患者さんが長期的に来院する歯科医院の仕組みづくり(環境・医療・人) WDS2018 出展者セミナー

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出展:タカラベルモント株式会社
エイチ・エムズ・コレクション 代表取締役社長 濵田真理子 氏

 24歳で会社を創設し、現在25年の実績をもつ濱田氏は、歯科衛生士の目線で、来院して口腔内がキレイになった患者さんに対する具体的なアプローチ事例を紹介し、冒頭で10年後の歯科医院の姿をイメージして聞いていただきたいと語った。

 歯科医院のイメージをどのように作っていくのかという点を課題に環境・医療・人の3つのカテゴリーに分けてみると、その背景としては、口腔からみた全身疾患の関わりなど、歯科医療従事者が幅広く学ばなければいけない範囲が拡大していることがわかる。具体的には、糖尿病・脳梗塞・肺炎・細菌性心膜炎・狭心症・心筋梗塞などが関連疾患として捉えておくニーズが高まっている。
 さらに時間軸として過去・現在・未来の各次元で見た場合、濱田氏が歯科衛生士になって間もない頃(過去)は、患者さんの口腔内での状態が改善したら評価されたが、現在は全身疾患と口腔のさまざまな関係に基づく知識や対応が必要となり、具体例としては口腔がんに関する知識や対応、生活習慣・嗜好品との向き合い方・有病者に対しての助言や情報処理能力などが求められている。未来では、AIの活用・多職種連携を含めた超高齢社会への対応の中における歯科医院の役割をしっかりと把握、対応していくことを意識的に実施していかないと歯科が取り残されていく可能性が高いと自らの経験を踏まえて濱田氏は語った。
 歯科でかかわる健康を管理する範囲が拡大しており、ライフステージ(幼年期・児童期・青年期・壮年期・老年期)に応じた対応と共に、口腔から全身への指導が求められているのが現状といえる。
歯科医療関係者が関わる場所も拡大しており、診療所主体の診療⇒在宅診療・病院内診療へ対応範囲が拡大し、急性期・慢性期・維持期の各段階を意識した介護の段階に応じた用語や知識を知り、関連スタッフ全般との連携をするニーズが高まってきた。 高齢者に対しては、65歳以上は高齢者という枠組みで判断するのではなく、個別の状態に応じて対処していくべきで寄り添う目線で上手に付き合っていくニーズが高まっている。
 通常、患者さんに「何かあったら来てください」と医療従事者は言ってしまう傾向がある。しかし、患者さんは何が起こったら来院すべきなのか、具体的にわからないため、具体的に何が起こったら来院すべきなのかを示す必要があり、リスクを先に伝えて定期的に来院する重要性を明確に伝えることがポイントになってくる。
 幅広い年齢層で元気な人でも悩みとなることが増えてきた口腔機能低下症(図1)。或るクリニックで患者さんは、「最近、とても咽喉が渇いてしまって水を大量に飲んでしまう」と言ったところ、スタッフが「私も同じです」と会話をした日に、スタッフが綿密な舌磨きを実施後、トラブルになってしまった。結果として患者さんは、ドライマウスであることが後日わかった事例である。咽喉が渇くという一言から口腔機能低下に伴う症状としてどのような病状が想定できるのか、理解し、考えてみるべきニーズが確実にあるということだ。参考までに患者さんの悩みに対する検査方法をお示ししておく(図2)。

図1

図2

 そこで患者さんが簡単にできることを教えてみよう。例えば“あいうべ体操”など、指導内容がシンプルで患者さんが簡単に自宅で実践できる継続可能な方法をアドバイスすると良い。日常的に続けられないことを熱心に教えても患者さんにとって有用な情報とはならないのである。
 近年は、妊婦さんが胎内にいる赤ちゃんが心配という気持ちから積極的に来院する傾向が高まっている。妊婦さんのケアは、赤ちゃんを含めた二人分のケアをしていくことになる前提で対応するのだが、実際には妊娠する前から歯周病のリスクを伝えていくべきである。患者さんが早い段階で来院できるように情報を提供していくことで口腔内の状態は変えられる。この対応を新卒のスタッフに委ねるのは酷なので歯科医院としてどのように対応していくかを予防歯科の見地も含めて想定しておく。情報としては、歯科医師会などのデータを積極的に示していくことで、スタッフが感覚的に示すよりも説得力のある情報発信が可能となる。例えば広島県歯科医師会では妊婦の78.6%が歯周病というデータがあり、歯周病は珍しいことではないけれど、実際に罹患していない人も存在するので、医療従事者は罹患していない状態へ患者さんを誘導していく役割を担っている。
 一度、虫歯になった箇所は次のリスクになり得ることを医療従事者は患者さんに伝えていないことが多い。修復物のチェックも定期的なプロのチェックを受けない限り、状態の保持が難しいため、定期的なチェックに要する期間の決定は、歯科医院側の都合ではなく、患者さんの状態に応じて患者さんの診査・診断の結果で設定していることを伝えるべきなのだ。修復後にチェックの必要性を伝えた場合、患者さんにとっては脅しになってしまうため、修復前時点で伝えておくことがポイントになる。どのような修復物が入り、放置すると発生が予見できるリスクも同時に伝えておくと患者さん自身の理解度は格段に上がる。
 今後、起こる状態の悪化の可能性などを示しておき、さまざまな見地から見たリスクを検査の前段階で患者さんにしっかり説明する。検査の中で起こり得る出血などの事象も事前に伝えておく。
 会話をする環境を見直した場合、ユニットを活かしきれていない医療機関は、患者さんに対して治療エリアでは話せなかったことを話す場などの見方も踏まえたユニットの使用法を再検証し、特にユニットの中にある椅子などは、物を置いたりせず、本来の用途で座って使える状態にしておくことが患者さんとの関係性において軽視できない。
 ユニット自体も広さの面でゆとりをもって作っていくことも大切(図3)。患者さんに資料を示せるように、資料を作成することも勧めている。全身疾患を踏まえた健康増進のために来院するような医院として選ばれ続けるメニューを作成していただきたい。
 自覚症状がない人に対しては来院しないと、発生し得るリスクに関してメニューを基にした資料で明確に示す。患者さんが自分のこととして捉えやすいように、フィードバックをしない限り、人は感謝をするけれど満足はできないことを医療従事者側は知っておく必要があると濱田氏は締め括った(図4)。

図3

図4

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