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今までに視覚障害を持つ患者の診療をしたことがあるでしょうか。「視覚障害のある方」と言っても、見え方の程度はその方により異なるため、個別に配慮が必要です。今回は、視覚障害の患者が来院した際の対応について詳しく解説します。
視覚障害とは、眼球や視神経及び大脳視中枢などで構成される視覚系のいずれかの部分に障害があり、見ることが不自由または不可能な状態をいいます。具体的には、眼鏡やコンタクトレンズをつけても一定以上の視力が出ない状態です。視野が狭くなり足元の段差に気付かずにつまずいたり、人にぶつかったりしてしまいます。
視覚障害には先天性と後天性があります。先天性の場合、幼少のころから盲学校(視覚特別支援学校)に通って点字や職業教育など、専門的な教育を受けることができます。一方で後天性の場合は、病気や事故などで、これまでの視覚中心の生活から大きな転換を余儀なくされた方が多く、日常の過ごし方には個人差があります。
また視覚障害は「盲」「弱視」に大きく分類されます。
視覚による情報を全くあるいはほとんど得られない状態です。ただし全く見えない方はわずかで、明暗はわかる方や色はわかる方、ぼんやりと形がわかる方など、見え方はさまざまです。
盲の方々は、日常生活では音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握しています。文字の読み書きは、最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うことが多いです。点字も視覚障がい者が自由に読み書きできるための大切な手段の一つです。移動時は、白杖を持ち単独で歩くケース、ガイドヘルパーや盲導犬と歩くケースがあります。
眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力の低い状態ですが、保有する視力を活用しながら生活しています。見え方は、ぼやけ・視野狭窄・中心暗点・まぶしさなど、その方によりさまざまです。視力を活用できても、遠くのものや小さいもの、動いているものが見えない、大きいものの全体像が把握できないなどの困難があります。また読み書きに時間がかかったり、負担が大きかったりすることもあります。移動時には白杖を用いない方も多く、一見視覚障害者とわからないことが多くあります。
視覚障がい者と一口に言っても、見えなくなった時期、障害の状況や程度はさまざまです。まずは、ご本人に見え方やどのようなサポートを希望するか等確認しましょう。一般的には、次のような点に留意する必要があります。
患者の視野に入るよう、正面から近づいて名前を呼んでから話しかけます。自分に話しかけられていることに気づいていない様子の際は、話しかけながら肩を軽く叩いて知らせても良いでしょう。
会話の中で相づちを打つ場合、うなずいたり、首を振ったりするだけでは伝わらないことが多いです。声に出して相づちを打つようにしましょう。
視覚障害を持つ患者を待たせるときは「今○○をしているので少しお待ちください」というように、詳しい状況の説明がとても大切です。そうした声かけがないと、その「間」に意味があるのか、それとも相手が自分のリアクションを待っているのかなど、不安に感じてしまいます。具体的な説明があることで、患者は安心して待つことができます。
今まで話していた人が何も言わずに立ち去ると、そのことに気づかず、まだ近くにいると思って話してしまうこともあります。健常者と同様あるいはそれ以上に、「一旦失礼します」「少し席を外します」など必ず一声かけます。また、戻る場合も「○○さんの順番がきたので呼びに参りました」などその旨を伝えましょう。
日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。歯科衛生士免許取得後、一般歯科、予防歯科、訪問歯科を主軸に勤務。現在、臨床業務を行いながら、医院の仕組みづくりやスタッフ育成、チームマネジメントに携わる。2021年7月歯科衛生士のオンラインサロン「99.99〜フォーナイン〜」を立ち上げる。
Instagram @yui_takayama/
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
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