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小児患者や障害をもつ患者は、歯科治療に対し恐怖心があり協力が得られない場合が多くあります。その際に行動変容法を応用し、安心して歯科治療を受けられるようにトレーニングを行う必要があります。今回は小児歯科や障がい者歯科における行動変容法について解説します。
行動変容法とは、行動療法の理論や技法を用いて、特別な場所や器具・器材を必要としない基本的な方法のことです。不適応行動を起こさせない、または出現してしまった不適応行動を変容させることを目的に行います。まずは患者の発達を評価し、達成できる目標や内容を設定し、下記のような様々な行動変容法やコミュニケーション法を組み合わせてトレーニングを行いましょう。
行動変容法は大きく2つに分かれ、「不安軽減法」と「行動形成法」があります。
術者の対応方法を工夫することで、患者の不安や恐怖感などによる条件反射(レスポンデント行動)をコントロールする方法です。不安軽減法には下記の方法があります。
これから行うことを口頭で説明し(Tell)、実際に使う器具を見せ(Show)、説明したことを行う (Do)方法です。行動変容法の中でも非常に有効な方法です。
例:「お口の中を鏡で見るよ」と説明する→実際に鏡を見せる→口の中に入れる など
物事を遠回しに伝えることの総称です。患者にとって不快感となり得るような内容を、イメージしやすい言葉に置きかえて説明します。
例
●横になる→ゴロンするよ
●歯を削る→電車ゴトゴトするよ など
あらかじめ約束した時間をカウントしながら進め、歯科治療への適応行動を育てていく方法です。声を出して数えることで、時間の経過と到達目標がわかって先の見通しが立つため、我慢できるようになっていきます。3歳以上の発達年齢であれば効果が見られやすい方法です。
例:「10数える間歯ブラシを動かそうね」→実際に口頭で10数えながら磨かせる など
不安や恐怖刺激の弱いものから順に強い刺激にステップアップし、少しずつ慣れていかせる方法です。1ステップが小さいためリラックスしながら、不安や恐怖感などを軽減させることができます。
例:座位で歯磨き→水平位での歯磨き→ミラー・探針・バキューム・タービンと目標までのトレーニングを繰り返し行う など
「観察学習」や「模倣学習」とも言われ、モデルの行動を観察することにより観察者の行動に変化を生じさせる方法です。モデルとしてはリラックスして歯科治療を受け、褒められている患者が適切です。自分がどのような行動をとれば良いかを学習し、適切な行動には褒賞があることを理解させることで効果があります。
例:姉が泣かずに歯科治療を受けている姿を見せることで、妹も泣かずに治療を受けられるようになる など
歯科治療に対する不安や緊張を軽減させるために、患者の気持ちをリラックスさせる方法です。
例
●天井にテレビを付ける
●アロマを焚く
●リラクゼーション音楽を流す など
今回は「行動変容の目的や不安軽減法」について解説してきました。次回は行動変容法のもう一方「行動形成法」について解説していきます。
日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。歯科衛生士免許取得後、一般歯科、予防歯科、訪問歯科を主軸に勤務。現在、臨床業務を行いながら、医院の仕組みづくりやスタッフ育成、チームマネジメントに携わる。2021年7月歯科衛生士のオンラインサロン「99.99〜フォーナイン〜」を立ち上げる。
Instagram @yui_takayama/
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
Instagram:@toothteethtokyo
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