ヒューフレディ・ジャパン合同会社主催 Infection Control Symposium 2018 第1部

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医療現場の感染管理 (過去・現在・未来) シンポジウム開催
2018年11月17~18日の2日間、日本歯科大学生命歯学部の100周年記念館九段ホールにおいて、ヒューフレディ・ジャパン合同会社主催でInfection Control Symposium 2018 (以下、ICS)が開催された。2016年に第1回が開催され、今回は2回目のICSの開催となる。当日の参加者数は100名以上で、歯科医師に加え、歯科衛生士・助手などのデンタルスタッフや、医療器具関連業者の参加もあった。まず、今回のICS開催にあたり、ヒューフレディ・ジャパン合同会社のロバート・バウマン代表より、主催挨拶が行われた。次に又賀泉先生(日本歯科大学名誉教授)が大会長挨拶を行った。今回のシンポジウムでは、国内外でフロントランナーとして活躍している医師・歯科医師の計6人が感染管理に関する講演を行った。充実した内容であるため、今回のICSの内容は3部に分けて紹介していく。第1部となる本記事では、海外から招聘されたジョン・モリナーリ先生とイブ・クーニー先生の講演内容をピックアップして紹介する。
ジョン・モリナーリ先生講演 ~感染管理:What and Why?~
▲感染管理について説明するジョン・モリナーリ先生
ジョン・モリナーリ先生(ミシガン州 THE DENTAL ADVISOR 感染管理担当理事)は、講演「感染管理:What and Why?」で、歯科医療従事者が臨床においてどのような感染管理を行っていく必要があるかを説明した。
手指衛生の重要性に加え、グローブやゴーグルなどの個人防護具(PPE)、スタンダードプリコーション、器具の滅菌方法、ウイルスの生存期間などについて、医学的根拠や自身の経験をもとに、分かり易く述べていた。
講演の中で特に印象的だったのは、血液や呼吸を介して感染するウイルスの生存期間についての内容である。例えば、インフルエンザウイルスは、一般的な体外での生存期間が24-48時間であることが知られている。HIVであれば、血液中でのみ生存でき、体外での生存期間は長くとも数十分であるため、血液以外のHIV感染は考えにくいとされている。その一方で、HBVやHCVなどの肝炎ウイルスは状況にもよるが、1週間以上体外で生存し、感染力を維持していることが報告されている。仮に、血液の付着した歯科器具を放置した場合、HBVは1週間以上、HCVは6週間まで生存し、感染力を保つといった研究報告もある。
ジョン・モリナーリ先生の講演を聴講して、医療器具関連交差感染を防ぐためには、治療に用いた器具の洗浄から滅菌までの各ステップをしっかりと行うことが重要である。また、人から人への交差感染を防止するためには、スタンダードプリコーションを必ず実施することが肝要であることを、強く実感した。
イブ・クーニー先生講演 ~臨床施設における血液飛散と新興感染症~
▲臨床施設における血液飛散と新興感染症について説明するイブ・クーニー先生
イブ・クーニー先生(科学修士、パシフィック大学アーサーA.ダグニー歯学部)は、「臨床施設における血液飛散と新興感染症」というテーマで講演された。伝播経路(接触・飛沫・空気)や感染メカニズムをしっかりと理解することで、適切なスタンダードプリコーションを実施する礎となることが分かる講演内容であった。

イブ・クーニー先生の講演でも、ジョン・モリナーリ先生の講演でも触れられた、感染力の強いHBV・HCVについての説明が行われた。加えて、新興感染症の70%は動物に由来して生じるなど、普段なかなか知る機会のない内容を聴講することができた。
イブ・クーニー先生の講演の中で最も興味深かったのは、これから日本で流行が予測されているインフルエンザについてである。インフルエンザウイルスの抗原型の違いと、流行規模の違いが説明された。以下に各抗原型における流行規模を紹介する。
  • ・インフルエンザA型:エピデミック・パンデミックを引き起こす可能性がある
  • ・インフルエンザB型:エピデミックのみを引き起こす可能性がある
  • ・インフルエンザC型:エピデミック・パンデミックを引き起こす可能性は低い

特に感染スピードが速く、感染規模の大きいインフルエンザA型には要注意である。インフルエンザウイルスの感染を予防するためには、毎年の予防摂取に加え、手指衛生の徹底や、マスクの装着などが重要である。何より、患者をインフルエンザウイルスから守ることにつながる。医療機関の8割がインフルエンザの予防接種の適正時期を11月としているため、遅くとも12月上旬頃までには、予防接種を受けることをお勧めする。
講演から学んだ、クリニックで実施すべきポイント
▲感染管理について説明するジョン・モリナーリ先生
二人の講演を聴講して強く感じたのは、最低限のスタンダードプリコーションを患者毎に必ず行わなくてはならないということである。患者やスタッフを感染から守るため、例として、下記のようなことをクリニックで実施する必要があるであろう。
  • 1.患者毎の手指衛生(流水と石鹸による最低15秒の手洗い、アルコール消毒)
  • 2.手袋、エプロン、ゴーグル、ヘッドカバー、マスクなどのPPEの装着
  • 3.滅菌器クラスBによる器具の洗浄・消毒・滅菌
  • 4.鋭利な器材(麻酔針・バー・リーマー・スケーラーなど)の適切な取り扱い
  • 5.環境の維持管理
特に、患者毎の手指衛生は重要である。約15秒間の流水による手洗いだけでも、手に付着したウイルス数を約1%にまで減少させることが可能であり、石鹸のもみ洗いを加えれば約0.01%にまでウイルス数を減らすことができるというデータもある。
また、WHOが2009年より「SAVE LIVES: Clean Your Hands」というキャンペーンへの参加を世界中の医療機関に求めていることをご存知であろうか。キャンペーン名の意味は、「あなたの手洗いが生命を救う」である。その意味からも推測できるように、手指衛生が患者の命を守る上で非常に重要であることを念頭に入れ、日々の歯科診療にぜひ取り組んでいただきたい。
次回のICS記事(第2部)では、柏井伸子先生の「感染管理からみる歯科診療報酬改定―まず取り組むべきこと―」と金子明寛先生の「歯科衛生士のための医薬品および医療機器安全責任者講習会~院内感染対策・医薬品の安全使用および医療機器の安全使用~」について紹介する予定である。
古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
  • 日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentWaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、現在に至る。

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