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精神疾患である統合失調症は、厚生労働省が癌や脳卒中と共に指定した5大疾患のひとつです。患者数に増減はあるものの大きな変化はなく、歯科医院で統合失調症の患者と接する機会もあるかと思います。ここでは統合失調症の症状や注意点、口腔ケアなどについて解説します。
統合失調症とは脳神経の機能が正常に働かず、気持ちや考えを上手くまとめることが困難となる精神疾患です。以前は「精神分裂症」と呼ばれていて、およそ100人に1人の割合でかかる身近な病気です。脳の神経伝達物質の乱れや遺伝などがリスク要因となり、緊張・不安などをきっかけに発症するとみられています。複数の危険因子が重なることで発症すると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
統合失調症で現れる症状は大きく3つに分けられます。
● 陽性症状:妄想、幻覚、思考障害、異常行動など
● 陰性症状:感情の鈍麻、意欲減退、思考の低下、自閉など
● 認知機能障害:記憶力の低下、判断力の低下、集中力の低下など
それぞれを詳しく解説していきます。
陽性症状は、幻覚や妄想といった「本来あるはずのないものを感じる」という、統合失調症の典型的な症状です。統合失調症を発症した直後に現れることが多いとされています。
幻覚は実際には存在しないものを目や耳で感じる症状のことで、中でも幻聴が多くみられます。妄想は非現実的なことを思い込む症状で、中でも悪口を言われているなどと思い込む被害妄想が多くある症状です。また周囲の説明も受け入れないことがあります。その他思考の低下によって考えがまとまらず会話が支離滅裂になる症状や、興奮して大声を出したり奇妙な身振りをしたりする異常行動などがみられることもあります。
陰性症状では感情の表現が乏しくなったり、何事にも無気力で何かを始める・続けるということが困難になったりします。また思考力の低下から人との会話が続けられない、人との関わりを避けひきこもるなど自閉的になることもあります。そのため日常生活や社会生活に支障が出て、孤立しやすくなることが考えられます。
陰性症状は陽性症状が和らいだ後に現れることもありますが、陰性症状が先に発症し徐々に陽性症状が現れることで人格が変わることもあります。
症状が進行・長期化すると、記憶力・判断力・集中力の低下といった認知機能障害が現れます。認知機能障害とは、例えば物事を覚えるのに時間を要する、優先順位がつけられない、周囲の音や動きが気になって物事に集中できないなどです。多くみられるのは作業記憶(ワーキングメモリ)の低下で、「情報を一時的に記憶してそれに基づいて作業を行う」ということが難しくなります。これにより会話、読み書き、計算などが困難になり、生活・社会活動に支障をきたすことが考えられます。

北海道の歯科衛生士専門学校を卒業後、一般歯科で勤務。現在は歯科衛生士の経験をもとにした記事を執筆するライター活動を行っている。
【校正】浜崎 実穂(歯科衛生士ライター)
プロフィール:
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後は「歯科衛生士ライター」として活動しながら、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。
自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。
大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。2児の母。
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