双極性障害患者の口腔内の特徴と注意点

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双極性障害患者の口腔内の特徴

双極性障害になるとう蝕や歯周病、ドライマウス、味覚障害、歯ぎしりなどを併発することがあります。また高額な歯科治療歴が見られることも多いです。

①う蝕・歯周病

うつ状態のときは歯磨きができなかったり、歯科医院への通院が困難になったりする場合があります。また不眠による生活リズムの乱れや過食、偏食、口腔内の乾燥などにより、う蝕や歯周病が進行しやすい傾向にあります。

本人には、歯磨きができないときはうがいだけでもするよう指導しましょう。そして体調の良いときに歯科医院を受診し、検診や歯のクリーニングを受けるよう声かけをします。

②ドライマウス

ストレスや食欲低下により噛む回数が減少すること、不眠による生活リズムの乱れ、精神安定薬や向精神薬の副作用などにより唾液分泌の減少することが多くあります。唾液分泌が減少すると食事や会話がしづらい、う蝕ができやすいなどの症状が現れます。

唾液分泌の減少が見られる患者には、よく噛んで食事をする、水分補給を意識的に行う、お口の体操をする、生活リズムを整えるなどを提案します。それでも改善されない場合は、保湿ジェルや洗口剤の使用も検討しましょう。

③味覚障害

うつ状態の食欲低下により、体内から亜鉛が不足しやすくなります。これにより何を食べても美味しく感じない、食べ物の味が薄く感じる・味がしない、口の中が苦いといった症状の現れることがあります。双極性障害の治療や亜鉛を補充することにより症状は改善します。

④歯ぎしり

躁状態とうつ状態を繰り返すことによるストレスや、精神安定薬・向精神薬の副作用として歯ぎしりの起こることがあります。これにより歯が削れる、歯が折れる、詰め物が外れる、歯周病が進行するなどの問題が起こります。予防法としては、ナイトガードの使用や口腔周囲筋のマッサージなどが効果的です。

⑤高額な歯科治療歴

過去に躁状態で歯科医院を受診したことで、自費の補綴物やインプラント、矯正などの高額な歯科治療歴の見られることがあります。必要な治療であれば問題ありませんが、必要以上に費用をかけた治療は避けます。

双極性障害患者の来院時の注意点

躁状態では怒りっぽくなったり、暴力的になったりする症状も現れます。うつ状態では「自分は苦しいのに他人に分かってもらえない」という悲観的な考え方が出てきます。これらを踏まえて、以下の点に注意しながら対応しましょう。

● 本人が何を考えているのか理解するために寄り添う
● 患者のペースに合わせながら必要なアドバイス等を行う
● 躁状態のときの言動を責めない
● 否定をしない
● 「頑張れ」「元気を出して」などの励ましの言葉は使わない

うつ状態のときには体を動かすこともままならず、患者にとっては大変苦しい時期です。頑張れ」や「元気を出して」という言葉は、動くこともつらいうつ状態の患者を焦らせ、苦しめてしまいます。そのためあたたかく見守るようにしましょう。

また躁状態のときの言動などについても責めず、できるだけそっとしておいてあげてください。躁状態でやってしまった失敗を一番後悔して苦しんでいるのは、うつ状態のときの患者本人なのです。

さいごに

双極性障害患者への接し方で重要なのは、患者を「気にしすぎる人」「性格的なもの」と切り捨ててしまわないことです。躁状態、うつ状態ともに精神疾患の特徴として理解した上で、必要以上に意識せず他の患者と同様に対応するようにしましょう。

また口腔内のトラブルによる歯や歯肉の痛みがストレスとなり、双極性障害の症状を悪化させることもあります。それを防ぐためにも、歯科衛生士による口腔内の健康管理は重要であると言えます。

歯科衛生士ライター 高山 由衣さん

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