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今回は糖尿病患者に対してのインプラント治療は避けるべきなのか、前回と同様に【2023年糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン】を元に解説していく。
健康な患者のインプラント治療予後についての報告は多数存在するが、糖尿病患者についての報告は依然として少ない。また、インプラント治療を受ける患者層と糖尿病に罹患する患者層は重なることが多い。
さらに創傷治癒との関連も考慮すると、実際の臨床現場において糖尿病患者に対してインプラント治療を行うかどうかの判断は大きな課題となっている。
ガイドラインによるとインプラントの生存時間や動揺については、これまでの研究において糖尿病患者と非糖尿病患者の間には差異を認めないとしている。
一方で、コントロールの不良な糖尿病を有する場合には、創傷治癒や易感染性の点から侵襲的な処置を回避すべきであり、HbA1cが7%程度までにコントロールされている場合にはインプラント治療を妨げるものではないが、糖尿病を有するものにおいてはインプラント周囲歯槽骨吸収の増加が予測されるとも記載している。
設定したアウトカムに関するエビデンスによると非糖尿病患と有意差を認めないとしている項目もあるが、有意差あり、さらに糖尿病が関連しているのではないかといったエビデンスも存在した。
また、今回のCQに対する無作為比較試験は存在せず、観察研究のみによる結果であること、欠損補綴に対するより安全な非侵襲的な補綴治療も多数存在し選択可能であることなどから今回の最終的な結果は【コントロール良好な糖尿病を有する患者においては,インプラント治療を弱 く推奨する. (エビデンスの確実性:低 推奨の強さ:弱い推奨)】となった。
ガイドラインでは、コントロールの不良な糖尿病を有する患者の場合には、創傷治癒や易感染性の点から侵襲的な処置を回避すべきであり、コントロール良好な糖尿病を有する患者においては、インプラント治療を弱く推奨するとしている。
とはいえ臨床上、インプラント治療を必要としている糖尿病患者は存在しており、医院側も患者により良い歯科治療を提供したいという強い思いもあるのではないか。
その場合、当然だが非侵襲的な補綴治療も選択肢に入れつつ、さらに患者の全身状態も考慮しながら、安全かつ患者の納得する歯科治療を提供できるようインプラント治療も慎重に取り入れられる完全な体制を作ることがベストではないだろうかと考える。
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