「令和4年度診療報酬改定(看護の処遇改善)について」・「医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付け及びこれに伴う診療報酬上の加算の取扱いについて」の答申に対する日本歯科医師会の見解
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8月10日に開かれた中央社会保険協議会の総会にて厚生労働大臣に標記の答弁が行われました。総会の中で、歯科に関連する内容について日本歯科医師会の見解が報告されました。
2021年10月に発足した岸田政権の政策の一つ「看護職員等処遇改善事業補助金」について、歯科にも関連する内容の見解が日本歯科医師会から示されました。その政策との整合性や継続性の観点から、診療報酬改定による労働環境改善においても、医療機関の判断により、歯科衛生士などコメディカルの賃金改善も対象となるように以前から要望が出されていました。
現時点では、看護師に対して一時的な補助金による賃上げに留まっていますが、今後、長期的には診療報酬改定を行うことで、看護師の賃金を3%程度引き上げる見込みとなっています。
今回の答弁では、処遇改善措置の対象者は医療機関の現状に応じて、医療機関に勤務する看護職員等となり、対象が看護師だけではないということが示されています。つまり、歯科衛生士・歯科技工士といった職員も処遇改善措置の対象となる見解を示しており、今後賃金引き上げの対象となる、前向きな見解を示しています。賃上げによって、専門職である歯科衛生士や歯科技工士の離職対策となり、長年の人材不足を解消する一手となるのか、今後も動向に注目していきます。
「オンライン資格確認」とは、マイナンバーカードICチップや健康保険証記号番号によって、オンラインで資格確認ができる新制度です。
医療業務の効率化や医療技術の向上といったメリットがある医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が歯科業界にも徐々に導入が進み始めています。
そのような中、今後導入されることが決まっている「オンライン資格確認システム」の原則義務化の対応についての報告がありました。
オンライン資格確認の原則義務化については導入にあたり、対応できない医療機関に対する例外的措置や財政支援、経過措置期間の設定といった対応を求めてきました。
今回の答弁では、紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局が、オンライン資格確認の原則義務化の例外となりました。また、機器の供給不足によって導入が遅れるケースやネットワーク環境の整備ができないケースも含め、諸事情によりオンライン資格確認システムの導入ができない医療機関もあるのではないかと考えられています。
今回の機器の導入や整備にかかる補助の見直しや配慮に加え、オンライン資格確認導入の原則義務化以降も現状の実態を把握し、検討を行うなどして、医療の現場に混乱が生じないように引き続き対応を確認していくとのことです。
現行の「電子的保健医療情報活用加算」は、令和4年度改定で新設された、オンライン資格確認等システムを通じて患者情報を活用した際に算定できる、診療報酬上の評価です。医療機関にて、患者自身の薬剤の情報や特定健診情報を把握して診療に活用することは、医療の質の向上や医療連携も取りやすくなるメリットがあります。
今回の総会では、現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設する案が提示されました。
日本歯科医師会の見解としては、「新設されたことに対しては評価するが、オンライン資格確認を行う体制を確保し、診療に薬剤情報や特定健診情報等を活用するためには、より一層の評価の充実が望まれる。」との記載がありました。
今回新設された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の評価の在り方について調査・検証を行い、問題点が上がった際は、速やかに対応を求めていくとのことです。
答申など当日の資料は第527回中央社会保険医療協議会(厚労省HP)を参照。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00159.html
松本歯科大学衛生学院卒業後、一般歯科医院にて勤務。歯科衛生士としてキャリアを重ねる一方で、働き方の多様性を模索していた時にライターという仕事に出会う。
現在は、歯科医院に勤務しながら、ライター活動を行う。
「歯科の専門家の書く分かりやすい記事」をモットーに歯科医院のHP記事やブログ執筆活動を中心に執筆を行なっている。
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