歯周病の新分類を臨床にどう活かす? チームで知りたい!これからの歯周病患者の治療と管理

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2019年8月4日(日)、ソラシティカンファレンスセンターにて天野敦雄先生(大阪大学大学院歯学部研究科予防歯科学教室教授)と西田亙先生(にしだわたる糖尿病内科院長)のジョイントセミナーが開催された。(インターアクション株式会社主催)
「チームで知りたい!これからの歯周病患者の治療と管理」をテーマに、当代きっての人気講師である2名の先生によるセミナーは、二部構成で行われた。

第一部:天野先生による講演
まず、医科歯科連携の問題点の一つとして医科と歯科の「言語の違い」を指摘。その「言葉の違い」を解決し得ると期待されるものとして「歯周病の新しい分類」を挙げた。この「歯周病の新しい分類」は2018年ユーロペリオ9で発表された。歯周病の程度をステージ(進行度合い)とグレード(進行速度)で分類するこの新しい分類方法が、将来の医科と歯科の共通言語になり得ることを期待させた。

そして、歯周病やう蝕の最大の問題は、今日では「口腔バリアの崩壊をもたらし、それが全身的な影響を与える」という概念に変化していることを強調。口腔由来の細菌と炎症生産物が血流に乗り全身に波及することで、100種類以上の全身疾患が誘発されると述べ、歯周病と全身疾患の関連性をあらためて強調し、歯周病が全身疾患を誘発する原因となりうることを菌血症と慢性炎症という観点から説明した。
その上でう蝕や歯周病を「Microbial Shift」というキーワードで、バイオフィルムが高病原化する現状を説明。Microbial shiftとは、バイオフィルムを取り巻く環境変化(栄養の増加、快適な温度、ph等)によって、細菌たちが活気づき病原性を高める現象のことである。 令和の常識としてう蝕の誘発成分として発酵性糖質を挙げ、発酵性糖質を食べると、酸産生菌が酸を出す。そしてバイオフィルムが酸性になり、酸性に強い酸性生菌が増加。酸性に弱いアルカリ産性菌が減少する。それによってバイオフィルムがより酸性に傾く。これによりう蝕のMicrobial shiftが完成するという。
歯周病を予防し、歯・歯周組織とバイオフィルムとの均衡を維持するために、日ごろの予防歯科の徹底を強調された。

第二部:西田先生による講演
令和に入り内科医の立場から見て歯科がもっとも重要な時代を迎えるという言葉に始まり、多くの重大疾患に影響を与える「慢性炎症」と、その最大の原因と考えられる「歯周病」の関係をあらためて強調した。海外の病理解剖症例である口腔子宮感染により絶命した胎児を事例に上げながら、ある種の歯周病原性菌が全身に浸潤する危険性を説いた。

口腔から始まる全身への感染と炎症を生涯にわたって予防する必要があり、そのために定期的に歯科の検診を受けることの重要性を述べられた。同時に年に4回以上歯科医院に通院していた妊婦は、出産時の追加医療費を1/4に抑えることができたという海外のデータを提示しながら、妊婦から母親になり、子供と一緒に、家族と一緒に歯科定期検診に来てもらう流れを作る今後の歯科医院経営の新たな視点を述べた。
最後に、日本人の口腔が40代から崩壊し始める現状をデータで提示し、超高齢化社会において地方の歯科医療の活性化や、歯科衛生士の活躍こそがこれからの予防歯科に重要であると語った。

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