CAD/CAMの普及、発展で歯科臨床を変える

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Digital Dentistryの普及、発展に努めて生きたい

  

日本歯科CAD/CAM学会設立総会・記念学術講演会(大会長:山﨑長郎さん)が3月28日、東京・千代田区平河町の都市センターホテル コスモスホールで開かれた。

会長の宮崎隆さん(昭和大学歯学部教授)の特別講演「Digital Dentistryの現状と将来展望」の講演内容を

紹介する。

 

 特別講演

 

 「Digital Dentistryの現状と将来展望」

    

 宮崎隆・昭和大学歯学部教授

  

私からは、本学会の方向性など含め話を進めたい。

歯科医療は生命に直結した呼吸、摂食、食物を飲み込む嚥下、あるいは味わう、噛みしめる、あるいは発音といった顎口腔機能を私たちが担当して、国民の命の尊厳を守る、生活の質を向上させるという医療に参画をしている。

長寿健康には顎口腔機能の育成と維持と回復が重要である。

歯列がきちんと連続して咬合が維持されていることによって、この機能も達成される。

8020で国民の歯の維持はよくなってきたが、今回の学会の発起人で実行委員長の末瀬一彦先生(大阪大学歯学部教授)は、8028を目指すべきではないか述べている。

まさに、Digital Dentistryは8028で、国民の長寿健康を達成していきたい。

人工臓器と言われるが、歯列のきちんとした連続性と咬合が維持で貢献していく。

これが本学会の一つの方向性であると思っている。

歯科では医科と比べ、これまで多くの材料を使ってきた歴史がある。

それぞれの材料とそれを扱う成型加工技術が、車の両輪のような形で新しい治療法が導入されてきた歴史がある。

金合金が整理されて、ロストワックス精密鋳造法が確立された。

これは歯冠修復処置にとって、非常に重要な問題であり、未だに私たちの臨床を支えている。

また、ポーセレン(ケイ酸塩ガラス)も比較的低温で焼いて、審美修復ができるようになった。

レジンも、もち状レジンをラジカル重合するようになった。

いい技術にいい材料が出てくると、臨床ががらりと変わる。

そのような流れになっている。

また、インプラントが出てきて、ここ20年で歯科の臨床は大きく変わってきた。

そして今、CAD/CAMが出てきて、歯科医療がどのように変わるのか、ということになるわけだ。

チタンという材料が生体に使えるようになったのは、わずか50年である。

整形外科領域、その後、歯科の領域に応用し、10年、20年の試行錯誤をして、臨床の成果が認められて1980年代くらいから一気に普及してきた。

CAD/CAMも流れはまったく同じである。

CAD/CAMが産業界に出てきたのは1960年代であるが、1971年にはフランスのジュレイがCAD/CAMを応用して歯冠修復物を作ろうというアイディアを出した。

また、1979年Mormannはセレックの元となるプロジェクトを立ち上げた。

私は1984年から昭和大学歯学部で研究を始めた。

この1980年代には色々な研究機関で、CAD/CAMの研究を始めている。

今日、講演をしていただく、大阪大学の荘村泰治先生もコツコツと研究をしてきた。

学会では荘村先生がどこまで研究を進めているのかを、楽しみに思いながら私たちも一緒にやってきた。

しかし、研究は進んできたが残念ながら壁にぶっかった。

CAD/CAMで今やっていることが、本当に変わるのか。

材料もそうであるが、歯科医療のあり方、歯科技工のあり方などが変わるのか。

その後、アンダーソンが放電加工を使ったチタンのCAD/CAMを開発した。

何が素晴らしかったか、とういと歯科技工のセンター化をした。

小さな歯科診療所や小さな歯科技工所のなかではなく、ネットワークを利用した、世界を股にかけて歯冠修復物の作り方を変えていこうと提案した。

2000年から2005年は新しい材料の許認可などの遅れで、失われ5年であった。

その後やっとジルコニアが、日本でも扱えることができるようになり、2005以降は世界レベルのCAD/CAMシステムが日本に入ってくるようになった。

木が熟してきたと思っている。

2009年のケルンメッセでは、CAD/CAMは70社以上、歯科材料関連製品を入れると100社以上が出展した。

世界はこちらの流れに変わっている。

ソフト、計測器、加工センターを含め揃っているが、世界はすでに淘汰の始まり、強い企業が伸び、弱いところが統合され、共通化できるものは共通化する流れになっている。

私たちは、今日、日本歯科CAD/CAM学会を設立したが、これまでCAD/CAMは、日本歯科理工学会はじめ、日本補綴歯科学会などで研究してきた。

また、日本歯科医学会に含まれていない日本歯科技工学会、歯科界チタン学会でもCAD/CAMについて研究、開発を続けている。

では、私たちがたくさんある歯科関係学会の中で、日本歯科CAD/CAM学会をなぜ提案したのか、国民の健康に貢献するために、臨床の先生方、それを支えている歯科技工士、歯科衛生士、これからの人材を育成している大学の教育の先生、研究者、歯科産業界のみんながスクラムを組んで、厚生労働省も含め、文部科学省、経済産業省にも働きかけて、Digital Dentistryを目指し、このCAD/CAM学会を通じて歯科界を変えていかなければならない、と思ったのでこのような提案をした。

臨・学・産の連携で、会員のみなさんと団結して、Digital Dentistryの普及、発展に努めて生きたいと考えている。

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