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2013/10/24

第22回:日本歯科保存学会講演抄録集を見て

11月8〜9日に岡山市で開催された日本歯科保存学会秋季学術大会の講演抄録集に目をとおしてみた。その中から、筆者の興味を引いた、歯内治療に関連する話題を取り上げて紹介することにする。

最も興味を引いたのは、接着性レジンシーラーに関するものである。第3回コラム「接着歯内療法」で接着性シーラーの重要性について述べ、また、筆者らは15年ほど前から接着性シーラーについて発表してきたが、これまで学会ではあまり注目されていなかった。しかし、今回は7件もの発表があり、ようやく接着性シーラーにも目が向けられるようになったかと喜ばしく思っている。接着性シーラーとしては、Epiphany(Pentron)、スーパーボンド根充シーラー(サンメディカル)(以下SBシーラーと略記)、MetaSEAL(Parkell)があるが、現在我が国ではSBシーラーのみが認可されている。これらのシーラーに関して、垂直性歯根破折に与える影響やコロナルリーケージの面から比較が行われているが、三者間で成績に差が認められたという。大まかに言えば、MetaSEALがややすぐれ、Epiphanyがやや劣り、SBはその中間ということになろうか。しかし、実験のやり方を含め、さらなる検討を要するようである。

SBシーラーと根管象牙質との接着の様子が調べられているが、レジンが象牙質内に侵入していわゆる樹脂含浸層を形成したり、細管内に侵入してレジンタグを形成して、緊密な接着封鎖をする様子が観察されている。また、根管の機械的拡大形成を行わずに化学的根管清掃を施しただけ(歯髄の除去のみ)の根管象牙質壁の接着界面においても、厚い樹脂含浸層が形成されたという。同じような結果がMetaSEALについても報告されており、根管の拡大形成の有無にかかわらず、根管壁との良好な接着封鎖性が期待できるとされている。SBシーラーでのガッタパーチャによる根管充填法の違いが根管封鎖性に及ぼす影響が調べられたが、グレートテーパーポイントのシングルポイント充填が良好な成績を示したという。

三つのシーラーのうちEpiphanyとSBシーラーについては第3回コラムで少し紹介したのでそれを参照していただくとして、ここでは本年1月米国で発売されたMetaSEALについて少し触れておきたい。4-METAを含む液と触媒を含む粉を混和し、それをそのまま通常の処理(NaOCl、EDTA処理)を施した根管に適用するものである。セルフエッチングで1ステップであるという簡便さ、用いている親水性の触媒が水分の多い根管壁に集まることにより、そこから重合が開始されるとともにその方向にレジンが引張られるため接着に有利、などを謳っている。なお、後者の点については、SBシーラーでも根管壁界面で似たような重合メカニズムが働きすぐれた接着性を示す源となっているが、MetaSEALの場合のメカニズムはそれとは似て非なるものである。

いずれのシーラーも発売されてまだ日が浅く、その性質、使いかたをよく理解したうえで工夫しながら臨床で使いこなしていくことが望まれる。接着性シーラーは原理的にすぐれているといえども、適切なシーラーの選択と適切な使用なしには、従来のシーラーを用いての適切な根管充填を凌ぐことは困難といえよう。

もう一つの話題は水酸化カルシウムに関するものである。水酸化カルシウムは根管貼薬剤として広く利用されるようになっているが、封鎖性や残存する水酸化カルシウムにかかわる問題が指摘されている。封鎖性に関していえば、水酸化カルシウムを貼薬すると、従来の3種類のシーラーのいずれを用いた場合でも根尖封鎖性が低下したという報告があった。水酸化カルシウムの残存に関しては、その残存が根管洗浄剤であるNaOClの有機質溶解作用を妨げる可能性が示唆されている。一方、残存する水酸化カルシウムの除去に関しては、注水下のEr:YAGレーザー照射の効果を調べた発表があり、それはNaOCl中での超音波洗浄と同程度、EDTAとNaOClを併用しての根管洗浄より明らかに効果的であったという。

最近米国で水酸化カルシウムやスメア層の除去を謳った20%クエン酸溶液(Ultradent)が発売された。この溶液を用いて根管拡大形成後のスメア層の除去効果を調べた報告によると、それはEDTAと同程度の効果があったが、同時に比較したBioPureMTAD(Dentsply Tulsa Dental)(成分:クエン酸、ドキシサイクリン、界面活性剤など)の効果はやや劣っていたという。この結果はスメア層の除去に関してであるが、水酸化カルシウムの除去ではEDTAよりも20%クエン酸の方がすぐれているであろう。EDTAは強アルカリ性環境下では作用が弱いからである。筆者としては、クエン酸より10%乳酸での1分間処理を推奨したいところである。その有効性については筆者らが2002年春の保存学会で発表しているが、水酸化カルシウムやスメア層の除去に関して乳酸はクエン酸よりもすぐれた効果を示すばかりでなく,根管内で水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変化したものも除去できることを確認している。

最後に水酸化カルシウム利用にかかわる懸念材料について触れておきたい。それは第14回コラムで「水酸化カルシウムが象牙質コラーゲンに作用して象牙質を脆弱化させ、最終的に歯の寿命を縮めることはないであろうか?」と記したことにかかわることである。Dental Traumatology 23巻1号(2007)に掲載された論文によると、抜去したヒト上顎切歯の根管に水酸化カルシウムを充填し、高湿度環境下に7〜84日間放置してから破折強度を測定したところ、その期間で強度が43.9%低下したという。このような結果を踏まえ、水酸化カルシウムの日常的な使用について再検討する必要性があろうとしている。水酸化カルシウムの貼薬が短期間であれば多分影響は少ないであろうが、長期に及んだ場合はどうであろうか?ホルムクレゾール(FC)の代わりに水酸化カルシウムが多用されるようになって、歯根破折が増えたような傾向はないであろうか?そのようなことがなければ幸いであるが、ぜひ検証してほしいと思う。

(2007年11月25日)

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