成長期の前歯部開咬にタングクリブは推奨されるか〜矯正歯科治療の診療ガイドライン (前歯部)開咬編 (案)より〜
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タングクリブは口腔習癖のある小児患者においては欠かせない装置ではないだろうか。
さらにマスクを外す機会が多くなってきたいま、臨床の場では多くのニーズがあるのではないかと考える。
可撤式のタングクリブは装着時間や装着状況により一定ではなく、さらにデザインによっても大きく左右される。
今回は、矯正歯科治療の診療ガイドライン (前歯部)開咬編 (案)より【成長期の前歯部開咬にタングクリブは推奨されるか】について考察していく。
ガイドラインによると“矯正装置においては、クリブやスパーは直接、矯正力を発生させない。そのため、 これらの装置による治療効果は、口腔習癖やそれによって生じた不正咬合の程度、装置のデザインによって大きく影響されると考えられる。”としている。
さらに“正味の利益と負担のバランス、患者の価値観や好みなどを総合的に考慮して成長期の前歯部開咬の治療に口腔習癖の除去を目的とした 矯正装置は推奨されるかどうかを、ガイドラインとして明らかにすることとした。”と記載している。
つまり、タングクリブは直接的に前歯部開咬に矯正力を発揮するものではなく、口腔習癖の除去を目的としているが、矯正装置として十分なエビデンスがあり、前歯部開咬改善の矯正装置として推奨されるかということである。
ガイドラインでは2つの研究を明記している。一つはオーバーバイトの増加がみられた研究だったが、一方はチンキャップを併用した群を比較していたため、エビデンスとしては「中」と評価している。
上下前歯については傾斜やオーバージェットの量に変化が見られたが、臼歯の変化についてはすべての研究で見られなかった。
2つの研究結果を明記しているが、どちらも下顎骨の前上方への回転等の垂直的な効果は認められなかったとしている。
ガイドラインによると“タングクリブによる外科的矯正治療の回避(重要)について検討した論文はなかった。タングクリブによる治療効果の長期予後を評価する必要があることから、 本アウトカムに GRADE システムを適用するのがふさわしくないかもしれない”とされている。
ガイドラインによると“矯正歯科治療の最終的な治療目標には患者の価値観や好みが強く影響する。咀嚼や発音など の機能障害に加えて整容の障害を伴うことの多い前歯部開咬の治療において、QOL の改善は重要な評価項目であると考えられる”としているものの、QOLの評価が明記されている論文はなかった。
すべてのアウトカム、患者の利益や負担のバランス、価値観や好みコストなどを評価して、推奨されるグレーディングは“患者にとっての重大なアウトカムのエビデンスの質は「中(B)」であり、推奨の強さは「弱い推奨(GRADE 2B)」とされた。
そして理由としては”オーバーバイトの改善が認められる。しかし、効果が確認された治療開始時期が特定の時期に集中しており、今後幅広い年齢における治療効果の検証が期待される。また、 オーバーバイトの改善がもたらす正味の利益についても検討の余地がある。そのため、弱い 推奨とする。”と記載された。
前歯部開咬において、タングクリブは許容範囲の少ないストレスで使用可能とされているものの、長期間での安定性については明らかになっていない。
さらに改善は認められているものの、幅広い年齢でのエビデンスや、高いエビデンスを明記した論文も存在せず、今後 矯正装置としてタングクリブを推奨や前歯部開咬を改善させていくためにも新たな検証が発表されることを期待する。
とはいえ、患者の使いやすさやストレスの少なさ、これまでの矯正治療での活躍を考えると、今後も矯正歯科では多くの患者に使われていくであろう。
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