2018 China Dental Show (CDS) レポート3

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佐野 隆一

 最後に、中国のスマホとデジタル、地元の販売店のブースについてです。前回のレポートでは、インプラントとデジタルを中心にブースなどを紹介しましたが、筆者がデジタルを強く感じたのは、それだけではありません。
 診療システムをサポートするソフトウェアのカタログをみると、患者の診断や口腔内写真の一元管理、アポイントと患者への連絡通知の連動、経営や在庫管理、教育コンテンツなど、クリニック全体を通じてデジタル管理が提唱されていました。特にスマートフォンとの連携が注目です。別ブースで見たカタログでも、診断に使用する機器がスマートフォンと連携しているようです。

診療システムをサポートするソフトウェアの紹介ブース

カタログにはスマホアプリとの連携も紹介されている


診査診断のためのセットを紹介したカタログ。ケースの真ん中にあるスマホ

エンド用の検査機器。データがブルートゥースでタブレットに飛ぶのが売り


 日本企業のブースに展示しているCTも、スマホと連携しているか質問があるそうです。ただ、日本のエンジニアの方がデジタル機材をチェックした話では、精度はあまり高くないとのことでした。確かに、見た目がオモチャみたいな製品もありました。
 今の中国人の関心は、精度よりもスマホかもしれません。しかし、このデジタル化の流れは驚異的なものを感じました。中国の街に出るとわかるのですが、スマホユーザーが多く、買い物の決済は、老若男女問わず圧倒的にスマホです。中国の銀行に口座がないとこのシステムは使えないので、こちらは現金での買い物になるのですが、小銭を数えてまごまごしていると申し訳ない気持ちになるから不思議なものです。

上海の中心地にあるスターバックスコーヒー。インスタスポット

お客が楽しめるアミューズメント的な要素があり、世界から視察が訪れているという


注文はスマホで行う

自分のスマホのQRコードをかざして、店員がスキャン

商品が準備できると自分のスマホに通知がくる


上海の地元の人々が利用する市場や飲食店

肉まんなどを購入する際にもQRコードを読みこみ、スマホで決済


 このスマホ決済は展示会でも使われています。新製品を展示するメーカー企業ブースと同じ会場にある販売店のブースでは、日常で使用するバーやセメント類などが雑多に積まれ、雑多な感じで即売されています。これが日本のデンタルショーと一番違うところです。
 品質の高い製品はあまりないように思いますが、B級品として割り切れば使えるものも多いと思います。というのも値段が圧倒的に安いから。こちらが日本人とわかると提示価格は高くなりますが、同じ中国人同士でも値引き交渉が前提の取引となります。そして、当然ここでの決済がスマホになります。
 中国の発展のステップは一段飛ばしと言います。以前は家に電話がないのが当たり前でしたが、今は、家に電話がなくてもスマホを持っています。また、現金からクレジットカードが普及する前にスマホ決済となりました。
 こうなると、情報収集、購買行動などに対するスマホの影響も大きく、マーケティングをはじめとする市場の流れが大きく変わると確信しました。以前はデンタルショーにいくとカートに段ボールを積んだ方が多くいたそうですが、だんだん少なくなっているとのこと。これは通販の影響もあるようです。

デンタルショー内にある販売店のブース。バーなど、日常臨床で使用する材料などが売られている

ビニールに入っている中国製ダイアモンドバーは50本50元。模型なども売られている。価格は交渉次第



販売店でも当然ながらスマホ決済

カートに段ボールを積んでお買い物。広い中国では、デンタルショーで1年分まとめて材料を購入する人達もいるという。壁際には疲れて休んでいる人達も。こうした光景も中国らしい


 ここで売られている雑貨をお土産にすると、話のネタにもなって面白いです。ただ、日本でもいつのまにかアマゾンあたりでこうした激安商品が買えるかもしれません。これは悪くないかもしれませんが、日本の市場が大きく変わることにもなりそうです。日本と中国がデジタルでシームレスにつながることによって、歯科技工物の流れも変わるかもしれません。
 最先端の展示ブースの横には、B級品ばかりを集めたようなブースがある。昔ながらの市場には、当たり前のように電子決済システムが導入されて、多くの人がスマホを使いこなしている。上海の街はずっと工事が続き、街の拡張が続いている。清濁併せ吞むような発展の仕方に、大きなエネルギーを感じます。


街の市場の近く。工事の砂や廃棄物が路上にあるも、通行人は普通に生活

中心街のショッピングモール。同じ街とは思えないほどのギャップ


 もう一つ上海で開催されるデンタルショーは、CDSよりも講演が少ない分、出展数が多いそうです。今度はそちらにも行ってみたいと思いました。皆さんも機会があれば、上海のデンタルショーに行ってみてはいかがでしょうか? 日本にはない衝撃を受けること間違いなしです。



■佐野隆一 / 株式会社ラボコミュニケーションズ 代表取締役
院内技工士、ドイツ歯科メーカー経験後、歯科技工と研修、コンサルティング業務を組み合わせた歯科医院サポート型ラボを開設。講演や執筆など幅広く活動中。

◆株式会社ラボコミュニケーションズ
Mail:info@ddrc-1.com
URL:http://www.ddrc-1.com

◆書籍
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