3Dプリントに使用されている歯科用レジンは、生殖性の健康を損なう可能性

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米国イリノイ州、シカゴとエバンストン。生体適合性のある樹脂として販売されている最近の樹脂の開発により、例として医療機器や組織工学的構造物などに3Dプリント可能な樹脂が広く応用されるようになってきました。しかし、シカゴのノースウェスタン大学とエバンストンの研究者たちは、歯科用に使用する2つの3Dプリント可能な樹脂が、最終的に受精する卵子の前駆体である卵子に深刻な毒性を引き起こす可能性のある化合物を溶出していることを発見しました。

3Dプリント材料への暴露による潜在的な毒性を調査した先行研究はありますが、哺乳類においてこれらの材料によって誘発される潜在的な生殖毒性を調査した研究はありません。

「約20年前にBPAを取り巻く問題が明らかになったにも関わらず、新物質がリプロダクティブヘルスに及ぼす潜在的な影響により私たちの日常生活の中で偏在する性質である中で、厳密かつ体系的に研究されているのは稀な事です。」と、研究の共著者であり、ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の産婦人科助教授でもあるフランチェスカ・ダンカン博士は大学のプレスリリースで述べています。

同氏によると、Formlab社のデンタルSG(DSG)やデンタルLT(DLT)などのレジンを使用したクリアアライナー市場は、近年数十億ドル規模のビジネスとなっており、生産性の高さから3Dプリント技術を製造に活用している企業もあるといいます。

研究チームは3Dプリント技術を用いて、女性の生殖管初となる生体外モデルを作成している間に、毒性を発見しました。研究チームは、DLTの毒性はDSGよりも深刻であることも発見しました。またDTLは、長期間装着することで長期的な暴露をもたらす経口リテーナーの製造を目的としており、研究チームは分析のためにDTLに焦点を当てました。

研究者らは、質量分析法を用いてDLT樹脂の浸出物を特徴づけ、プラスチック材料の製造に一般的に使用されている市販の光安定剤であるTinuvin 292(BASF)を主要成分として同定しました。また、この物質による顕著な毒性があると考えています。

「我々の結果は、『生体適合性がある』とされている3Dプリンティングで一般的に使用されている材料からの浸出物を実証しているため、大変重要なものである。」

ダンカン氏によると、Tinuvin 292は多くの異なる種類のプラスチック消費者製品の生産に使用される一般的な添加剤であるため、本研究の知見の意義は3Dプリンティングプロセスを遥かに超えている可能性があるといいます。

「我々の結果は、『生体適合性』とされている3Dプリントで一般的に使用されている材料からの浸出物が、生殖健康に悪影響を及ぼす可能性があることを示しているので、大変重要です。」と彼女は付け加え、「これらの材料から浸出する化合物の同一性と生物学的影響をよりよく理解する必要があります。」と強調しました。

研究グループは、DSGとDLTの両方が生体適合性のある光ポリマーとして販売されているにも関わらず、「彼らの結果は、生体適合性の文脈が重要であることを示している」と強調しました。また、生殖健康の重要性において、国際標準化機構による生体適合性の認証では、材料が生殖組織に直接接触する場合を除き、生殖健康の安全性試験は必要ないと指摘しています。

「この結果は、人間が医療現場や日常生活で接触する可能性のあるすべての物質の特性を明らかにする際に、生殖毒性を優先すべきであることを示しています」とダンカン氏は強調しています。

研究者らは、今回の研究では人工的に構成された条件下でのエビデンスしか得られていないため、生体内での影響を調べるためには更なる研究が必要であると述べています。更に、男性の生殖系への毒性を調べ、性差を特定することも重要です。関心のある別の分野は、医療製品と消費者製品の両方の場合の、人におけるチヌビン292の放出および曝露レベルの特性評価です。

「3Dプリンティング技術で使用される歯科用レジンは、オーボ有毒な浸出物を放出する」と題されたこの研究は、ケモスフィア270巻に掲載されました。

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Dental Tribune International

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