掌蹠膿疱症の原因として歯性感染症に注意を向ける 2)

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皮膚科医間の認識の差、皮膚科医と歯科医師との連携  

 

第31回日本歯内療法学術大会(中久木一乘大会長)が関東甲信越静支部会の共催で7月24、25の両日、東京・千代田区丸の内の東京商工会議所4階で開かれた。

今回のテーマは、歯科治療の根幹Endoを熱く語る— Endoで大きく変えよう! —

  第31回日本歯内療法学術大会から

  

シンポジウム

「健康、機能を回復歯内療法」

 

 (敬称略)

座長:赤峰昭文(九州大学大学院歯学研究院教授)

病巣感染

— 皮膚科の視点から歯科関連皮膚科疾患 —

佐藤貴浩(東京医科歯科大学大学院皮膚学分野准教授)

 

皮膚科領域と歯科領域との間には、関連の深い疾患がいくつか存在する。

特に皮膚疾患の一部が歯科用金属に起因する例のあることは皮膚科医および歯科医の間で広く知られるようになっている。

掌蹠膿疱症、扁平苔癬、異汗性湿疹などが代表的なものである。

また、貨幣状湿疹や全身型金属アレルギーのおいても歯科金属の関与の疑われる例が存在する。

しかし、掌蹠膿疱症に限ってみると、我々の施設で歯科金属除去によって軽快した例が占める割合は非常に少ない。

一方、歯とその周囲組織は感染巣として生体に影響を及ぼしうるものだ。

ことに、近年の高齢化社会においては、従来から感染巣と知られてきた扁桃炎などよりも重要な位置を占めつつある印象がある。

皮膚疾患の中には、病巣感染が悪化要因となりうるものがいくつか存在し、掌蹠膿疱症もその一つである。

しかし、金属アレルギーの認知度が非常に高いためか、掌蹠膿疱症の原因として、歯性感染症に注意を向ける皮膚科医は概して少ない。

同様にアナフィラクトイド紫斑の誘因として、上気道を中心とした感染症の有無に目を向ける皮膚科医に比べ、潜在する歯性感染の有無を積極的に検索する皮膚科医はおそらくあまりいない。

逆に、歯科医師においても、"皮膚病"における歯性感染症の関与についての認知度は金属アレルギーのそれよりも低いかもしれない。

我々の経験では、治療に抵抗する蕁麻疹、貨幣状湿疹、難治性痒疹、そしてまれに結節性紅斑などの症例において、見逃されていた歯性感染症の治療によって軽快する例がみられている。

また、ステロイド剤や免疫抑制剤の全身投与を行う機会の多い皮膚科医にとって、潜在する歯性感染症の有無を把握しておくことは、感染病巣の悪化や皮膚疾患遷延化のリスクを回避する面からも重要である。

シンポジウムでは、歯性感染症の関与が疑われた具体的な皮膚疾患症例を呈示するとともに、皮膚科医間の認識の差、皮膚科医と歯科医師との連携の際の問題点について触れたい。

皮膚科医にとっての歯性感染症評価の困難さは、歯科領域の知識が希薄であり、そのため注意を向けない。

また、異常所見を見出す手段が限られる。

歯科医間の病巣評価と治療要否の判断にも差がある。

事前に因果関係を確認できる手段がない。

歯性感染症は皮膚病変を生じる事実の認識にも差がある。

あるいは、治療による一部の金属除去の影響もある。

それで治癒すると考えてしまう。

このため他の歯性感染症を見落とす。

ステロイド・免疫抑制剤の投与で、治ったと思い歯性感染症を見落とすこともある。

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