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前回の記事では【糖尿病を有する歯周病患者に歯周基本治療はHbA1cの改善に有効か?】について2023年糖尿病患者に対する歯周治療ガイドラインをもとに解説してきた。
今回は糖尿病患者に対する歯周治療での抗菌療法について解説していく。抗菌療法に関する臨床研究は今までも数多く報告されてきており、今回のガイドラインでは改めて新たなエビデンスをもとに評価している。
実際の臨床現場において抗菌薬処方は耐性菌の出現や副作用の発生リスクが生じることから、特に全身投与においては患者の全身状態に応じた投与を検討する必要があるため安易に処方はできない。
今回の内容を通じて歯科医療現場での「糖尿病患者の抗菌療法」について再確認してもらえたら幸いだ。
ガイドラインによると、糖尿病患者の歯周治療に抗菌療法を併用することにより治療開始 3 か月後、 6 か月後のプロービングデプス(PD)および 6 か月後のクリニカルアタッチメントレベル(CAL)が減少傾向。さらには 1 年後の排膿の有無については有意に減少したことから、抗菌療法の併用は「一定の有効性が認められる」としている。
しかしながら1年後のPDとCALに対しては有効性を示す傾向になく、1 年後を解析した報告が少ないことから、抗菌療法併用による長期的な有効性についてはエビデンスが蓄積されていないとしている。
上記の内容を含めガイドラインの最終的な報告としては【糖尿病患者の歯周治療に抗菌療法を併用することを弱く推奨する (エビデンスの確実性:低 推奨の強さ:弱い推奨)】と表記された。
今回のガイドラインに記載されているいくつかの論文によると基本的な歯周治療したケースと抗菌療法を併用したケースでは結果としてあまり大きな差はないと報告している内容が多い。
つまり重要なのはSRPやスケーリングなどの基本的な歯周治療を徹底して実践していくことであり、あくまで抗菌療法は補助的な役割でしかないということではないかと考える。さらに長期的な研究結果を示す論文は存在しておらず、正確なエビデンスが得られていないというのが現状だ。
とはいえ、抗菌療法により優位な結果を得られたと記載している論文も存在する。あくまで歯周治療の補助的な役割として使用し、徹底した歯周管理を継続していくことで有効性がみられてくるのではないだろうか。
実際に臨床で抗菌療法を実施する場合には、耐性菌の出現や副作用の発生リスクが伴うことを含め患者の全身状態を管理しながら行わなくてはいけない。有効性や副作用の発生リスクなどをすべて加味していくと、現状は基本的な歯周治療や患者自身のセルフメンテナンスに力を入れていくことで、より高い有効性が獲得できるのではないかと考える。
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