【糖尿病患者の歯周治療】糖尿病患者の歯周基本治療において抗血栓薬は中止すべきか?
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今回は糖尿病患者の歯周基本治療において抗血栓薬は中止すべきなのか、前回と同様に【2023年糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン】を元に解説していく。
今回のCQの選択においてガイドラインによると、、昨今 糖尿病患者においてのワーファリンの他に直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用が増加しており、またガイドラインとして抗凝固薬に加えて抗血小板薬も加えたほうがよいという判断から、改訂版ではワーファリンに限局することなく抗血栓薬は中止すべきかというCQ が選択されたと記載されている。
また、依然として糖尿病患者に対しての直接的なエビデンスは少なく、抗血栓薬は中止すべきかというCQにおいては患者の多様な価値観や意向が多いに関係しているため、臨床現場においても大変悩ましく、注意が必要になってくるのではないだろうか。
『2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者 における抗血栓療法』より、抗血栓療法は出血と血栓イベントリスクのバランスを考え、患者ごとの個別対応が重要とされており、パターン化して対応するのではなく、患者ごとのリスク評価に基づいた個別化医療を展開することが求められているとされている。
また、糖尿病患者では血栓リスクが高く、出血リスクの高い人の多くは血栓リスクも高い。リスクスコアによる評価だけでは十分でないため、内科に対診した上で慎重に判断することが望ましいと記載されている。
さらに2020年JCS ガイドラインにおいて、歯周基本治療を含む歯科治療は出血リスクが極めて低い、または止血が容易な手術に分類されており、基本的に抗血小板薬および抗凝固薬の中断は行わないことが推奨されているとしている。
人工弁置換術などで抗凝固療法の継続が必要とされる患者では周術期のヘパリン代替療法は考慮される可能性があるとされているが、ヘパリンによる代替療法は休薬に伴う血栓症や塞栓症のリスクを完全に取り除くことは不可能であり、ごくまれにヘパリン誘導性血小板減少症が認められ、歯周炎患者ではそのリスクが有意に高いことが報告されていることにも注意が必要であると記載があった。
よって今回の最終的な報告は、抗血栓薬を服用する糖尿病患者の歯周基本治療においては、服用の継続を推 奨する.(エビデンスの確実性:低 推奨の強さ:弱い推奨)となった。
糖尿病患者の歯周基本治療においては基本的に抗血小板薬および抗凝固薬の中断は行わないことが推奨される。
とはいえ患者によっては歯科で申告する必要はないと自己判断している場合や歯科治療を強く恐れている場合、抗血栓薬を服用中の歯周治療が不安など、多様な価値観や意向が治療に影響する可能性が十分に考えられる。
ガイドラインにおいて歯周基本治療を含む歯科治療は、出血リスクが極めて低い、または止血が容易な手術に分類されているとしているが、抗血栓薬を中止するリスク、中止しないリスク、患者ごとの個別のリスク対応が非常に重要であり、日々慌ただしい臨床の現場においてもパターン化するのではなく、患者個々の状況をきちんと把握し、慎重に判断しなくてはならない。
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