感染性心内膜炎とはどのような病気か?

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国立循環器病研究センター心臓血管内科 泉 知里 氏
口腔外科医・歯科医とどのように連携していくかということがテーマになると思うが、循環器内科医の立場からどのような病気でどのように困っているか。感染性心内膜炎を発症後、注意すべき経過と対処法をお示ししたいと感染性心内膜炎診療の第一人者である泉氏は語り始めた。
感染性心内膜炎における疣腫について
まず『感染性心内膜炎(IE)』は新ガイドライン(GL)では、以下のように定義づけられている。IEは,弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)を形成し,多くの合併症を併発し、適切に処置しないと死に至る疾患である。この疣腫がIEの典型的な所見であり、診療の過程でその状態を確認していくことになる。
典型的な疣腫は、弁膜を中心とした心内膜に、可動性を伴う塊状エコーとして描出される。基礎疾患として弁膜症・先天性心疾患が多く、異常な高速な血流ジェットが心臓内膜に当たると心臓内膜がただれるようなかたちで、びらんが起こってくる。その部分に血小板がついてこの時点では感染ではないが、歯科治療などの過程で菌が血液の中に入ってきた場合、そのただれた部分に感染を起こし、炎症細胞が増えて塊状の疣腫を形成してくる。IEでは、この疣腫によってさらに組織が破壊される。
内科医でも診断が難しく一度発症すると治療が難しいIE
IEは多様性を含んだ疾患となるため、内科医でも診断が難しい。発症自体に典型的な症状があるわけではなく、微熱が続く・体がだるい・関節が痛いなど、非特異的な症状を訴えるため、症状発症直後に循環器内科に来院する患者さんは少ない。
診断の方法としては、臨床症状からIEを疑う段階から始まる。実際に循環器内科医の元に来院する頃には、1ヵ月くらい微熱が続いていた患者さんが比較的多くいる。さらに、この患者さんに心臓弁膜症の既往があったり、あるいは雑音がきこえるなどの所見がある場合、熱を伴う脳梗塞を起こしている場合などは積極的にIEの可能性を疑うべきである。これらのことを一般内科医や開業医に啓蒙活動をしているのが現状である。
合併症の一つとして疣腫が一部ちぎれて拡散していくことによって起こる塞栓症があり、その塞栓症を主症状として、神経内科や脳外科に来院する患者さんがいるため、診断自体も難しく一度発症すると、いろいろな合併症が発生する。菌が塊状になっているため、非常に長い経過で治療していかなければならないが、その長い経過の中で病状が刻々と変わっていくため、一度発症すると治療が難しい症例となる。
『Dukeの診断基準』と検査からIEによって起こる合併症、病態を見極める
IEの診断に使われる『Dukeの診断基準』では大項目が2つあり、血液培養と心エコー所見がその診断の中心となる。疣腫、それ以外の心臓における感染を示唆するような所見を証拠として使う。
この診断基準で心エコー検査と血液培養で診断できれば良いが、診断できない場合はエコーを複数回実施し、さらにCT、RIの検査などを合わせて診断する。診断後にもIEは非常に多くの合併症を引き起こす。これが患者さんの予後を考えるうえで非常に重要で、場合によっては緊急/準緊急で手術が必要になってくるため、そのタイミングの判断が重要である。
IEは、体内に菌がいる状態が持続する全身性の敗血症性疾患であり、原因菌によっては敗血症性ショックを起こす。局所的な心臓の内部では、菌の増殖によって弁周囲の膿瘍であったり、心筋の中の膿瘍を作ったりする。また、それにより心不全を起こすことになる。疣腫自体が全身に飛んでいくため、脳梗塞などの全身の塞栓症であったり、頭の血管まで拡散していたりすると動脈瘤を形成するため、動脈瘤が破裂して脳内出血やクモ膜下出血を引き起こす。さらに菌塊のような疣腫が通常の抗生物質の投与量で改善することは困難であり、IEに罹患すると4~6週間にかけて多量の抗菌薬での治療が必要になる。このため、抗菌薬による副作用、DIC、腎不全などが起こってくるので、これらを一つひとつケアしながら治療していく必要がある(下図)。

▲施設/地域のチーム医療における総合力が問われる病気
IEは、多様性に富んだ合併症、刻々と変化する病状に対処しなければならないという点、また予防やIEに関する教育が重要であるという点から、各施設・各地域医療における総合力が問われる疾患であると泉氏は締め括った。
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