地域包括ケアと歯科の対応:“在宅・管理・連携”が問われる時代

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

高齢者問題が、マスコミでも特集が組まれるなど注目されてきている。従来は地方での大きな課題という捉え方であったが、今は高齢者が集中すると予測されている東京など大都市圏の問題になっており、各行政は既に対策を講じている。事実として、介護施設を建設する予算や土地を確保するのが難しいことは関係者の共通認識だ。この点を見据え、厚労省は「施設・病院から在宅での介護・医療へ」という将来に向けた医療介護システムとして、24年度医療介護同時改定の際に以下の4点を実施した。 ①在宅歯科医療の推進 、②地域包括ケアシステムの構築、③病診連携の推進(周術期の口腔機能管理)、④介護施設での口腔ケアの推進(口腔機能維持管理加算など)。このように医療・介護の事業政策が一定期間を見据えた端緒となった改定といえる。 この4項目のどれもが「歯科訪問診療」に関係しているが、東京などは予想より低い実施率で、厚労省も困惑気味でその対応に追われている。このように、実施する歯科医療機関はなかなか増加せず、一部には「以前よりむしろ厳しい状況に置かれつつある」との指摘もあり、改めて歯科関係者の姿勢が問われている。高橋英登・日歯連盟会長が「人生の最後まで、地域住民の一人ひとりの生活を歯科医師として支援していく。この姿勢を続けていくこと」と歯科の捉え方を強調している。 一部事業に対し、民間企業が行っていることも懸念されており、元県歯会長・代議員を務めた某氏は「懸念される民間事業は論外だが、専門部門を有し、それなりに適切に対応できる業者が活動したらよいのではないか、歯科医師会の対応では患者の支持・理解が得にくい。マンパワー・器具機材・時間的対応能力などを比較されたら厳しいことは認めざるを得ない。残念ながら一気に解決する政策はない。地味ながら、歯科医師の医療人としての自覚・倫理観に委ねるしかない」と吐露する。 かつて週刊誌上で問題点を指摘された歯科グループのその後の動向は不明であるが、依然として類似の歯科グループが現存しており、関係者はまたマスコミから叩かれるのではないかと心配している。 厚労省は来年度の予算ベースでも“在宅医療”への重点シフトを明確にした政策を推進していくこととしている。こうした中で“地域包括ケアシステム”の推進があり、“かかりつけ歯機能強化型歯科診療所(か強診)”の設置・導入はそれにリンクしていると見るのが妥当だろう。 2018年度は第7次医療計画と第7期介護保険事業計画が同時にスタートし、診療報酬・介護報酬の同時改定を迎える重要な節目の年。国は地域包括ケアシステムの構築を共通テーマに、医療・介護の連携・整合性をとった計画策定を求めている。 今回の取りまとめの中で厚労省は、5疾病(がん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患)、5事業(救急・災害対応・へき地・周産期・小児)、そして在宅医療における見直しの方向性と具体的な内容、医療計画上での指標見直し案を盛り込んだ。 特に、在宅医療については 【必要な医療機能を確保するため、実績に着目した指標を明記】 具体的な内容としては、医療・介護が補完的に提供されるよう、都道府県や市町村による「協議の場」を設置し、医療・介護両計画の整合的な目標を検討することや、地域住民に対する普及啓発、入院医療機関・かかりつけ医療機関の充実を図る。 【圏域設定等を徹底し、市町村との連携を推進】 居宅介護支援事業所等による入退院時の情報共有ルール策定など、在宅医療の提供者のみに偏らない施策を進めることとしている。また、市町村が実施する在宅医療・介護連携推進事業のうち「切れ目のない在宅医療・介護の提供体制の構築推進」「在宅医療・介護における相談支援」「在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携」の3項目を医療計画に記載するなどの対応を求めている。 医療における事業政策を促進していく中で、当然ながらその指標として「在宅患者訪問診療料、往診料」「歯科訪問診療料」「在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費(介護報酬)」「退院支援加算、退院時共同指導料」など、在宅医療や退院支援に関係する報酬を例示。これらを算定する病院・診療所数や24時間体制の訪問看護ステーション数などを医療計画上の目標とすることを提示している。 この地域包括ケアにおける歯科の責務の議論も真摯に行われているが、健康寿命の延長には口腔ケアを含む歯科的介入が必要で、歯科からの機能の拡充と同時に医科歯科連携の確保が求められている。また、誤嚥性肺炎や低栄養の予防のためにも口腔機能の向上、義歯の装着・調整を含む維持管理が必要。終末期における人間としての“尊厳”という点からの口腔の維持管理が注目されつつある。こうしたことを踏まえてこれから議論は本格化していくが、“在宅・管理・連携”が歯科医療に問われる時代になっている。
記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ