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2013/10/24

第15回:水酸化カルシウムとFC(続)

第14回コラムでJournal of Dental Researchの論文について少し触れた。それは、KC Huthら6名が同誌84巻1144-1148頁(2005)に“Effectiveness of 4 pulpotomy techniques−Rondomized controlled trial”(4つの断髄処置法の有効性−無作為化比較試験)として発表したものである。なかなか興味深い内容なのでもう少し詳しく紹介するとともに、著者らが考察していない点について、筆者なりのコメントも加えてみたい。

この研究では断髄処置法として、ホルムクレゾール(FC)、水酸化カルシウム(CH)および硫酸第二鉄(FS)の貼薬、それと前回は触れなかったレーザー照射の4つが比較されている。FCではBuckley液の1:5希釈液を5分間貼薬、CHではCH(Calxyl)貼薬後CHセメント(Kerr)で覆髄、FSではその15.5%液(Astringedent)を15秒間貼薬、レーザーではEr:YAGレーザーを水冷せずに照射。107名の患者(2〜8歳)の乳臼歯200本を断髄後、綿球で5分間圧迫してすべて一たん完全に止血、乾燥状態にし、各処置とも50歯を対象とした。

各処置のX線的評価を含めた全体の成功率(%)(以下のカッコ内には臨床的成功率を記す)は次のとおりである。12月後:FC 96(100)、CH 86(95)、FS 86(100)、レーザー93(98); 24月後:FC 85(96)、CH 53 (87)、FS 86(100)、レーザー 78(93)。この結果のうち特に目立つのはFSである。臨床的には失敗症例は全くなく、12月後にX線的に7例失敗とされたが、その後24月後までは失敗例は皆無であった。この特異さはほかの処置法での12月以降の失敗例数と比べてみるとよくわかる。FC5例、CH12例、レーザー6例である。CHで長期の失敗例が多いのは、覆髄したCHのアルカリの影響ではないかと筆者は推測している。

断髄処置後、窩洞を酸化亜鉛/ユージノール(ZOE)(IRM)で裏層した後、グラスアイオノマーセメント(Ketac)でステンレス冠をセットするか、コンポジットレジン充填(Tetric)を行っている。こうした修復物の予後不良は、ステンレス冠修復では109例中脱落3例、コンポジットレジン修復では82例中完全脱落3例、部分脱落3例、二次カリエス7例と記されている。これらの結果について、断髄処置法との関係を含め、まったく考察されていない。しかし、CR修復のほうがどうみても不良例が多い。どうも著者らはCR充填についての理解がやや不足しているのではないかと思われる。CRはZOEの影響を受けて硬化不良を起こしやすいため、予後不良となる可能性が高いことを考慮すべきであろう。なお、ZOEで裏層しているため、これら修復での不良症例と断髄処置法との関係はほとんどないと考えられる。

この論文で不思議に感じたことが二つある。まず、止血できない症例の数である。各処置開始後CHで6例、レーザーで3例が止血不良となって研究対象から除外されている。一方、FCとFSではそうした症例は皆無である。これについて著者らは何も考察していないので意味のある違いなのか筆者にはわからない。しかし、これはたんぱく凝固能の違いが影響しているように筆者には思われ、断髄処置剤としてCHはあまり適当ではないような印象を受けた。

もう一つ、これは本当に偶然なのかと思うことがある。歯の生理的脱落数がレーザー7、CH3、FCとFSがともに1というデータである。レーザーでは少なくともFCやFSに比べて多いといえないであろうか?研究計画はよくデザインされていると思われるので、年齢分布の偏りのためとは考えにくい。筆者には、断髄処置時の歯髄への刺激が強いと、脱落が抑えられているあるいは遅らされているように見える。歯髄への刺激は、レーザー<CH<FC、FSの順に強くなるであろう。

さきに、CRはZOEの影響を受けて硬化不良を起こしやすいことを述べたが、ZOEで裏層しないとしたらどうなるであろうか?4つの断髄処置法の中で、CR修復への影響がほとんどないと考えられるのはレーザー処置のみである。FCではクレゾールが硬化不良を引き起こし、CHはモノマーと反応し、FSは処置後の洗浄が不十分であると硬化不良を引き起こすなど、いずれも界面での硬化不良、接着不良あるいは強度低下を起こす可能性がある。そうすると、レジンの利用はあまり好ましくないということになってしまいそうである。

しかし、近年、レジン系材料で直接覆髄する方法が試みられ、良好な成績をあげているようでもあり、望みはある。この場合、用いられているレジンはMMA-TBBレジン(スーパーボンド)である。この方法では、露髄面を止血した後、塩化第二鉄を含む液で歯面を処理、洗浄してからこのレジンで直接覆髄している。塩化第二鉄での歯面処理にはFS処置と類似した作用が考えられる一方、FS処置した後にMMA-TBB レジンで直接覆髄することも当然可能と思われる。これは、このレジンでは歯質界面にある微量の鉄イオンが接着に効果的に働くからであるが、ほかのレジンではこのような効果は期待できない。

レジン系材料での接着を考える場合には、FC、CHの使用はできるだけ避けたいところである。FC、CH貼薬後にはいずれも象牙質に対する接着強さが低下することが知られている。根管貼薬後のレジンコア築造などを考えた場合、接着強さに何ら影響を及ぼさないのは前回述べたグルタルアルデヒドのみであり、これを何とか使えるようにしたいものである。

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