黒山祐士郎大会長(黒山歯科口腔外科医院)
今回、私が僭越ながらこのインプラント周囲炎という難題をテーマに挙げたのは、日本先進インプラント医療学会の会員の多くの先生方から、インプラント周囲炎の対処法を知りたいという声があまりに多くあったからである。
インプラント治療を手掛けるうえで、多くの先生方がインプラント周囲炎を経験されていると推測する。
その炎症は、骨組織に影響が見られないインプラント周囲粘膜炎と骨吸収が認められるインプラント周囲炎に大別される。
初期固定も良好で、数年間良好な経過であった症例に、インプラント周囲炎が認められた場合、これは一体なぜ起こり、どう対処すべきなのか、チタンとり表面の粗いHAコーティングは不利な条件ではないだろうか。
そのような疑問、不安を抱いていることがあると思う。
一般的にインプラント周囲炎の原因として、細菌感染と過度な咬合負荷の2因子が考えられている。
結論的に言えば、その予防は、プラークコントロールと咬合調整と言うことになるが、可及的にそう注意していたはずなのに、それでもインプラント周囲炎に陥ってしまうのはなぜかのか。
HAコーティング層が骨内に全て入りこんでいたのか、上部構造装置にPeri-impiant sulcus内の余剰セメントは除去されていたのか、免疫は関係していないのかなど様々な要因が考えられる。
私、一人の思考と見解では全く行き詰まり、本学会の前支部長や数名の本学会指導医・専門医の先生方に、調査企画の第1回目として、「インプラント周囲炎に対する対処法について」アンケートをさせていただき、たくさんの先生方のご協力のもと、多くの見解を知り得た。
全先生方は、インプラント周囲炎は歯周病と同様に感染症と認識し、それに対し、薬液洗浄・抗菌剤投与から外科処置間で様々な処置法で対処されていた。
フォロー後、予後良好なものから、撤去・再植立に至ったケースなど、正直なご返答をいただいた。
私自身の考えは、現時点では重度のインプラント周囲炎に陥った場合、どのような処置を施しても経過不良のことが多いと感じている。
そこで、本発表(講演)では、再結晶化HAコーティングのキャラクターゼーションに的を絞り、それに対するインプラント周囲炎の予防、診断と処置につて述べた。
インプラント周囲炎という課題を解決するのは、歯周病を撲滅するに等しい計り知れない高度な課題であると感じている。
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