第19回 「細胞培養」の話

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 平成20年度4月から日本大学歯学部の解剖学教室第2講座にお世話になることになりました。平成元年に愛知学院大学歯学部を卒業して20年ぶりの歯学部に戻ってきました。この20年の間に何が変わったのだろうかと、とても楽しみでした。印象が大きかったことの一つとして、国家試験に合格することが難しくなっていることです。また、知らぬ間にマスコミから歯科医は“ワーキングプア”と呼ばれ、歯学部離れもあると聞きます。歯科医師という職業も競争社会の真っ只中にあるのでしょうか。

 このコラムから「培養」という言葉をキーワードに培養細胞を使った再生の話をします。今回はその話の基となる「細胞培養」についてです。

 細胞とはなんでしょう、一般的には単細胞生物が存在していることから、生物の最小単位といえるのではないでしょうか。一方で、生物と無生物を分けるものは、何かという議論に関してはまたの機会にします。

 過去の話となりますが、初めて動物細胞が生体外で培養できるようになった時は、多くの研究者が生命の本質に一歩近づいたと感じたと聞きます。どうして、そう思われたのかというと、培養されたひとつの細胞の加算的総合が生体になるというように考えたからだそうです。もしくは、一つの細胞それ自体を生命の本質として考えたからともいわれています。その後、数十年たって、個体のクローン技術の進歩によって、ひとつの培養細胞の核から、個体を発生させることに成功しようとしているのです。

 もともと細胞培養というのは、生体内で解析しようとすると要因が複雑すぎて解析不可能な現象を、培養という単純な条件に移して解析可能にする手段として発達してきた経緯があります。しかし一方、細胞は生体内にあっては特有の三次元的組織構築の中にあるので、細胞を生体から取り出して単層培養系に移すと、多かれ少なかれその機能を失います。しかも、どのような機能がどれぐらい失ったかを知ることは困難です。言い換えると、培養という条件の下で、細胞が単層培養系で生き抜くために必要な機能は失わずに、不必要な機能を失うと考えられるからです。たとえば、基本的な代謝やDNAの複製、転写、翻訳の機構などは生きるために細胞にとって必要なことであるから失うことは考えにくいですが、細胞の分化機構や形態形成機構などの高度な調節機構は失いやすいかもしれません。このように、研究が発達するにつれて、培養細胞と生体との相違点が多いことがわかってきました。つまり、培養細胞は生体の組織にあった時とは異なるということです。

 したがって、われわれ研究者は細胞培養を実験に使用するには、なぜ、細胞培養が必要なのか、なぜ、細胞培養を行うのかを実験目的に戻って考えてみなければいけません。

図1・細胞培養:体内から少量の組織を採取して生体外で培養することで、 少ない細胞を大量に増やすことができます。これが、「細胞培養」の大きな利点の一つです。

 

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