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2013/10/24

第18回:レジンの硬化や接着に好ましくない影響を及ぼすもの

第15回コラムで、コンポジットレジンは酸化亜鉛/ユージノールセメントの影響を受けて硬化不良を起こすことに少し触れた。今回は、治療のやり方によっては、レジンやボンディング材の硬化あるいは接着に好ましくない影響を及ぼす可能性のあるものについて書くことにする。

酸化亜鉛/ユージノールセメントの影響により起こるコンポジットレジンの硬化不良は、ユージノールの重合妨害作用によるものである。ユージノールのみならず、ホルマリンと合わせて根管治療に使われているクレゾールやグアヤコール、根管治療薬剤のパラクロロフェノールも似たような妨害作用を示す。これらは、化学的にはフェノール類に分類され、レジンなどに添加されている重合触媒(光重合開始剤や化学重合開始剤)から発生するラジカルと反応しやすく、モノマーの重合を妨げ、レジン等が固まるのを遅らせたり、固まらなくさせる作用がある。したがって、治療に用いたそれらのフェノール類が歯質に残留していると、そこへレジンやボンディング材を適用しても、モノマーが重合しにくくなってよく固まらず、そのため歯質界面で接着不良を起こす可能性がある。妨害作用の強さは化学構造によってかなり異なるが、これらの中ではユージノールの作用が強い。市販の歯科用レジンのペーストや液、ボンディング材などには、それらが保管中に固まらないようにするため、ある種のフェノール類が微量必ず添加されている。なお、こうしたフェノール類はすべて反応してしまえば、その後は普通にラジカルによる重合が進む。

象牙質にしみ込んだユージノールやクレゾールは、それを除去したり、妨害作用を無くさせるのはかなり難しく、今のところ有効な方法は見つかっていない。しっかりとした接着を望むのであれば、それら妨害物質の利用を避けるのが無難である。もし接着するのであれば、MMA-TBBレジン(スーパーボンド)の利用を勧めたい。このレジンは、ほかの接着システムに比べ、それら妨害物質の影響を受けにくいとされている。

根管治療や修復にも使われることのある次亜塩素酸ナトリウム(ヒポクロ)も、接着に好ましくない影響を及ぼすことがある。影響を受けるのはMMA-TBBレジンの場合である。この接着性レジンでは、象牙質を10%クエン酸/3%塩化第二鉄水溶液(通称10-3溶液)で前処理する必要がある。ところが、象牙質にヒポクロが残留していると、接着強さが大きく低下してしまう。これは、ヒポクロが前処理液中の鉄塩を酸化してその働きを無効にするためであり、還元作用のある物質での処理が有効である。還元剤としてスルフィン酸塩が選ばれ、利用されている(アクセル)。このスルフィン酸塩は、モノマーを重合させるキャタリスト成分として以前から利用されている物質である。まず還元剤処理、次いで10-3溶液処理すると、接着強さの低下は防げるとされている。

鉄塩の妨害作用についても触れておこう。MMA-TBBレジンを用いる象牙質の接着では、10-3溶液での前処理が必須であるが、処理後の水洗が不十分で鉄塩が象牙質に過剰に残留すると、レジンの重合が不良となり、接着強さは低下する。多量の鉄塩は重合を妨害するが、微量の鉄塩は重合を促進することがある。微量の鉄塩というのがこのレジンでのポイントである。象牙質に吸着された微量の鉄塩とキャタリストであるTBBの協同効果により、象牙質界面でレジンの重合が促進されて急速に固まるため、優れた接着性が得られるというシステムになっている。

なお、ほかの接着システムではこのような形での鉄塩の効果はないので、ヒポクロの妨害作用を特に考慮することはない。しかし、ヒポクロが残留していると、強いアルカリのために、接着性モノマーやレジンモノマーが反応、変質する可能性があることは一応理解しておいた方がよい。アルカリといえば、水酸化カルシウムのことがある。覆髄や根管貼薬に使った水酸化カルシウムが残留した状態でボンディング材を適用すると、水酸化カルシウムと反応して接着に好ましくない影響を与える。接着を考える場合には、できるだけ水酸化カルシウムを除去することが望ましい。残留している水酸化カルシウムは薬剤で比較的容易に除去できる。

セルフエッチングプライマーとボンディング材からなる接着システムにおいて、プライマー適用後に強圧のエアーブローで水分を飛ばさないと、水が重合抑制因子になり、接着材の重合が抑制される可能性があるという報告がある。これは、水があると重合初期にできるラジカルの量が減るという測定結果からの推論であるが、筆者は水というよりは水に溶けている酸素のためではないかと解釈している。酸素は常温で1Lの水に6 mL程度(約8 ppm)しか溶けないが、酸素とラジカルの反応はきわめて速く、微量でも重合妨害作用は強力である。空気に触れているレジン部分は酸素の影響で硬化不良になることはよく知られている。レジンやボンディング材に通常用いられているキャタリストでは、それからできたラジカルは酸素があると先ずすぐに反応してしまう。(例外的に、TBBキャタリストのように少し酸素があってもあまり影響を受けないものもある)。

レジンや接着システムのモノマーの多くは通常水に溶けにくいため、象牙質界面に水があるとモノマーは歯質に侵入しにくくなり、接着はうまくいかない。この場合、水は接着の妨害因子ではあるが、重合の直接的な抑制因子ではない。この界面の問題を解決するため、プライマーにはHEMAのような水に溶けやすいモノマーが配合されている。プライマーには水が添加されているものもあり、それが場合によっては重合抑制につながる可能性があるというのが上に述べたことである。

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