残根を抜歯する際の外科手技:ここをはずすな

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残根を抜歯する際の外科手技
山内 健介 先生

東北大学大学院 歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野 准教授
東北大学病院 歯科インプラントセンター 副センター長

抜歯前のレントゲン写真から読み解くこと。
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この症例のポイント

・近心根は縁下までカリエスがあり、ヘーベルが挿入しにくい。
・近心根にヘーベルがかかったとしても、遠心根と遠心の歯冠があるため、動揺、脱臼しにくい。
・従って、分割後は遠心根から抜去して、遠心根のスペースを利用して、近心根を最後に抜く。

抜歯を行う前のインスペクションとしてレントゲンの読影は非常に重要である。得られる情報を基に抜歯計画を立てることを習慣とすることが必要で、そのイメージした術前の予想と手術結果を摺り合わせていくことが上達への近道である。レントゲン画像から読み解ける項目としては以下のことが挙げられる。
①歯根の数
残根抜歯では歯冠が崩壊または消失している状態であり、特に大臼歯や小臼歯の場合は、歯根の数を事前にしっかりと確認しておく必要がある。歯根破折も併発している場合は、破折片が変位していることもあり、それを見落として抜歯をすると歯根の遺残を生じることもある。
②歯根の弯曲
根尖部の弯曲度合いと方向を事前に確認する。弯曲している方向によって、ヘーベルをかける部位を選択することができることと、下顎大臼歯の場合などでは、分割操作への移行判断に有用である。複数根で根の弯曲が強いような症例では、ヘーベルによる一塊とした抜歯は困難で、分割抜歯でしか抜けない場合も多いので、分割抜歯を早期に選択する方が円滑に進むこととなる。
③歯根膜腔の存在と明瞭度合い
歯根膜腔が明瞭に見えるか否かで、ヘーベルに対する反応を予想することができる。高齢者の患者であれば、歯根膜腔は狭小化して、歯根と骨の区別もつかないような場合もある。このような場合は、例え下顎前歯であっても難抜歯になることがあるので、術前の注意が必要である。
いざ抜歯。安全に確実に抜歯するためのワンポイントアドバイス
術前診査によって思い描いた抜歯のイメージを元に抜歯準備に取りかかる。 想定できる器具は予め用意しておき、滅菌パックからは出さなくても、直ぐに取り出せる位置に置いておくことが重要である。抜歯の最中に、器具を取りに行くことは抜歯時間を遷延化させたり、スタッフとの連携にも支障がでるだけではなく、患者不安も増幅することとなる。
器具の準備として下記のAを準備しつつ、B,Cの状況に対応できるようにする。

A 単なるヘーベルと残根鉗子で抜歯が出来た場合。
準備物:単純抜歯器具一式、基本セット


B 周囲歯肉を剥離して、骨と歯根の境界域を明示して抜歯することになった場合。
追加準備物:切開、縫合関連器具(メス、剥離子、持針器、ピンセット、縫合糸、ハサミ)


C 分割抜歯を行う必要が生じた場合。
追加準備物:分割用エンジン(5倍速コントラまたはストレートエンジン)、ゼクリアバー(ロングタイプ)、フィッシャーバー、ラウンドバー、ルートチップ


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