第13回「納豆でダイエット」と食育

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今回はこれまでとは趣の違う話題である。今年1月、「納豆にやせる効果がある」とするテレビ放送をめぐり、事実と異なることや捏造されたデータがあるとして問題になった。筆者はその放送を視聴していないが、新聞等によれば、「体内で合成されるホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は痩せるのに効果があり、その原料となるのがイソフラボンであるため、イソフラボンを含む納豆を食べるとダイエット効果がある」というのが放送のおよその要点である。 納豆は要するにイソフラボンの供給源であり、煮大豆、豆腐、きな粉などほかの大豆食品でもよかったのである。放送内容は問題とはなったが、やせるのにDHEAやイソフラボンのサプリメントの摂取ではなく、すぐれた食品である納豆の摂取であったのはせめてもの救いである。なお、イソフラボンは弱いながらもエストロゲン様作用(環境ホルモン作用)を有しており、食品安全委員会では、食品からの安全な1日当たりの摂取目安量の上限を70〜75mg、サプリメントとしての安全な1日当たりの上乗せ摂取量の上限を30mgとしていることを付け加えておこう。 2005年7月に食育基本法が施行された。この第1条に「この法律は、近年における国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を推進することが緊要な課題となっていることにかんがみ、食育に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めることにより、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。」と盛り沢山のことが謳われている。今後食教育が進むことにより、今回のような「納豆でやせる」などという番組は姿を消し、サプリメントに頼らずにバランスのよい食生活を目指すようになることを期待したい。 新聞には健康食品やサプリメントの広告があふれ、いかにも効果がありそうな文言が並んでいるが、これらの愛好者はどの程度広告を信じているのだろうか?こうしたものに関心をお持ちの方は、http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.htmlをぜひご覧になることをお勧めする。これは、独立行政法人国立健康・栄養研究所が文献を集めて公開している「健康食品」の素材情報データベースである。全部見たわけではないが、ヒトでの有効性が科学的にじゅうぶん裏付けられているものは少ないように思われる。 医薬品に偽薬効果(プラセボ効果)というのがある。薬に見せかけたものを投薬しても、それが薬であるかのようにかなりの割合で効果が出るという現象である。このことを考えると、サプリメントでも同様な効果が現れても不思議ではない気がする。この意味では、サプリメントが無害である限り、その効果を信ずるのも一つの行き方ではあろうが、食育の観点からはとても勧められない。 世界で最もサプリメントになれ親しんでいるのは、サプリメント健康教育法なる法令もある米国人であろう。米国のような要素還元主義という文化的背景からすれば、サプリメント指向というのも理解できないわけではない。それに対して、基本的に全体総合主義である日本人にとってサプリメントは似合わず、からだに必要なものはサプリメントではなく食べ物からというのが合っている。日本人には、サプリメント健康教育法ではなく食育基本法がふさわしく、DHEAやイソフラボンではなく、納豆がいいのである。食料不足で必要な栄養等が欠乏するのをサプリメントで補うというのは理解できる。しかし、我が国は現在、自給率が低いとはいえ、幸いにもまだ食料に恵まれており、食べ物のありがたさ、楽しみをかみしめたいものだと思う。 最近の本サイトに「よい歯と食育推進員会」の設立および今後食育関連情報を提供していく旨のお知らせが載っている。食は生命の基礎であるにもかかわらず、その重要性についての国民の認識は薄いようであり、今後の食に関する様々な情報発信に期待したいと思う。最近は軟らかい食品が多くなり、それが子供の顎の成長やかみ合わせに悪影響を及ぼし、子供のかむ機能に異常が出始めていること、子供の顎の成長を助ける食品、かみごたえのある食品が必要、などのことを長年にわたり小学校歯科校医を勤めている歯科医が書かれたのを見たことがある。国の食育推進の一環として、食生活指針や食事バランスガイドが作成されているが、歯や顎にかかわる視点は欠けているように思われ、こうしたことには「よい歯と食育推進員会」の活動が期待されよう。
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