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障がいのある患者の非協力的な行動を、適切な行動へと導くのが「行動調整」です。安全で確実な歯科治療を行うために患者の心身の状態を調整することは必要で、「行動調節」「行動管理」とも呼ばれます。行動調整を行うと、歯科治療に対する恐怖心やストレスの軽減も期待できます。
● TSD法(Tell Show Do法)
● オペラント条件付け
● 系統的脱感作法
● 10カウント法
● 生理的・神経学的コントロール
● 物理的コントロール
行動療法の理論や技法を用い、特別な器具や技術を必要としない方法です。トレーニングとしてだけではなく、どの場面でも応用できる最も基本的な方法です。
これから行うことを説明(Tell)し、使用する器具の絵や実物を見せ(Show)、実際に治療を行う(Do)方法です。行動変容法の中でも非常に有効的な方法で、TSD法を基本にトレーニングや診療を進めていきます。
報酬と罰をタイミングよく与えることで適切な行動に導く方法です。歯科場面では報酬として、「できたね」「上手だね」「頑張ったね」などの“賞賛”がよく用いられます。
弱い刺激のものから克服していき、徐々に強い刺激にステップアップしていく方法です。歯科場面での弱い刺激としては、例えば歯ブラシによる歯磨きが挙げられます。まずはユニットに座って歯磨きをするところから始めます。次にユニットを水平位にしての歯磨きを行い、問題なければミラー、探針、バキュームを用いるというようにステップアップしていきます。目標までトレーニングを繰り返し行います。
医療者側が10を数えながら行うことで、先の見通しを立たせる方法です。TSD 法で10数えながら行う(Do)間、指示に従って行えればすぐに賞賛する(オペラント条件付け)など、他の方法を併用することが多いです。
患者の動きを安定させる方法です。患者の同意の下に行い、必要以上のコントロールは避ける配慮が必要です。
マットやバスタオル、クッションなどを利用して安定した姿勢を保持し緊張を緩和する方法です。
レストレーナーなどの抑制器具を用いる方法です。抑制器具の使用は注意と配慮が必要で、まずは保護者や家族への十分な理解と同意を得ることが必要です。抑制器具を使用する場合は診療室への誘導時から明るく声かけをし、患者を励まし勇気づけるように努めましょう。また抑制時間を可能な限り短縮するために、事前に術者と介助スタッフで打ち合わせをするなど十分な準備が重要です。
精神鎮静法とは薬物を用いて行う方法です。意識下で治療を行うため、患者の協力性が低い場合や身体機能が低下している場合などは使用の難しいことがあります。
● 前投薬
● 笑気吸入鎮静法
● 静脈内鎮静法
● 全身麻酔
精神安定剤などの薬剤を、経口や座薬により治療前に投与する方法です。
低濃度笑気を鼻マスクで吸入させる方法です。意思疎通が図れ、障がい者だけでなく不安感の強い方にも行うことがあります。
腕や足などの静脈内に麻酔薬を入れ、意識が朦朧とした状態で治療をする方法です。モニターをつけ全身の状態を管理しながら行う麻酔法で、麻酔科医が行います。自発呼吸はありますが、薬の量や体質によって麻酔の深さが変わります。治療が困難な場合や治療箇所が比較的多い場合などに行い、通常は日帰りで行います。
手術を行うときなどに使用する麻酔法です。無意識下で自発呼吸はありません。そのため患者の状態に左右されることなく、安全で質を維持した治療を行うことができます。複数本の親知らずを一度に抜歯する場合や、多数のう蝕治療が必要な場合などに用いられます。この場合は入院になるケースが多いです。
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