激務と歯周病菌が引き金となった
ZAKZAK 2013年12月04日
連載:今日のストレス 明日の病気
近年、歯周病と全身疾患の関係が解明されてきた。
歯周病は、単なる「歯茎の病気」ではなく、深刻な重大疾患を引き起こす危険性があるのだ。
しかも、背景にストレスが介在することもあるというから恐ろしい…。
事の始まりは「のぼせ」だった。
Uさん(43)は激務の中、風呂上りでもないのに顔がほてって、頭がボヤッとした感じがあった。内科医院を受診すると、「高血圧症」との診断。
メタボでもない自分が高血圧だなんて考えたこともなかったが、実際に血圧は上が160、下が95と高値を記録。立派な高血圧だった。
ちょうどその時期、歯茎から出血があったので歯科治療を受け始めていたが、実はこの歯茎の出血と高血圧が、裏でつながっていたのだ。
「歯性高血圧症ですね」と語るのは、歯科治療を担当した東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長。次のように解説する。
「忙しさで歯みがきがおろそかになることに加え、ストレスや睡眠不足で免疫力が下がると歯周病のリスクが高まる。悪玉細菌が歯周ポケットを介して血管に入り込み、動脈に定着する。その結果、動脈硬化から高血圧症を引き起こすのです」
事実、Uさんが初めて片平院長を受診した時は、歯茎の出血だけでなく強い口臭もあったという。
細菌検査をすると、Uさんの口の中からは歯周病原因菌が多数見つかった。
ストレスが強かったようで、激しい歯ぎしりの痕跡も見られた。自律神経の乱れが続いたことも高血圧の一因」と片平院長が言うように、当時のUさんは精神的に追い詰められていた。
そこで片平院長は「3DS」という歯周病菌の除菌を目的としたマウスピースを使った治療と生活習慣指導を行った。
その後、Uさんの忙しさも落ち着き、ストレスは大幅に低下。治療の成果も相まって、血圧も少しずつ安定していった。しかし、気付かずに放置すれば、いずれ狭心症や心筋梗塞などを引き起こしていた危険性は大きい。
誰もがUさんのように助かるとは限らない。
歯茎の出血や口臭は、重大疾患に気付くきっかけとなることを、まずは覚えておくべきだろう。
(長田昭二)
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