新型コロナウイルス感染症 第2波に備える感染管理 第1回

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新型コロナウイルス感染症 第2波に備える感染管理

有限会社ハグクリエイション社長
第2種滅菌技士 口腔科学修士 柏井伸子

1:新しい考え方~感染の予防と管理~
 新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症(COVID-19 corona virus disease 2019)の世界各地における広範囲な流行「パンデミック」が発生し、日本を含め世界中に深刻な影響が生じています。消毒用アルコールやマスク他の医療資源の枯渇など、皆様の施設でも影響を受けていらっしゃるのではないでしょうか?
 これまでの歯科臨床における感染管理では、肝炎などの感染症を有する患者さんから自分たちや他の患者さんを守るということに注力してきましたが、最近の欧米では現状への対応に加え、さらに進んで予防を考えるというInfection Prevention & Controlという傾向があります2)。これは2003年に中国に端を発したSARS(Severe acute respiratory syndrome重症急性呼吸器症候群)や2012年にサウジアラビアから発生しし未だに収束していないMERS(Middle East Respiratory Syndrome中東呼吸器症候群)などの感染症のように、自然界に存在しながらも人間には害被害を生じさせることがなかったウイルスが、変位を続けてヒト・ヒト感染するようになるということを経験してきたことから、予期せぬ疾患にも対応できるような準備が必要だと考えられるようになったからです。CDC(Centers for Disease Control and Prevention 米国疾病予防管理センター)から提唱されているInfection Prevention Checklist for Dental Settingsという感染予防の実践書においては、「関係者への教育とトレーニング」、「関係者の安全性確保」、「標準予防策」、「ユニットからの水系」という歯科領域における感染伝播の予防についての必修事項が盛り込まれており、さらに標準予防策の項目としては「手指衛生」、「個人防護具」、「飛沫対策」、「針刺し事故防止」、「使用済み器材の消毒・滅菌」、「環境整備」が盛り込まれています。
 予防という点からは、未知の病原微生物が顕在化したりアルコールの不足などの予測不能な事象が起きたりという可能性を予測することが原点になります。リスク低減のためには常に危機感を持ち、関係者全員でのトレーニング実施やマニュアルの作成・アップデートに加え、手荒れからの感染にも日常的に注意しましょう(写真1)、患者さんにもご協力いただいて安心できる環境づくりを心がけていきましょう(写真2)。


写真1 薬用ハンドクリームで手荒れ予防

写真2 患者入口に設置した手指衛生用擦式アルコール製剤のディスペンサー

参考文献
1)WHO_COVID-19_Coronavirus_Animation_EN 2020年 World Health Organization
2)Infection Prevention Checklist for Dental Settings  https://www.cdc.gov/oralhealth/infectioncontrol/pdf/safe-care-checklist.pdf  2016年  Center for Disease Control and Prevention


2:標準予防策
 ADA(The American Dental Association米国歯科医師会)は1996年にCDC(Center for Disease Control and Prevention米国疾病予防管理センター)より提唱され、対象を飛沫・接触・空気と設定し、目的に「医療従事者と患者を、現時点では明確に把握されていない未知の感染症からも予防する」という標準予防策の遵守を推奨しました1)。標準予防策には、「全ての患者の血液・体液・喀痰・便・尿・膿・粘膜・傷のある皮膚を感染性ありとし、これに触れる時は、個人防護具(手袋・マスク・ガウン・ゴーグルかフェイスシールド)を着用する。また、これが付着した廃棄物は、医療廃棄物とする」という定義があり、唾液は体液に含まれます。感染症を生じさせる「6つの輪」には、「病原体」、「保菌体」、「宿主」、「入口」、「出口」、そして接触・空気・飛沫からなる「感染経路」があり(図1)、その連鎖を遮断すれば医療安全の確立が可能となります(図2)。
 標準予防策の中に盛り込まれている手指衛生については、WHO(World Health Organization)からガイドラインがだされており、手指衛生を行うべき「5つのタイミング」2)や「流水と石鹸」と「擦式アルコール製剤」の使い分けが提唱されています3)。5つのタイミングとしては、患者への接触前・清潔操作の前・体液に曝露されたおそれのある時・患者への接触後・患者周辺環境への接触後が挙げられます。特に擦式アルコール製剤を使用する場面としては、患者に接する前後、手袋装着・非装着に関わらず処置に侵襲的器材を扱う前、体液あるいは浸出液・粘膜・正常でない皮膚に触れた後、滅菌手袋あるいは未滅菌手袋を脱いだ後等としています。アルコール製剤使用時には、3~5mlの必要量を手のひらに取り、指の間・爪の周り・親指の付け根・手首などにももれがないように注意して30秒間擦り込み、十分に乾燥させます(写真3)。
 標準予防策では、感染症の既往歴有無に関わらず全ての患者さんに感染リスクありとしており、血液検査の実施機会の少ない歯科の臨床現場においても安全に医療サービスが提供できる状況を担保できます。ぜひ実践を心がけましょう。


図1 感染経路の種類

写真3 擦式アルコール製剤の適切使用

参考文献
1)Practical Infection Control In Dentistry John A. Molinari, Jennifer A. Harte 2010年 Lippincott Williams & Wilkins
2)Putting on and removing PPE for contact and droplet precautions for COVID-19 2020年 WHO
3)世界保健機関 医療における手指衛生ガイドライン 2009年 WHO


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