましょう。

◆社会人としての基礎が兼ね備わっているかしっかり見極めましょう。言うまでもありませんが、医療従事者も社会の一員なので、社会人としてふさわしい振る舞い、能力、身だしなみなどが求められます。「気持ちの良い挨拶や笑顔など、感じの良さを兼ね備えているか?」「しっかりと受け答えの出来るコミュニケーション能力が備わっているか?」「相手に不快感を与えない身だしなみができているか?」など、しっかりと見極めましょう。

◆自院に対する熱量(入職意欲)があるかどうか見極めましょう。求職者の能力が高いことはとても重要な要素ですが、医院に対する気持ち(熱量や入職意欲)が薄ければ、採用後の活躍も見込めませんし、すぐに退職してしまうなど残念な結果になりかねません。「前職の退職理由や転職理由が前向きかどうか?」「仕事に対する考え方や自身の将来像がしっかりしているか?」「自院の理念やビジョンに共感してもらえそうか?」など、しっかりと見極めましょう。

<医院見学のポイント>

◆自院に関心を持ってくれたことに対して感謝の気持ちを伝えましょう。ご存知の通り、日本国内には約68,000件の歯科医院があり、先生が開業するエリアにも歯科医院は沢山あるはずです。そんな数ある歯科医院の中から、自院に興味を持って選考にエントリーしてくれること自体とてもありがたいことなので、ぜひ院長の口から見学に来てくれたことに対する御礼をお伝えしましょう。

◆医院見学といっても、求職者任せにするのはやめましょう。よく見学をおこなう際に「自由に見ていいですからね!」といって求職者をしばらくの間1人にしてしまう先生がいらっしゃいます。院長もしくはスタッフがある程度リードして、主体的にご説明、ご案内してあげないと、求職者は困惑しますし、放置されたと感じてしまう場合もあるので注意が必要です。

◆医院見学の流れを作っておくなど事前の準備をしっかりしておきましょう。上記でもご案内しましたが、求職者が医院のことをしっかり理解し興味を持ってもらうためには、医院の魅力や院長の考え方をしっかりと伝える必要があります。医院見学の流れを事前にしっかり準備しておくことで、スムーズな医院見学が実施でき、説明の抜け漏れもなくなります。

◆求職者には優しく丁寧な対応を心がけましょう。いくら選考している立場とはいえ、まだこの段階では求職者が歯科医院を選別しているという側面があります。対応が雑でネガティブな印象を持たれてしまうと選考辞退ということにもなりかねませんので、ぜひ明るく丁寧な対応や説明を心がけましょう。

<面接のポイント>

◆求職者を見極めるためのチェックポイントを設け、チェックリストを準備しておきましょう。「気持ちの良い挨拶ができているか」「質問に対して的確な答えが返ってくるか」「医療機関にふさわしい身だしなみができているか」など、採用するスタッフに兼ね備えていて欲しいポイントをまとめておきましょう。

◆求職者に聞いておきたい質問をリストにまとめておきましょう。面接は時間も限られているので、質問リストを手元に置いておくことで、抜け漏れなく聞きたいことを確認することができます。

◆自院の魅力や理念・ビジョンを応募者にアピールしましょう。当たり前ですが、開業前なのでまだ何も歯科医院としての実績はありません。また、実際に診療している様子を見学することや、働いているスタッフと話してもらうことができないため、求職者はそこで働く自分のイメージをなかなか持ちにくいという部分もあります。そこを補うためにも、自院の魅力、理念、ビジョンなどを熱い気持ちを込めて求職者に伝えましょう。

◆条件面についてはしっかりと確認するようにしましょう。給与や社会保険、労働時間やお休みなど雇用条件はとても重要なポイントです。曖昧にしたまま採用してしまうと後から「話が違う!」とトラブルになる可能性もあります。「言った・言わない」の話になるのを避けるために、できれば書面を用意し、きちんと説明するようにしましょう。また給与などの条件面は求職者側から言いにくい傾向があるので、院長の方から聞いてあげることをおすすめします。

◆求職者に聞いてはいけない質問があるので、事前に把握しておきましょう。公正な採用選考をおこなうため、職業安定法第5条の4及び平成11年告示第141号により、特定事項の個人情報を収集することが禁止されています。面接時には、次のような質問は避けるように十分注意しましょう。「本籍地」「家族の出身地」「現住所の場所や環境、立地」「応募者本人や家族の個人情報」「家庭環境」「資産の有無」「宗教」「支持政党」「差別にあたる発言」など。

上記のポイントを抑えて、良い人材の選考ができるようにしましょう。次回は、スタッフ採用における選考のポイント③ 適性検査(性格診断・一般常識)について解説させていただきます。

事務長代行および事務長養成型 経営コンサルタント
ライトアーム代表 
五十嵐 伸好

歯科器材メーカーにて開業担当として200件以上の開業に携わり、大手ディベロッパーや商業施設との交渉により物件獲得、事業計画書の作成、開業資金の融資確保、医院内装のアドバイスなど、機械メーカーの枠を超えて開業までのすべてをとりまとめ、先生の評価をいただく。
その後、医療法人事務長となり多岐にわたる事務長業務(採用、人事、広報、渉外、経営、税務、労務など)を行い法人運営し、就任時から売上400%以上アップを達成する。現在は事務長代行もしくは事務長養成型の経営コンサルタントとして運営に困っている院長の右腕として活動している。

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