知っておきたい!知的障害の特徴と重症度に合わせた歯科治療

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一般歯科においても、さまざまな患者が来院する中で障害を持った患者に関わる機会はあるでしょう。知的障害とはどういった状態なのか、歯科治療における注意点などを解説します。

知的障害の特徴

知的障害は知的能力障害や精神遅滞とも表されます。知的発達に障害が起きている状態であり、次の3点から定義されます。

1.発達期に発症する

知的障害は、発達期である幼少期から青年期のおおむね18歳までに発症すると言われています。幼少期の言葉や生活習慣の遅れから発見されることが多くあります。

2.知的機能に制約がある

知能指数(IQ)が70以下であることが、知的障害であるひとつの目安となります。なお従来までは知的指数が重要視されていましたが、近年では次に解説する適応機能と合わせ総合的に判断されています。

3.適応機能に制約を伴う

下記の3つの領域において、適応能力に明らかに制約のあることが知的障害の定義とされています。

  • 概念的領域:言語・記憶・論理的思考・問題解決能力など
  • 社会的領域:対人的コミュニケーション・社会的判断・自己制御など
  • 実質的領域:金銭管理・行動の自己管理など
知的障害の重症度

知的障害の重症度は、知的機能や適応機能を基に総合的に判断され、軽度・中等度・重度・最重度の4つに分類されます。軽度なものでは金銭管理や文章の読み書き、優先順位をつけることなどが苦手な場合もありますが、支援があれば可能なことが多いです。

中等度ではコミュニケーション能力に制限があり、重要な判断が必要な場面では支援が必要となります。重度の場合は言葉や金銭の概念の理解が困難であり、食事や入浴などの場面で支援が必要です。最重度では精神年齢は3歳未満と言われていて、寝たきりの場合も多いです。会話やコミュニケーションは非常に限られた範囲でしか行えず、生活の大部分で支援が必要となります。

知的障害と併発しやすい疾患

知的障害には下記のような疾患を併発しやすいです。

  • 脳性麻痺
  • てんかん
  • 注意欠陥・多動症(ADHD)
  • 自閉症
  • 抑うつ
  • 不安障害
  • 双極性障害

幼少期から療育を行い支援すると、社会生活に必要な知識や技術を習得することができます。これにより生活する上での困難が軽減され、ストレスや自己肯定感の低さから起こる抑うつなどの併発を防げることがあります。

知的障害レベルに合わせた歯科治療

知的障害は次のようにレベルが分かれており、場合によっては発達年齢を考慮する必要があります。

知的障害の程度 発達年齢 歯科治療可能範囲
軽度 7歳6ヶ月~11歳3ヶ月 歯科治療が可能
中等度 5歳3ヶ月~7歳5ヶ月 歯科治療が可能
重度 3歳~5歳2ヶ月 発達年齢3歳10ヶ月以上では歯科治療が行える可能性が高い
最重度 3歳未満 発達年齢2歳6ヶ月以上では口腔内診査が行える可能性が高い

「発達年齢」とは、知的障害レベルに応じて発達の状態がどのくらいの年齢に当たるかを示すものです。発達年齢は歯科治療が行えるかどうかを判断する基準にもなります。

発達年齢が3歳10ヶ月以上であれば歯科治療を行える可能性が高く、発達年齢が2歳6ヶ月以上では簡単な口腔内診査が可能と言われています。発達年齢が歯科治療の可能な年齢に達していても実際には治療が不可能であった場合などは、麻酔下で治療を行うこともあります。

歯科衛生士ライター okahata

北海道の歯科衛生士専門学校を卒業後、一般歯科で勤務。現在は歯科衛生士の経験をもとにした記事を執筆するライター活動を行っている。

【校正】浜崎 実穂(歯科衛生士ライター)

プロフィール:
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後は「歯科衛生士ライター」として活動しながら、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。
自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。
大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。2児の母。

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