【糖尿病患者の歯周治療】糖尿病患者の外科処置では徹底した抗菌薬投与を行うべきか?
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今回は糖尿病患者の外科処置に対して徹底した抗菌薬投与を行うべきかなのか、前回と同様に【2023年糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン】を元に解説していく。
血糖コントロールが良好な患者においては、外科治療後の手術部位感染のリスクは健常者と同程度であるとされており、徹底した抗菌薬投与を選択する必要はないとしている。
一方で糖尿病患者においては、易感染性および創傷治癒の遅延が起こることが知られているため、観血的外科処置を行った場合、手術部位の感染リスクは非糖尿病患者に比べて高いと考えられている。
とはいえ、臨床上において観血的外科処置が必要になってくるケースもあるため、今回のCQについてはかなり臨床で役立つ内容となっている。
結果として「糖尿病患者の外科処置に対して徹底した抗菌薬投与を行うべきかなのか?」に対して的確に回答を得られる論文は存在しなかった。
そして前後比較試験によると糖尿病患者でも糖尿病がコントロールされ、術後抗菌薬の投与を受けていれば、顔面領域へ波及した深部感染を起こすリスクはないと考えられていると記載された。
さらに消化器外科領域においては糖尿病患者に手術を行う場合、手術時間が長くなる場合において抗菌薬の術中再投与は手術部位感染の予防のために有効であるとしている。
患者の価値観や意思について、術後感染は術者も患者側も回避したいことであるため、抗菌薬を治療の前後に手術部位感染予防として服用することをほとんどの患者が望むと考えられる。
とはいえ薬をできるだけ内服したくない、または抗菌薬にアレルギーがあるといった人は一定数存在するため、その人たちの意向も十分に考慮する必要がある。
しかし今回の論文では、広く一般的に使われている抗菌薬の場合、抵抗は少ないと考えられたと記載された。
よって今回のCQに対する最終報告は「血糖コントロール良好な糖尿病患者においては、外科治療後の手術部位感染 のリスクは健常者と同程度であるため、徹底した抗菌薬投与を選択する必要はない。しかし、血糖コントロール不良な糖尿病患者の外科治療には術前術後の抗菌薬の予防投与を推奨する (エビデンスの確実性:低 推奨の強さ:弱い推奨)」となった。
今回のCQに対しては無作為比較試験は存在せず、数少ない観察研究が存在するのみのため、アウトカム全般に関するエビデンスの確実性は「低」と評価された。
今回のCQについてガイドラインによると、術後の感染リスクについて血糖コントロール良好な糖尿病患者は非糖尿病患者と同等程度とされている。
しかしコントロール良好とはいえ、糖尿病患者においては易感染性および創傷治癒の遅延が起こることは臨床上明らかであり、より徹底した抗菌薬投与を選択することで患者側はもちろん術者側も安心した治療を受けることができるのではないだろうか。
もちろん抗菌薬アレルギーや服薬を拒否する患者も一定数は存在するため、患者個々に対しての慎重な判断は必要だが、臨床においてより確実な選択をするのであれば徹底した抗菌薬投与を選択するべきではと考える。
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