遊離皮弁再建における鏡視鏡下吻合部血栓の予防戦略

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▲群馬大学大学院医学系研究科口腔顎顔面外科学講座・形成外科学講座 牧口 貴哉 氏
遊離皮弁再建の血管吻合は、機械的で術者によって差が出にくい手技で比較的Easyな手技という評価もある。しかし、顕微鏡での吻合手技・移植小血管の選択・血管径の折れ曲がりやねじれの予防という各タスクをクリアにすることで、100%に近い成功率を目指すことが前提条件となる。
 あらゆる主義の礎になっている血管吻合に関して顕微鏡下で手技を実施する利点とともに具体的な縫合方法を踏まえてわかりやすく牧口氏は示唆していた。
当科における血管吻合の実践法について
遊離皮弁再建(図)は皮膚や脂肪、筋肉、ときには骨に動脈・静脈をつけて離れた移植層の血管との吻合を顕微鏡で行い、当科では対面式の座椅子を使っている。
 実際、遊離腹直筋皮弁であればこのように心隔壁静脈を血管径として腹直筋前頭を広範な欠損部に移植して頸の血管と繋ぎ、欠損部の再建を行っている。

▲図:遊離皮弁再建
群馬大学で2014年10月~2018年4月に実施した132例の中で、吻合部血栓は2例(0.8%)に生じ(1例を再手術で救済)、最終的な成功率は99.6%であった。血管吻合が失敗してしまうと、遊離皮弁再建の全タスクが無駄になってしまう礎になる手技のため、少しでも成功率を100%に近付ける必要がある。
われわれは、血管吻合に関して以下の3つのタスクにわけたかたちで考えている。(1)顕微鏡下での吻合手技、(2)移植床血管の選択、(3)血管茎の折れ曲がりや捻じれの予防。
顕微鏡下で血管吻合を行う一番の意味は確実性である。移植床静脈として最も使用する内側静脈との端側吻合では、吻合部が胸鎖乳突筋に圧排されないように横孔を真上ではなく、少し内側にする。端側吻合では最初の1針目と180度反対側の2針目を先に縫合する。遊離皮弁の静脈が末広がりになるように血管吻合を行う必要があるため、この時点で位置のバランスが決まるので最も重要な縫合になる。その後、漏れやすい端側から縫合し、更に残りの部分を縫合している。基本的に、表側を縫ってから反転させて裏面を縫うターンオーバー法を行っている。血管吻合前に外膜の脂肪組織を必ずしっかりと取ってから、縫合を行っていく。最後の2針、1針の段階では必ず生食を入れて裏に針糸がかかっていないかを確実に確認しつつ行う。動脈の端端吻合も静脈と同様、外膜に付着した脂肪組織をきちんと取ることが重要。再建後の皮弁や血管の位置を考え、捻じれや折れ曲がりが生じないような位置関係にする。動脈でも血管径のバランスをとることが大切になるため、2針目は1針目と180°の位置で縫合を行い、その後漏れやすい両サイドから縫うようにしている。反転させて同じことを繰り返すのだが、このときもしっかりと裏面に糸がかかっていないかを確認しつつ縫合する。機械的な手技なので経験が浅い先生も適切な指導と訓練を積めば可能な手技であり、比較的術者で差が出にくい手技と考えている。顕微鏡下で行う意味は確実性であり、しっかりと細い血管の吻合前、吻合中、吻合後の状態を確認できる点がメリットである。
遊離皮弁再建の血管吻合では移植血管の選択を重要視すべき背景について
移植床での動脈血管選択の際は、内膜の損傷が少なく、拍出が良好であることを確認する。血管茎に過度の緊張がかからないことも大切だが、顕微鏡下での血管吻合の作業のし易さも大切である。顔面動脈や舌動脈は下顎に近く、やや作業がしにくいため、われわれは約9割以上、上甲状腺動脈をレシピエント動脈として選択している。
遊離皮弁再建の血管吻合は、適切な訓練を積めば術者の差が出にくい手技だが、遊離皮弁再建タスクの礎となる手技であり、吻合手技に加えて移植床血管の選定も重要である。成功率を少しでも上げることを意識する場合、移植床の静脈は内頸静脈を第一選択とするが、内頸静脈血栓などにも対応できるように、保険をかけて可及的に外頸静脈との吻合も付加することも大切である。
 血管の折れ曲がりや捻じれを閉創後の状態も視野にいれ、血栓を生じた2例に関しては、1例は動静脈を壊死してしまって皮弁内に血栓ができてしまっていた。救済できた1例は血管茎のねじれが起こっていた。血管吻合時や皮弁縫着時のみならず閉創後の血管茎の位置をシュミレーションし、捻じれをしっかりと予防することが、限りなく成功率を100%に近付けるために重要である、と牧口氏は締め括った。
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