第41回:ポリフェノールと歯科における効用

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ポリフェノール(polyphenol, PP)といえば、ココアや赤ワインを連想する人も少なくないであろうほど、これらのものは一時かなり話題になったことがある。 これら製品のPRには、動脈硬化を防ぐ・血栓症になるリスクを減らす・脂肪の吸収を抑える・胃がんを減らす・がんの進行を抑える・がん予防への期待・記憶などの脳機能を改善する可能性・ストレスに勝つ・アレルギーやリウマチに・病原菌をおさえ・傷の治療にも効果的・虫歯を防ぐなどの効能が並んでいる。このような効用が謳われているなかで、歯科領域ではむし歯予防のみであるが、歯科でのPPの効用はこれまでどのような評価を受けているだろうか。Journal of Dentistry 37巻413-423頁(2009)にそれに関するレビューが掲載されているのでその一部を紹介する。 まず、PPとは何かということであるが、複数のフェノール基(芳香族環に水酸基がついたもの)を含む植物の代謝物、色素、苦味成分であり、量・種類の違いはあっても、植物には必ず含まれている。代表的なものにカテキン、アントシアニン、フラボノイドなどがあり、PPの主要な効果は抗酸化作用にあるとされている。PPの多い摂取は、がん、心臓血管疾患、神経変性疾患などのリスク低下と関係しているとされているが、疫学的調査で効果が認められているのはフラボノイドだけであり、これを多く摂ると冠動脈疾患による死亡率をかなり低下させ、脳卒中、肺・直腸がん、ぜんそくには効果ありとされたが、大腸・卵巣・乳房・精巣がんなどには効果不明とされたという。 さて、歯科での話であるが、PPを多く摂取すると、実験的および疫学的研究から口腔がん、食道がん、咽頭がんの予防効果があると認められているという。歯周疾患に関しては、歯肉溝滲出液や唾液の抗酸化活性低下は歯周炎発生に関連しているという報告があるが、PPはこれら口腔内液の抗酸化活性を増加させる可能性があることからそれが調べられている。緑茶や紅茶を2〜5分間口に含んでいると唾液の抗酸化能が増加、グレープフルーツ2個を毎日続けて2週間すると歯肉溝滲出液中の多形核白血球の貪食能が増加、などの例が紹介されている。PPの歯周疾患関連の細菌に対する抗菌活性についてもかなりの報告があるが、例えば、緑茶カテキンを含むストリップを歯肉ポケットに挿入すると(徐放性投与システム)、ポケット深さが減少、グラム陰性嫌気性桿菌の比率が減少したという。歯周病への予防効果は、直接的な証拠はないが状況証拠的には認めてもよいのではないかというのが著者らの見方らしい。 う蝕への予防効果は、研究は多いにもかかわらず、歯周病に対するよりもはっきりしていないようである。ミュータンス菌に対するin vitroでの効果が様々な観点から調べられている。植物抽出物は、ミュータンス菌の代謝活性に影響を及ぼし、増殖および病原性の低下をもたらすと思われるが、PP以外の成分も含むのでそれがPPのためだけであるとはいえないとしている。あるPPはう蝕の原因に関与する細菌を阻害できるが、直接的な抗菌活性の証拠は見いだされていない。ラットでの研究では、う蝕原性のあるエサとPPを含むココア抽出物あるいはウーロン茶葉を与えたところ、う蝕の増加が抑えられ、プラークレベルも低下したという。ヒトでは3件の臨床的研究がある。ウーロン茶葉あるいはカカオ豆殻からつくった洗口液で1日9回の洗口を1週間続けたところ、プラークインデックスおよびミュータンス菌レベルが有意に低下したという。また、ホップの苞葉からつくった洗口液で1日5回の洗口を2週間続けたところ、プラークインデックスおよびミュータンス菌レベルが有意に低下したという。著者らはこれら3件の報告をまとめて統計的に解析し、PPを含む洗口液を1日5〜9回用いると、プラークインデックス(1〜5段階)が0.7〜1.1低下、ミュータンス菌レベルは約半分に低下したと計算している。PPによるカリエスリスクの低下について、間接的証明が数多くなされており、PPを含む洗口液での臨床試験でもプラークインデックスやミュータンス菌レベルが低下する効果は認められているが、う蝕に効果があったという直接的証拠はないとしている。著者らは状況証拠的には効果を認めたいが、もう少し証拠がほしいというところらしい。 全体の要約は、PPを含む飲食物を定期的に多く摂取すると、口腔がんを予防する一助となる可能性があり、歯周病とう蝕の予防については、多くの実験的研究から期待が持てるという結果が出されているが、それをヒトでの研究で確かめる必要があるとなっている。巷間PPの歯科での効能について言われているのは、むし歯予防ぐらいであるが、歯周病予防の効果についても注目されてもよさそうな気がする。 口腔内でのPPの効用を期待するには、継続的に頻回PPを多く含むものを摂取する必要がありそうである。野菜、果物にもPPは含まれているが、継続的はともかく、頻回というには飲み物のほうが適している。飲み物としては、ココアやとくにお茶がお勧めであり、お茶はフッ素をかなり含む点でも好ましいと筆者は思っている。 野菜や果物では中より外側にPP量が多いため、PP摂取の観点からは丸ごと摂取がよいといえる。このことは、ブドウの果皮も用いる赤ワインではPPが多く、果皮を除いた白ワインでは少ないという例からも理解できよう。リンゴの皮をむいてしばらくすると茶色に変色するのはPPのせいであるが、PPは皮に多く含まれるので丸ごと食べるほうがよい。なお、イモ類、レンコン、ゴボウ、ナス、ウドなどを切って放置すると変色するのもPPのためである。 食品中のPPの含有量だけでなく、抗酸化能も知りたいところであるが、2003年のJournal of Nutritionにイタリアで消費されている野菜、果物、し好品について抗酸化能を測定した結果が報告されている。三つの方法で測定しているが結果の順位は一致しているわけではないが、共通して上位にランクされている例を少し紹介しておこう。野菜ではホウレンソウ、ピーマン類、マッシュルーム、赤カブの根、果物ではブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、オリーブ、オレンジ、し好品ではコーヒー、赤ワイン、緑茶、紅茶、ビネガー(赤)となっているが、コーヒーの値が突出して大きい(なお、ココアは測定されていない)。白ワインは赤ワインの7分の1程度であり、ウィスキー並みとなっている。 (2009年6月25日)
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