輸血によるHIV感染問題を考える 抜歯などの出血

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高い安全性も「100%」あり得ぬ 産経新聞 2013年12月22日(日)19時 病気や事故の手術の際、患者に輸血する血液を提供する「献血」。11月、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した献血者の血液が、日本赤十字社の安全検査をすり抜けて輸血され、その後患者に感染したことが分かった。 B型肝炎など他のウイルスも検査対象となっているが、今回のような感染は起こりうるのか。献血に対する検査の現状と安全対策を検証した。(道丸摩耶) ◆検査対象は6種 東京都江東区の日赤関東甲信越ブロック血液センター。 関東甲信越地方の1都9県で献血された血液の検査と、血液製剤の製造を行う全国最大の施設だ。 献血者の36%に当たる年間約190万人分の血液を取り扱っている。 検査は大きく分けて2段階。 最初の検査では、血液を媒介して感染するHIV▽B型肝炎▽C型肝炎▽成人T細胞白血病の原因であるHTLV-1▽妊婦が感染すると死産の恐れがあるヒトパルボウイルス(リンゴ病)▽梅毒-の6種の感染の有無を調べる。 ここで感染の可能性があるとされた血液は除かれ、残りの血液は第2段階の検査に回される。感染初期は血中のウイルス量が少なく、通常検査では検出できないことがあり、B型肝炎、C型肝炎、HIVの3種のウイルスについては、ウイルス特有の遺伝子の一部を人為的に増やし、検出しやすくする検査を行う。NAT(核酸増幅検査)と呼ばれるこの検査では、現在は20人分の血液をまとめて実施しているが、来年からは1人ずつにしてさらに検出感度を上げる。 ただ、NATは3種だけでも、1600人分の検査に4時間40分かかる。そのため「性行為で感染する恐れのあるウイルスを選んでいる」(鈴木雅治・同センター検査副部長)という。 ◆無制限にやれず ここまで安全に気を配っていても感染を完全に防ぐことはできない。 厚生労働省によると、平成23年には検査をすり抜けた血液製剤の輸血によりB型肝炎に感染した例が13件起きた。 検査項目にないウイルスなどが見つかることもある。 今年8月には、献血者の中に、重い心臓病などを引き起こす「シャーガス病」に感染した人がいたことが判明。 この献血者の血液を輸血された人への感染はなかったが、こうした事態が起こりうる恐れは常にある。 ならばなぜ、6種に絞って検査するのか。厚労省血液対策課は「血液で感染する病気は多いが、技術的にも時間的にもコスト面からも、検査を無制限にはやれない」とする。 6種は血液感染の割合が高いうえ、日本人の有病率が高かったり感染すると重い症状を引き起こしたりする感染症だ。 ただ、状況が変われば検査項目が変わる可能性もある。「海外で新たに流行している感染症など、さまざまな情報を集めながら定期的に厚労省の専門家会議で検討している」(同課)という。 さらに、検査項目外の感染症を予防するため、さまざまな病原体を死滅させる不活化技術の導入も検討されている。病原体混入のリスクは減るものの、血液に薬剤を入れることにより、品質変化が起きる可能性もあり、慎重に検討している。 東京慈恵会医大付属病院輸血部の田崎哲典診療部長は「日本の血液製剤は非常に安全性が高い。 とはいえ輸血は感染症以外にもさまざまなリスクがあり、100%の安全はあり得ない。患者への正確な情報提供も大切だ」と話している。 ■リスク排除 問診が重要に 現在、必ず検査が行われている感染症は6種だが、それ以外の感染症のリスクを排除するためにも、問診が非常に重要となる。 献血を希望する人は、半年以内に不特定の異性や男性同士の性的接触があったかなどの質問に回答する。 3日以内に抜歯など出血を伴う歯科治療を受けた場合や、1カ月以内にピアスの穴を開けた場合などは、ウイルス感染の可能性があるため献血できない。 これ以外にも、例えば今年初めて献血者から確認されたシャーガス病は中南米で流行しており、日赤は中南米出身者や長期滞在者は申告するよう呼びかけている。また、クロイツフェルト・ヤコブ病予防のため、欧州の流行地域に滞在していた人は、献血を断られる場合もある。 HIVについては特に厳重で、半年間の性的接触について複数回の問診が行われる。献血時に感染の不安を言い出せなかった人のために、後から匿名でかけられる無料電話も設けている。
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