母子健康手帳「歯の健康診査」記載マニュアル 「歯の形態・色調の異常(あり/なし)の考え方と判断について」〜日本小児歯科学会提言より〜
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健診項目の1つである、歯の形態・色調の異常なし・ありについての判断基準はご存知だろうか。歯の形態や並び方、色調などはさまざまであり、正しい歯並び、口腔状況を獲得するために保護者へ指摘することは重要である。とはいえ、指摘自体が保護者の不安を煽らないよう、伝え方や判断には十分な配慮が必要だ。
今回は日本小児歯科学会提言より母子健康手帳「歯の健康診査」記載マニュアルの考え方と判断について解説していく。
2本以上の歯が互いに結合している。乳歯に多く(1~5%)、下顎乳中切歯と乳側切歯、下顎乳側切歯と乳犬歯、上顎乳中切歯と乳側切歯の結合として見られることがほとんどである。
乳歯の癒合歯症例では、後継永久歯の先天性欠如がみられるケースがあるため、保護者には歯科医院での継続的な管理が必要であることを伝える。
その際、保護者へ過度な不安を煽らないよう【異常あり】と記載するものの、緊急性がないことや今後の流れなどについて十分に説明するべきだろう。
乳歯および永久歯切歯舌側面の基底結節が主に発達し、円錐状の突起を形成している。乳歯では上顎乳中切歯に見られることが多い。歯の萌出期では、過剰歯との鑑別が必要であり、対合歯との咬合に影響することがあるため、歯科医院での定期的な管理が必須だ。
棘突起とも呼ばれ、突起している部分には神経が通っていることもあり、調整の際には十分に注意して切削する。
切歯結節が存在しても少しずつ自然に削れていったり、乳歯の場合ほとんどが永久歯への影響はないとされていたりするため、保護者には毎日の仕上げ磨きの際のチェックや、定期的な通院をおすすめするといいだろう。
遺伝性のエナメル質形成不全症や象牙質形成不全症の場合には、全歯にわたり色調の異常が見られる。重症度によっては形態異常や歯冠部の崩壊が確認されるケースもある。齲蝕との鑑別も重要であるため、歯科医院での定期的な管理が必須である。
齲蝕になりやすい歯質においては、親子への正しいブラッシング指導や定期的なフッ素塗布などをおすすめするべきだろう。
全身的、局所的な障害が原因で起こる。エナメル質が、白斑や褐色の色調異常から、エナメル質が薄くクレーター状の表面形態の異常、歯冠の崩壊など、歯髄炎症状の発現や歯冠崩壊の進行を予防するため歯科医院での定期的な管理をおすすめする。
出生時の全身状態や常用薬剤によって、歯の色調異常が見られる。代表的なものとして、高ビリルビン血症(重症新生児黄疸、先天性胆道閉鎖症、新生児溶血症など)、新生児メレナ、ポルフィリン症、テトラサイクリン系抗菌薬の長期投与などが原因ではないかと考えられている。
齲蝕が観察されない歯冠の局所的な変色は、外傷などによる歯髄内出血および壊死などが疑われる。ピンク、赤、褐色、灰褐色、黒色の色調変化として見られ、乳歯のケースでは後継永久歯歯胚にも影響する場合があるため、歯科医院での継続的な管理が必須である。
形成不全は保護者から見ても発症している箇所がわかりやすく、観察しやすいのではないかと考える。保護者へは毎日の仕上げ磨きの際にチェックをすることと、定期的な歯科医院での管理を徹底していただきたい。
カラベリー結節、矮小歯(円錐歯、栓状歯、蕾状歯)については保護者への伝達はするべきだが、母子手帳への記載は【異常なし】とされている。
とはいえ、磨き残しができやすかったり、自身では気づいていないというケースもあるのでブラッシング指導や対象の歯について伝えることが重要ではないかと考える。
今回は日本小児歯科学会提言より母子健康手帳「歯の健康診査」記載マニュアルの考え方と判断について解説してきた。
ほとんどの異常が緊急性がある症状ではないため、指摘をする際には保護者へ不安を煽るような伝え方をしないよう十分に注意するべきである。
緊急性がない場合においても、歯科医院での定期的な管理や仕上げ磨きの際の毎日のチェックは欠かさないよう伝える。
しかしながら【異常あり】と指摘されることで、緊急性はなくとも不安を煽ってしまうことにもなりかねないので【異常あり】と断定した記載方法ではなく【要観察】や【定期的な診察が必要】など不安を煽らないような記載マニュアルも検討してはいいのではと考える。
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