第47回:金パラ

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かねてより金パラを健康保険適用材料として使い続けることに疑問を感じている。最近の貴金属価格の異常な動きを見ていると、さらにその思いが強くなり、金パラをめぐって少し調べ考えてみることにした。2000年末から翌年1月にかけてのパラジウム価格の高騰により金パラ価格も異常に高騰し、大きな逆ざや現象を引き起こし、歯科界は大騒ぎになったのであるが、その後価格は下がったとはいえ、依然として価格の不安定さは続いている。最近の告示価格の推移を見ると、2006年4月の430円から614、702、802円と3回にわたり値上げされ、2009年4月以降は638円に下げた状態となっている。しかし、その後パラジウム価格は上がっていることから、次回4月では再び値上げとなろう。 金パラの異常価格騒動を受け、市場取引に伴うパラジウムなど貴金属素材の国際価格変動に対応するため、2000年4月から新しい価格設定方式が導入された。すなわち、6ヵ月ごとに歯科用貴金属素材の取引価格の変動を勘案し、前回の告示価格の±10%を超えた場合には上下に補正して告示価格を見直す、というものであった。これでもまだ問題が多いことから、2010年4月からは ±10%ではなく、±5%を超えた場合に改定することがこの12月決まったばかりである。こうした改定に伴い、逆ざや問題は多少緩和されるであろうが、保険適用材料としては、価格の変動が少なく、安定しているものが望ましい。歯科保険では金属等の材料代も保険点数に含まれるという特殊性にも問題があると思われるが、歯科医が貴金属の市場動向を気にすることなく、診療に取り組めるようなシステムにすべきである。 金パラについては、価格の問題だけではなく、我が国ではパラジウムを使い過ぎているのではないかということがある。ある資料によると、2000〜2007年の間、世界で歯科材料として使われたパラジウムのうち、その約40〜60%が日本であったという。海外各国での歯科パラジウムの使用状況はまったくわからないが、我が国ほど多く使用している国は(少なくとも先進国では)多分ないであろう。このパラジウムの多用が金属アレルギーや身体へのいろいろな有害症状を引き起こしているのではないかという懸念がある。この懸念は、本ウェブサイトの「知恵の輪」コーナーの中にある“パラジウムの為害作用”というQ&Aからもその一端をうかがい知ることができる。我が国では金属アレルギーの報告や患者の話はしばしば耳にし、パラジウムがその主犯と考えられているが、海外の論文・報告には金属アレルギーの話題は乏しく、あるとしてもパラジウムではなく、アマルガムの水銀である。 金パラは、経済的および為害性の面から、できるだけ保険で使わないようにする試み,努力が必要だと思っている。一例をブリッジについて考えてみよう。金属アレルギーあるいは審美性の観点から、金属を用いないメタルフリー修復が普及しつつあり、ブリッジではジルコニアを用いる修復法がかなり普及しつつあるが、保険でというわけにはいかない。そこで考えられるのが、ガラスや超高分子量ポリエチレンのファイバーを併用したコンポジットレジンの利用である。この繊維強化コンポジット(Fiber-reinforced composite、以下FRC)を用いたファイバーブリッジシステムが登場し、臨床での検討も進んでいる。このファイバーブリッジは、審美性、アレルギーの面だけでなく、金属製にくらべより好ましい弾性率や歯質とのすぐれた接着性を有し、必要に応じて修正・補修が容易にできる、低コストなどという利点があるとされている。 FRCを利用したブリッジの臨床試験に関する文献的レビューと前歯部3ユニットFRCブリッジの5年の臨床成績が今年のEuropean Journal of Oral Science117巻とDental Materials25巻にそれぞれ発表されている。それを少し紹介しよう。文献レビューでは、多くの論文の中から最終的に13の研究を取り上げ、全部で435例について分析している。13研究のうち7研究でガラスファイバーVectrisとレジンTargisを利用し、おもに臼歯部に適用している。ポリエチレンファイバー(Ribbond)使用は2研究と少ない。ブリッジの保持は約半分がインレー、残りの約半分ずつが全部冠と表面(接着のみ)であった。観察期間10ヵ月〜5.7年、生存率50〜100%で、多くの研究では2〜5年での生存率は72%以上であり、4年半での生存率は73.4%と計算されている。435例中88例が5年以内に失敗したが、その原因はレジンベニアの破折・剥離が30例と最も多く、次いでフレームの破折9例、ブリッジの脱離8例などとなっている。 もう一つのガラスファイバーを利用した論文では、52名の患者について60例を5年以上追跡調査した。14例は5年以上の追跡はできず、結果的に46例について分析した。接着のみ29例と溝を付けての接着19例を合わせたものを表面保持、インレー、クラウンの保持を片側に付けたもの12例をハイブリッド保持として比較した。まずはじめの結果は、生存16例、失敗11例、補修19例である。この19例は補修の結果、成功11例、失敗8例となり、5〜9年追跡して最終的には生存27例、失敗19例となった。5年の生存率および成功率を計算すると、それぞれ64%と45%であった。表面保持では保持形態を付けても生存率は向上しなかった。ハイブリッドより表面保持のほうが生存率がよくなる傾向があった。おもな失敗原因は、ブリッジの破折、ベニアの剥離、脱離であり、これは表面保持に多かった。 こうした論文を見ると、FRCブリッジの臨床成績は今のところよいとはいえない(第30回コラム:接着ブリッジ参照)。FRCブリッジではベニアの剥離、破折がおもな問題であり、これは材料技術面から改良すべき課題であるように思われ、材料研究者、メーカーの奮起を期待したいところである。ファイバーの歯科利用については、支台築造においてメタルの代わりにファイバーポストを応用したレジン築造の臨床応用が進んでいることでもあり、FRCブリッジも十分可能性があると思う。FRCブリッジはまだ完成された技術とはいえず、臨床での検討が始まったばかりである。我が国でFRCに利用可能なファイバーとしては、ガラス繊維のEGファイバー(クラレ)とポリエチレン繊維のリボンド(Ribbond)、コンストラクト(Kerr)があり、当面はこれらを何とか使いこなして、可能なところから脱金パラをめざしてほしい。 (2009年12月27日)
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