この記事は
無料会員限定です。
今回は糖尿病患者に対しての歯周組織再生療法は可能なのか、前回と同様に【2023年糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン】を元に解説していく。
健康な患者にとって歯周組織再生療法は多くの研究結果が存在しており、歯周組織の改善を高く評価している。しかし糖尿病患者の場合には評価を示す報告も少なく、創傷治癒との関連も考慮すると現状 臨床上においても大きな課題となっている。
ガイドラインによると、血糖のコントロールが良好ではない糖尿病患者においては、創傷治癒や易感染性の点から外科的な処置を回避すべきであり、また GTR 法や塩基性線維芽細胞増殖因子を用いた歯周組織再生療法については、有効性に関するエビ デンスが皆無であるとしている。
そして最終的な報告について、糖尿病患者における歯周組織再生療法については、血糖のコントロールが良好な糖尿病患者に対してのみエナメルマトリックスタンパク質を用いた歯周組織再生療法を行うことを弱く推奨する (エビデンスの確実性:低 推奨の強さ:弱い推奨)としている。
今回のCQに対する無作為比較試験は存在せず、観察研究のみのためエビデンスの確実性が低いこと、また エナメルマトリックスタンパク質を用いた歯周組織再生療法は、保険外診療であるため 医療費負担も考慮して検討すべきであることから今回の最終的な報告となった。
ガイドラインに記載されている研究によると再生療法による効果は非糖尿病患者と同等であるとしている。とはいえ、有効に関するエビデンスや、無作為資格試験などは存在せず依然として糖尿病患者における報告が少ないのが現状だ。
今回のガイドラインでは血糖コントロールの良好な患者のみ再生療法は可能とされているが、現状の報告を踏まえ、臨床上においては慎重に判断していかなくてはいけない。
現状 糖尿病患者における歯周治療に関する報告は全体的に少なく、臨床においても課題は大きい。患者個々の全身状態や意思、価値観など総合的に判断して、安全に歯周治療を進めていけるよう今後 評価の高い報告が出てくることを願う。
記事提供
© Dentwave.com