日本在宅医療学会:高橋日歯大講師「今後は歯科からも運動神経機能の研究必要」

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9月17日・18日の両日、日本在宅医療学会が京王プラザホテルで開催された。近年は在宅医療の重要性と同時に歯科の参加が求められ、連携による有効性が指摘されており、その臨床評価が注目されている。18日には「フレイル・サルコペニアに対する在宅生活期リハビリテーション」として、高橋賢晃・日歯大口腔リハビリテーション科講師が歯科からの関与・効果を報告した。会場からの「口腔機能低下への指摘があるが、それに関与している運動・神経機能も研究も必要だと思うのですが」という質問に対し、「指摘の通りで、“口腔機能の低下”を論じるにあたり、今後は歯科からも口腔機能と運動・神経機能の関係も調査して行く必要があると認識している」と回答し、問題意識を表していた。 講演後、「歯科へのニーズはこれからだと思います。本学会で講演させていただき、歯科以外の関連職種の人たちにも理解・認識を有していただければと思っています」とさらなる意欲を示していた。歯科大学講座ではパイオニア的な講座もあるが、大学講座間での取り組みに温度差があるのは事実で、卒前教育・国試の課題も関係するが、大学・歯科医師会・開業医など歯科全体での取り組みを示す必要はあるようだ。なお、高橋講師の講演概要は以下の通り。 口腔は口唇、頬、舌、軟口蓋といった筋肉で構成されている。加齢、寝たきり状態及び疾患に伴う筋肉量の減少は口腔周囲の筋肉量の減少、筋力低下にも影響する。口唇、頬及び舌などを含めた口腔周囲筋の機能低下は、食事時間の延長、食べこぼし、口腔内の残留や食事時のむせにつながりやすい。これらの症状により食べる楽しみが損なわれると、高齢者のQOLは著しく低下する。歯の喪失による咬合支持の喪失は咀嚼機能を低下させ、食物摂取量の減少、体重減少や低栄養に関連することが報告されている。つまり、口腔機能の低下はフレイル・サルコペニアに拍車をかけ、悪化させて行くことが予想される。 東京大学の飯島教授らによる大規模高齢者虚弱予防研究、いわゆる“柏スタデイ”において、柏市に在住している満65歳以上の健康高齢者2,044名(男性1,013名・女性1,031名・平均年齢73±5.5歳)に対して実施した健康調査の結果から、加齢に伴う口腔機能の低下は残存歯数から始まり、口腔の巧緻性・速度であるオーラルディアドコキネシスが低下し、次に運動の力である咬合力、舌圧が低下する。そして総合力である咀嚼力の低下を報告している。一方で、咀嚼力は残存歯数による影響が強いため、天然歯28歯以上有する者で検討すると咀嚼力への関与は舌の機能が強いことが示された。 さらに、これらの口腔機能の低下は全身のサルコペニアと関連することが示され、オーラルフレイルの概念が提唱された。その概念は、前フレイル期、オーラルフレイル期、サルコ・ロコモ期、フレイル期の4つのフェーズで構成されている。口腔の関心度の低下による歯の喪失の徴候が現れる段階を前フレイル期、口腔機能の軽微な虚弱を伴うオーラルフレイル期、様々な口腔機能低下が顕在化してくるサルコ・ロコモ期は低栄養状態に陥る段階だとしている。さらにフレイル期は不可逆的な虚弱化への入り口であり、早期の対応が重要であると考えられる。 地域の歯科医師は歯の喪失等の器質性咀嚼障害に対し、咬合回復による口腔環境の整備に加え、口腔の軽微な衰えに気づき、高齢者に意識改革を促す必要がある。また、口腔機能訓練や機能に適した食形態の提案などの食事指導を行うことも重要である。さらに、運動機能の低下に伴う咀嚼障害が進行した場合は、治療的アプローチから代償的、環境改善アプローチが中心となる。よって、地域歯科医師に求められていることは口腔機能の軽微な衰えを察知し、口腔機能の評価を行い、関係職種への働きかけを行うことが在宅生活期におけるフレイル・サルコペニア予防に重要だと考える。
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