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一般歯科ではう蝕治療・歯周病治療・予防処置などを行いますが、口腔外科や口腔外科と標榜している歯科医院では、これらに加えて先天性の疾患・外傷・顎の異常など口腔内全般の外科処置も行います。そのためより専門的な知識・技術が求められることも多いです。そこで今回は前半と後半に分けて、口腔外科の専門用語・略語について解説します。
口腔外科とは、歯や口腔内のさまざまな疾患に対応する診療科目です。診療領域には、以下の部位が含まれています。
● 口唇
● 頬粘膜
● 歯
● 歯槽骨
● 軟口蓋
● 口底
● 顎関節を含む顎骨
● 耳下腺を除く唾液腺
● 舌前の3分の2
ただ症例によっては開業歯科医院や歯科診療所での対応が難しく、大学病院など大きな病院に紹介することも多いです。
口腔外科では以下のような疾患に対応しています。
先天異常と発育異常 | 埋伏歯・過剰歯・口唇口蓋裂・顎変形症・小帯の付着異常など |
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外傷 | 破折・脱臼・歯槽骨骨折・顎骨骨折・軟組織の外傷など |
口腔粘膜疾患 | 口内炎・口角炎・口唇ヘルペス・扁平苔癬・再発性アフタ・白斑症・メラニン色素沈着症・口腔乾燥症など |
炎症 | 智歯周囲炎・歯槽腫瘍・歯槽骨炎・顎骨骨髄炎・歯性上顎洞炎・ビスホスホネート関連顎骨壊死など |
嚢胞 | 歯根嚢胞・歯槽嚢胞・含歯性嚢胞・原始性嚢胞・術後性上顎嚢胞・粘液嚢胞・類皮嚢胞・類表皮嚢胞など |
良性腫瘍 | エナメル上皮腫・歯牙腫など |
悪性腫瘍 | 口腔癌・悪性リンパ腫・悪性黒色腫など |
顎関節疾患 | 顎関節症・顎関節脱臼など |
唾液腺疾患 | 唾石症・シェーグレン症候群など |
神経疾患 | 三叉神経痛・顔面神経麻痺など |
この記事では、上記の中でも開業歯科医院や歯科診療所でも対応することが多い疾患と治療方法について解説します。
埋伏歯とは、歯の一部または全体が顎骨内に埋まっている歯のことです。部位は下顎智歯が全体の80%を占めています。なお完全に埋まっている歯のことを完全埋伏歯(略語:CRT)、一部埋まっている状態のことを半埋伏歯(略語:HRT)、智歯が水平に埋伏してる状態を水平埋伏智歯(略語:HIT)と呼びます。半埋伏歯や水平埋伏歯の場合、第二大臼歯との間に歯周ポケットができるため、歯肉に炎症を起こすことがあります。この状態を智歯周囲炎(別称:Perico)と呼びます。
埋伏歯や半埋伏歯の場合、抗菌薬や消炎鎮痛剤の投与で炎症を治めた後、必要に応じて歯肉弁の切除や抜歯(略語:EXT)を行うことが多いです。なお完全埋伏歯の抜歯は「埋伏抜歯」、歯根が湾曲して分割などが必要になる抜歯を「難抜歯」と呼びます。基本的な抜歯は以下のような流れになることが多いです。
● 1.消毒・局所麻酔
● 2.歯肉の切開・剥離
● 3.骨削除・歯の露出
● 4.歯根膜の切断
● 5.抜歯
● 6.洗浄・縫合・圧迫止血
抜歯は局所麻酔を使用して行われます。局所麻酔には以下のような方法があります。
● 表面麻酔(略語:表麻)…歯肉の表面に塗って感覚を麻痺させる
● 浸潤麻酔(略語:浸麻)…組織内に注入して浸潤させることで神経を麻痺させる
● 伝達麻酔(略語:伝麻)…下顎を通る下歯槽神経の近くに注入して麻痺させる
なお伝達麻酔は、下顎埋伏智歯に対して行われます。
埋伏歯の場合は歯肉の切開と剥離が必要です。
埋伏歯の場合、タービンなどで骨を削除して歯を露出させることがあります。
歯根膜腔に短針などを入れて歯根膜を切断し、歯を抜きやすい状態にします。
ヘーベルで歯を脱臼させてから、鉗子で歯を抜去します。
抜歯後に不良肉芽があれば除去し、抜歯窩を生理食塩水などで洗浄します。その後に滅菌ガーゼで圧迫止血して、必要に応じて傷口を縫う縫合を行います。
抜歯後の翌日には、傷口の治りの確認と併せて消毒(略語:SP)をすることが多いです。傷口を縫った場合は約1週間後に糸を抜く処置を行い、これを抜糸(ばついと)と呼びます。
術前に患者の健康状態を確認した上で、処置内容を説明し同意を得ます。診療補助に入る歯科衛生士は必要な器具・機材を用意し、処置中は器具の受け渡しや血液・唾液の吸引を行います。その他抜歯中に左手首付近で患者の顎を固定することもあります。
術後は患者本人に患部を圧迫するよう滅菌ガーゼを咬んでもらい、歯科衛生士は抜歯後の注意点や鎮痛剤の服用方法などの説明をすることが多いです。
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