小児歯科・口腔外科それぞれの立場から、子どもの歯科治療・口腔外科処置をどうするか?

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明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野 星野倫範 氏
小児歯科・口腔外科それぞれの立場によって子どもの歯科治療への対処の違いがあり、それぞれの特性を相互的に理解しながら安全な診療を進めていく必要があると星野氏は語り始めた。
9割の2歳児には虫歯がみられない現実と早期の小児歯科医院への重要性について
2017年7月に福岡で2歳の女児が歯科治療で亡くなったという報道があった。
 この事件は歯科医院の責任として麻酔が悪かったのか、ラバーダム、レストレイナーなどの影響も含めて、実際この事件はアナフィラキシーが原因ではないかと言われているが、実際はよくわからないところもある。
 まず、この事件を考えるにあたって虫歯の罹患率を確認しておきたい。平成23年度歯周疾患実態調査を参考にした場合、2歳児の92.5%に虫歯はない。つまり、この子に大きな虫歯ができたことにも問題があるのではないかと言える。
虫歯ができた要因としては、親・歯科医いずれの見方にもなるが、(1)泣いていて嫌がるので歯磨きができなかった。(2)離乳食をなかなか食べないので甘いものなら食べると思った。(3)なかなか寝付かないので寝る前に哺乳瓶を利用している。(4)コップのみが下手なので哺乳瓶に飲み物(清涼飲料水など)を入れている。(5)食が細いので、ついついミルクなどを与えてしまう。などが考えられる。

 このような要因があっても早期に小児歯科医のところへ来てくれたら対策はできたのではないかと思われる。
 この事件に関しては小児歯科学会の方針が学会ホームページに掲載されている。小児歯科医としては、ラバーダムは必須で、麻酔で治療しなければならないことをお伝えしておく。
小児歯科で意識すべきう蝕の治療時における対処法とは
虫歯の治療において小児歯科で困る点として、低年齢・全身疾患などの要因から治療が取り組みにくいことがあげられる。救急の対応が出てきた場合でも負担が大きく、特殊な症例、歯の形態異常や社会経済的な背景など、対応の難しい面がある。行動調整や障害児なども特有のアプローチの仕方があって治療が行いにくく、治療内容の緊急度も含めて調整をしながら診療していくことも難しい。
まず子どものう蝕の治療で不可欠なことは、除痛である。子どもは何でも痛いと言うため、痛がりのように思えるが、実は鈍感で、慢性化しているう蝕では本人が痛みを訴えない場合もある。
 子どもの治療では、まず除痛することが治療への動機につながるが、治療の出来高をモチベーションに繋げていくことも大切(下図)。痛みがあったときは、痛みがなくなったね!と声がけをしたり、女児の場合で痛みがあまりないときは、きれいになったね!と声がけをしたりすると有効な場合がある。感覚的、視覚的な治療の出来高を次への励みにしていたりする。
▲治療の出来高をモチベーションにつなげる
子どもの治療では基本となるラバーダムの使用が基本である。歯科治療の麻酔がすべての医療での最初の登龍門になってしまっているけれども、無痛治療を基本として取り組んでいく必要がある。
 子どものう蝕治療の中で最も困難なもの(下図)は、急性期の歯髄炎に対する対応となる。麻酔をしても痛みが残る場合があるので、治療自体が嫌という感情が生じやすい。ひどい状態の場合は抑制下での麻酔も想定する必要が出てくる。乳児の失活抜髄は腐骨形成や後続永久歯に致命的なダメージを与える場合があるため、禁忌である。
▲こどもの齲蝕治療で最も困難なもの
小児歯科における診療での対応で理解しておくべき特性について
行動療法の諸技法には大きく分けると不安軽減法と行動形成法に分けることができ、レスポンデント条件付け、オペラント条件付けの二つに分けることができる行動調整法である(表)





特に自閉症の患者さんの行動変容では、保護者との連携が不可欠。子ども・保護者との連携が取れてくると歯科治療が円滑になる。
 小児歯科で子どもの調整ができない段階では、レストレーナーによる抑制などが必要になってくる。大人が2~3人で上から乗ってくるかたちで抑制されると心理的圧迫感も大きい。
 このようなことを行う場合、必ずバイタルのチェックをしながら治療していき、緊急時に備えて酸素吸入の準備をしておく。
治療における子ども自身の安全の担保が不可欠
行動調整が難しくなると全身麻酔の使用が必要となる。この他、笑気吸入鎮静法や静脈麻酔もあるが、体重などの関係で薬剤使用量を考えると、適用が狭いことになる。
 口腔外科の措置では行動変容のプロセスを経ることができず、レストレーナーによる抑制、静脈麻酔・全身麻酔などで行動調整をしなければならないことがある。
これは安全を前提にした考え方であり、全身管理下での歯科処置としては、
  • 1.体動が大きい
  • 2.循環器系の問題がある
  • 3.処置の侵襲が大きい
などの背景から安全かつ効果的に子どもの歯科治療を行うためには全身管理下での歯科治療が必要な場合も出てくる。
子どもの治療として極力、安全に無理をしないことが重要。子どもの安全は歯科医自身の安全にもなる。
診断・処置は複数あるが、さまざまな専門医による複数の目で多角的に評価することが最終的には安全を担保する欠かせない要素ではないかと星野氏は締め括った。
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