静脈内鎮静法の種類と禁忌症【前編】

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静脈内鎮静法とは、快適かつ安全に治療を施行するために、薬物を使用して患者管理を行う精神鎮静法です。静脈内沈静法を施行するにあたって確認すべきことを、術前・術中・術後それぞれの視点から解説します。

術前にすべきこと

施術前に確認する項目や準備すべきことは下記の通りです。

検査

静脈内鎮静法を実施するにあたり、術前スクリーニングを目的とした検査は不要です。しかし病歴聴取および身体診察をした上で、必要であれば全身麻酔に準じた術前検査を行う場合もあります。

インフォームドコンセント

下記の内容で、患者の理解が得られるような十分な説明が必要です。
●静脈内鎮静法を選択する理由
●術前の注意事項(食事制限など)
●静脈内鎮静法の方法(使用薬物・投与方法など)
●術後の注意事項(車の運転など)
●合併症の可能性
●合併症への対応

上記の内容を説明したうえで、患者の理解・納得・同意・選択が必要であり、同意書で患者の意思を確認することが重要です。

信頼できる麻酔科医への依頼

術中の全身管理を行うのは麻酔科医です。術前管理も含め、緊急時に適切に対応できる能力を有していなければなりません。安心して任せることのできる麻酔科医と連携して治療を行うことがもっとも重要です。

緊急用器具の準備

静脈内鎮静法で使用される薬剤は、患者の感受性や投与量・投与速度・患者の持つ内科的基礎疾患によっては、呼吸停止や心停止を招来することがあります。そのため一次救命処置に必要な緊急用器具の準備は必須です。

静脈内鎮静法の料金にかかる費用の説明

静脈内鎮静法を適用する場合は、治療費とは別に麻酔費用がかかります。自費診療で5〜8万円の歯科医院が多いようです。

食事制限の指示

通常の食事は8時間前まで、水分摂取は2時間前までが推奨されています。治療中の誤嚥を防ぐためにも、必ず患者に伝えましょう。

術中にすべきこと

施術中に注意することや発症する可能性のある合併症は下記の通りです。

処置時間の説明

静脈内鎮静法下での歯科治療の処置時間は2時間以内が望ましいとされています。

合併症の説明

術中合併症として、下記の合併症の発生に注意する必要があります。

呼吸器合併症

低酸素症(SpO2 の低下)・気道閉塞/舌根沈下・呼吸抑制/呼吸停止・むせ(咳反射)・誤嚥性肺炎

循環器合併症

血圧上昇/血圧低下・頻脈/徐脈・心停止・不整脈・血管迷走神経反射

その他の合併症

悪心/嘔吐・不穏/興奮状態・血管痛/静脈炎・アナフィラキシー

術後にすべきこと

施術後に確認すべき内容は下記の通りです。

術後帰宅許可の目安

術後は下記の状態を確認し、問題がなければ帰宅が可能となります。帰宅後の注意事項や、緊急時の連絡先が記された印刷物を渡すようにしましょう。

●バイタルサインが安定している
●人・場所・時間等について認識する基本的精神運動機能が回復している
●基本的運動・平衡機能が回復している(自他覚的にふらつきなく通常速度歩行が可能または閉眼両脚直立検査で30秒間立位保持可能)
●術後出血がない
●疼痛がない
●嘔吐や吐き気がない

最後に

治療に対する不安や恐怖心を持つ患者は少なくありません。信頼できる麻酔科医との連携や、実際に静脈内鎮静法を行う際にDr・スタッフがスムーズな対応ができるように備えておくことが重要です。

執筆 高山 由衣

日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校卒業。歯科衛生士免許取得後、一般歯科、予防歯科、訪問歯科を主軸に勤務。現在、臨床業務を行いながら、医院の仕組みづくりやスタッフ育成、チームマネジメントに携わる。2021年7月歯科衛生士のオンラインサロン「99.99〜フォーナイン〜」を立ち上げる。
Instagram @yui_takayama/

校正・編集者 浜崎実穂

東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後はフリーランスの「歯科衛生士ライター」として活動し、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。現在はDentalMonitoringJapanに勤務し、2児の母でもある。
Instagram:@toothteethtokyo

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